第41話 帝国姫の決意

 クエイクの宣戦布告で、大会議室に集った帝国の重鎮たちは取り乱して混乱の渦であった。

 そんな状況下で、女神は何も言わず、誰にも見つからぬようにコッソリと会議室から抜け出した。


「ウフフフ、まぁ、能力完全開放と多少の自我にも目覚めている坊やがどこまでやるか、見せてもらいマース」


 会議室で口にしたように、人類に巨神兵を与えたもののその後はどうなろうと構わない。むしろそれを含めたうえでどうなるかということに注目している女神は、そのまま帰ろうとしていた。

 だが、そんな時だった。


「女神様ッ! お待ちください!」

「ハイ~?」


 見つかって声を掛けられてしまった。

 ひょっとしたら今後のことについて何か相談でもされるのかと思って、急にめんどくさくなった女神だが、振り返って自分を呼んだ人物を見てハッとした。


「あら? アナータは……お姫様?」

「……ご無沙汰しております、女神様」


 先ほどの大会議室にはいなかったが、本来なら会議に出席すべき重鎮の一人。

 帝国の第一王女であるジェラシが、切羽詰まったような表情で立っていたので、女神は思わず立ち止まって耳を傾けてしまった。

 すると……


「先ほどの会議室での魔水晶での話……部屋の外で全て聞いておりました」

「ああ……そうデースか……」


 その言葉を聞いて少しガッカリした様子で溜息を吐く女神。王女も結局自分に助けを求めるために声を掛けたのかと思ったからだ。

 しかし、ジェラシが次に発する言葉は……



「女神様はクエイクに会いに行くと言われました……私も一緒に連れて行ってもらえないでしょうか!」


「……ワッツ?」



 女神にとっては予想外の言葉であり、女神も思わず首を傾げてしまった。


「ん~……それは、クエイク坊やの説得か何かデースか?」

「いいえ、違います。クエイクとただ一緒に居たい……それだけです。クエイクが魔王軍にそのままいるというのであれば……私も魔王軍に、クエイクのモノになりに行きたいのです!」

「……ワッツ!?」

 

 そして、何の迷いも嘘偽りのない真っすぐな目でジェラシがそう答えるものだから、ついに女神も身を乗り出してしまった。



「どういう……意味デースか?」


「クエイクは……クエイクは私のモノです! 私の大切な存在です! しかし、私は守れなかった……あの会議室に居る腐った重鎮共に……勘違い勇者に……分からず屋のお父さ……分からず屋の皇帝の手から、クエイクを!」


 

 その瞳に涙を浮かべて、悲しみと同時に怒りの感情もさらけ出して叫ぶジェラシ。

 その言葉と想いを、女神は黙って聞いた。



「まずは守れなかったことをクエイクに謝罪し……その上で彼のモノに……ふふふ、チヴィーチたちとブルブル姉妹になるというのは皮肉なものだけど……まぁ、彼が私にブルブルしてくれるのであれば、何だったら私もハーラムのように彼の奴隷になって足の指でも舐めてもいいかもしれないわ……ふふふ♥」


「ほほう♪」



 真っすぐだった目が、途端にどんどんと歪み始めた。

 その歪んでいく目に、女神はそそられたように笑みを浮かべた。

 愛する者を目の前で失い、そして同時に心も理性も壊れてしまった乙女そのものの姿。


「彼ともう一度会えるなら……こんな世界……もうどうなっても構わないわ!」


 最初はただの悲痛な乙女の叫びが段々と、顔に赤みがさして、口元も歪み、瞳も病んでしまったかのようにジェラシは言葉を吐いていた。


「そして、彼はあの魔水晶で確かに言ってくれた……私が欲しいと! あぁ、もらって、クエイク! 私の全てを貰って! 私のクエイク! 私はあなたのジェラシなのだから!」


 そう、今のジェラシは、クエイクと一緒にいることができさえすれば、人類も、故郷も、友も、仲間も、肉親すらもいらないという歪んだ心に満ちていた。


「素晴らしいデース! 恋に病んだ乙女の姿……ブラボーデース! 私、そういうの大好きデース♪」


 そんなジェラシのことを、女神は賞賛した。

 

「お姫様はどうやらブルブルと恋に完全に侵されてしまったようデースね。でも、仕方ありマセーン。実際、あのブルブルを体感した私の部下の女史も、あのブルブルをもう一度体験したいと発狂してマーシタし、あなたの気持ち分かりマース」


 そう、女神もまた常識が狂って壊れていたからだ。

 そして、女神はジェラシの腕を掴んで今一度尋ねる。



「分かりマーシタ。私と一緒に彼に会いに行きましょう♪ その代わり、もうここには戻ってこれないかもしれマセーンが、それでもいいデースカ?」


「本望よ!」



 歪んで、狂って、壊れて、病んで、しかしそれでも気持ちに偽りなく、ハッキリとジェラシは頷いた。



「オッケーデース! では、早速研究所に戻って座標転移でゴーデース! あっ、そうだ……お姫様~」


「はい?」


「彼と再会したら、私も彼と一日ブルブルエッチなことしたいデースが、いいデースカ?」


「……ふふ……以前までの私なら、彼は私のモノっていうことで独占しましたけれど、もう今の彼は私の所有物ではないので彼やチヴィーチに直接交渉してもらえないかしら?」


「オオ、そうデーシタ。では……許可されたら、お姫様も交えて一緒に3ぴー、ドウデースカ? 私、お姫様の裸にも興味ありマース」


「……はぁ、……それぐらいで恩返しになるのなら」


「決まりデース! では、早速イキまShow time!」


 

 こうして、女神の姿をした悪魔に連れられて、帝国の第一王女であるジェラシの姿はこの日を境に帝国から消えたのだった。


 ハーラムや巨神兵の敗北という最悪の報と同時に、帝国の姫が行方不明という事件と悲しみはすぐに地上全土に伝わった。


 そして、次に彼女が皇帝や勇者たちの前に姿を現すそのときは――――








――第一部 完――






――あとがき――


これにて第一章は完となります。足早でしたが読んで戴きありがとうございました。ただブルブルブルブルするだけのアホみたいな話でシリアスも途中崩壊したりしましたが、お付き合いくださりありがとうございました。


本作カクヨムコンにも登録しており、文字数の関係上今日まで怒涛の更新でしたが、何とか達成できました。

これにて怒涛の更新ラッシュも終わり、一区切りにしたいと思います。


本作、ここまで読んで頂けましたら、下記の「☆」でご評価頂けましたら幸甚です。今後の参考にしたく。また、とても嬉しくて、更新のモチベーションにもなります。


作者のフォローも何卒よろしくお願い申し上げます。


また、本作はノクターンノベルズにてブルブルの詳細を解禁したものの投稿を始めております。一定の年齢以上の方でご興味ありましたら、ぜひご覧ください。


では、また!

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ブルブルバイブる! 超振動使いのリミッター解除で逆襲粉砕無双 アニッキーブラッザー @dk19860827

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