他者に向けられている筈の愛を捻じ曲げても、決してそれを受け取る事はできないのでしょう。そして己の罪は自らが一番よく知っている訳で。罪は正しく裁かれ贖われることでこそ救われるのでしょうね。
誰からも蔑まれ、暗い暗い住処で過ごす怪獣。日々の苦痛がやがては安心感となり、居場所となる。その刹那、舞い込んだ外界への好奇。果たして、どちらが地獄なのだろうか。与えられたことが無いが故の、恐怖。その感情に揺さぶられる様が、見事に描かれています。そして、作中の対比構造となる暗く淀んだ世界と眩しすぎる世界。その両方を行き来することによって見えてくる本質は、初めて読んだ時は衝撃でした。心を深く抉る作品です。
淡々とした哀しみ、切なさそれがとことん描かれている。まず目をつけるテーマや設定が既に興味をそそられる。また、文体は淡々としており、客観的に述べている感じで、それがまた一層この作品の世界観や雰囲気を構成している。決して柔らかい文章ではないが、テンポの良さや言葉選びがよく、すらすら頭に入ってくる。さらに、この作品で伝えるメッセージがしっかりと絞られているので、読みやすい。独特の雰囲気がしっかりあり、テーマも伝わってくる良作。