第108話 空を舞う赤い雨

・イザホのメモ

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 シープルさんが所属している黒魔術団は……このサバトの元締めの指示に従う、元締め直属の黒魔術団だ。

 そして、スイホさんに脱獄の手助けをしたという人物は、シープルさんたちとは別の黒魔術団のリーダー……


 初めてワタシたちがこのサバトにたどり着いた日、白髪の少女の姿に化けてワタシたちを襲ってきた……


 ワタシの頭部……白髪の少女の、弟だ。


 フジマルさんとバフォメットに助けられたおかげで、そのリーダーは元締め直属の黒魔術団によって捕らえられていたはずだけど……


 スイホさんと、同じ牢屋だったんだ!!




「シープルさん! スイホさんを見つけたよ!!」


 無線の紋章からマウの声が聞こえる。

 マウたちも、河川敷の上からスイホさんを見つけたんだ!


 次にホウリさんの声が、別の場所にいるシープルさんに向かってかけられる。


「スイホさんの後ろに、追いかける人影を見つけました! あの動きは……アタイたちの黒魔術団の走り方じゃありません!!」




 川の向こう側で逃げるスイホさんを追いかける黒いローブの人物は、大きく手を振っていて、少し豪快な感じ……

 まるで、フジマルさんのようだ。フジマルさんのインパーソナルであることを、わざとワタシたちに知らせているみたいだ……!




「くそっ!! やつはスイホという女も狙っていたんだ!!」


 焦るシープルさんの声……その次は、クライさんの声だった。


「みんな、落ち着いて……!! イザホちゃんの周りから警備を離れさす目的かもしれない……!!」

「ッ!! わかった!! 俺はマネキンたちを連れてそっちに向かう! イザホとバフォメット、その付近にいるヤツらはスイホを追えっ! イザホとバフォメットのふたりと、他の護衛、互いの距離が離れすぎないようにしろッ!!」


 それとともに、シープルさんからの無線は切れた。





「あっ!!」




 それとともに、マウが声を上げる!!




「スイホさんがッ!!!」




 川の向こうでは、スイホさんの腕が黒いローブの人物に捕まれていた!!




「向こう側じゃあ……もう間に合わないっ!!」




 ッ!!




 マウの悲鳴とともに、ワタシの体が浮かび上がった!!


「ワレ……ワガ娘トトモニ……タスケル……!!」


 バフォメットが、ワタシの体を持ち上げて……!!




 飛び上がった!!













 上の橋に激突しない高さで、


 ワタシをかかえたバフォメットは、川を飛びこえていく!!




「ワレ……処分キマッテ……隠レテイタ間……紋章ノ実験……ハハト一緒ニ……ヤッテタ……」




 この跳躍力……それにバフォメットの身体能力も……紋章によるものだったんだ……











 そう思っている間に、バフォメットは向こう岸にいたスイホさんと黒いローブの人影の前に降り立った!!


「!!」「……」


 驚く表情でワタシたちを見るスイホさんと、無視してなにかを取り出す黒いローブの人影……




 そのローブの人影が持っていたのは……羊の紋章が埋め込まれた画用紙!!




「私は……この鳥羽差市を愛しているッ!!」




 手に触れたローブの人影は右手を吸い込まれながらも、川の中に飛び込んだ!


「イザホちゃん!! 来ちゃダメッ!!」


 ワタシに手を伸ばしたまま、スイホさんも吸い込まれていき……




 残った画用紙が、川の水面に触れようとしていた!




「……ッ!!」




 ……


 なんとか、川に落ちる前に画用紙を手に取ることができた!


 もしも川に落ちていたら……画用紙が水で形が変わってしまい、紋章が機能しなくなるところだった!




「イザホッ!」




 横をみると、マウがこちらにやって来た。


 その後ろからは、黒いローブを着た人影たちがやってくる! その中には、クライさんとホウリさんの姿も!!


「女……連レ去ラレタ……!! 時間……ナイ……!!」




 ワタシはバフォメットと顔を合わせてうなずくと、その画用紙に埋め込まれている羊の紋章に手を触れた!




「あ!! ちょっと待っ――」











 羊の紋章から裏側の世界へと、ワタシはバフォメットとともに移動した。




 この裏側の世界は……




 星……空……?




 !! 「ッ!?」




 ワタシとバフォメットの体は、重力に引き寄せられた!










 星空の中を、バフォメットとともに落ちていく。


 周りを見てみると、どうやら地面からは塔のような建物が複数建っているみたい。


 だんだん地面が近づいていくとともに、赤い液体が空を舞うようになった……




 ……赤い液体?




 ワタシが地面に顔を向けると、まもなく塔の表面にぶつかるところだった。


 その塔の表面には、羊の紋章が埋め込まれていた。










 羊の紋章から出た先は……中世の建物のならぶ、路地裏のような場所……


「サバト……戻ッテキタ……?」


 きっと、裏側の世界をトンネルのように使ったのだ。

 この広いサバトを、ワープのように短時間で長距離の間を動くために……


 困惑するバフォメットの横で、ワタシは周りを見渡す。


 羊の紋章から出た赤い液体は……路地裏の奥まで続いている……




 その赤い液体の上に、なにかが転がった。




 ッ!! 「ォッ!!」











 そのなにかは、強い光を放った!!











 あまりにも強い光で……義眼に埋め込んでいる目の紋章は、白い景色しか情報を伝えられない!!!











「私は……この鳥羽差市を愛しているッ!!」










 白い景色の中、両腕を拘束される感覚とともに、フジマルさんの声が響き渡った。











「ボクの婚約者にひどいことするなら……フジマルさん、あなたでも容赦しないよ!!」









 その声とともに、ワタシの体はけいれんした。











 視界が元に戻ると、ワタシは地面に倒れていた。


 顔を上げると、フジマルさんのインパーソナルが立ち上がろうとしているのが見えた!




 目の前にいたのは……白く、小さな……だけど、とても頼もしい背中……



 マウだ!!



 マウの右手からは、スタンロットの紋章による半透明の棒が出ている!


 スタンロットの紋章で、フジマルさんのインパーソナルに触れたんだ!!




 前に視線を戻すと、フジマルさんのインパーソナルが赤い液体とは反対方向に走り出している。




「みんな!! フジマルさんのインパーソナルを追ってください!!」




 それとともに、後ろからマネキンの集団が走り出す。

 集団の先頭で、ホウリさんはナイフを握りしめ、フジマルさんのインパーソナルを追いかけていった!!






次回 第109話

8月23日(火) 公開予定

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