第33話 ニートになってから後悔するわ
翌日。僕は学校へ行きながら、事件のことを考える。
千聖さんは既に答えがわかって動いてるみたいだけど「一人の方が動きやすい」と言って、僕の協力を拒んでいた。
いつもなら面倒に巻き込まれずに済んだと思う。なのに、撫で下ろした胸はなぜか重かった。
僕の存在意義はあるのだろうかと、らしくないことを考えてしまう。
実際のところ、千聖さんに手伝いを頼まれたところで僕にできることはないだろう。僕は特に取り柄のない平凡な人間だ。
ユキに言われている恋愛もそうだ。できることは少ないし、そもそも気力が涌かない。
ももかは結構かわいいし、一緒にいても楽しいし、暴力的なボディガードがいることを除けば文句ないだろう。
でも、そういう気持ちと恋愛がどう結びつくのか、僕にはまるで見当がつかないのだ。いつか、わかるようになるのだろうか。
結局、僕自身の問題なのだ。僕は何もしたくないのだろうか。
授業中も考えがまとまらない。
クラスが違うので、幽霊部のみんなに会いに行くのは踏ん切りがつかない。渡辺さんなんて学年が違うからもっと行きにくい。
結局、何もできずに、ただ時間だけが流れていく。
「レイくん、気になるのね」
「何が?」
「渡辺さん……今日も体育でしょう? 大丈夫なの?」
「大丈夫だと思う。千聖さんが何か手を打ってるだろうし」
僕が興味なさそうに答えると、ユキは首を振った。
「違うわ。大丈夫かどうか気になるのは、レイくんの方よ」
「僕?」
予想外の方向に話が向けられて、ぽかんとする。
「本当に、このまま事件が終わってもいいの? レイくんは何かしたいんじゃないの?」
真剣な目を向けられ、思わずたじろいでしまう。ユキは普段は検討違いのことをするくせに、変なところで鋭い。
「まぁ……何かやらないといけないかなって気はしてるな」
「でしょ。だったらやらないと、ニートになってから後悔するわ。社会に戻ってやり直したいという気持ちから、いつまでも抜け出せなくなるのよ。それでは真のニートにはなれないわ」
「いや真も何も、僕は別にニートになりたいわけじゃない」
「けど、解決するまで他人のフリをするのが、レイくんのしたいことなの?」
「それは、……違うけど」
「どっちかって言うと、したくないことじゃないの?」
確かにそうだ。したいことがないと言って、結局一番したくないことをやっている。こういうのを貧乏くじと言うのかもしれない。
「……行ってみるよ」
「後悔のないようにね。私はレイくんのことを願っているわ」
僕達の足は、幽霊部の部室へと向かっていた。
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