第108話 空を舞う赤い雨
・イザホのメモ
【https://kakuyomu.jp/shared_drafts/ibyTecoJoSLgbfBZuek35TccpIowaOD9】
シープルさんが所属している黒魔術団は……このサバトの元締めの指示に従う、元締め直属の黒魔術団だ。
そして、スイホさんに脱獄の手助けをしたという人物は、シープルさんたちとは別の黒魔術団のリーダー……
初めてワタシたちがこのサバトにたどり着いた日、白髪の少女の姿に化けてワタシたちを襲ってきた……
ワタシの頭部……白髪の少女の、弟だ。
フジマルさんとバフォメットに助けられたおかげで、そのリーダーは元締め直属の黒魔術団によって捕らえられていたはずだけど……
スイホさんと、同じ牢屋だったんだ!!
「シープルさん! スイホさんを見つけたよ!!」
無線の紋章からマウの声が聞こえる。
マウたちも、河川敷の上からスイホさんを見つけたんだ!
次にホウリさんの声が、別の場所にいるシープルさんに向かってかけられる。
「スイホさんの後ろに、追いかける人影を見つけました! あの動きは……アタイたちの黒魔術団の走り方じゃありません!!」
川の向こう側で逃げるスイホさんを追いかける黒いローブの人物は、大きく手を振っていて、少し豪快な感じ……
まるで、フジマルさんのようだ。フジマルさんのインパーソナルであることを、わざとワタシたちに知らせているみたいだ……!
「くそっ!! やつはスイホという女も狙っていたんだ!!」
焦るシープルさんの声……その次は、クライさんの声だった。
「みんな、落ち着いて……!! イザホちゃんの周りから警備を離れさす目的かもしれない……!!」
「ッ!! わかった!! 俺はマネキンたちを連れてそっちに向かう! イザホとバフォメット、その付近にいるヤツらはスイホを追えっ! イザホとバフォメットのふたりと、他の護衛、互いの距離が離れすぎないようにしろッ!!」
それとともに、シープルさんからの無線は切れた。
「あっ!!」
それとともに、マウが声を上げる!!
「スイホさんがッ!!!」
川の向こうでは、スイホさんの腕が黒いローブの人物に捕まれていた!!
「向こう側じゃあ……もう間に合わないっ!!」
ッ!!
マウの悲鳴とともに、ワタシの体が浮かび上がった!!
「ワレ……ワガ娘トトモニ……タスケル……!!」
バフォメットが、ワタシの体を持ち上げて……!!
飛び上がった!!
上の橋に激突しない高さで、
ワタシをかかえたバフォメットは、川を飛びこえていく!!
「ワレ……処分キマッテ……隠レテイタ間……紋章ノ実験……ハハト一緒ニ……ヤッテタ……」
この跳躍力……それにバフォメットの身体能力も……紋章によるものだったんだ……
そう思っている間に、バフォメットは向こう岸にいたスイホさんと黒いローブの人影の前に降り立った!!
「!!」「……」
驚く表情でワタシたちを見るスイホさんと、無視してなにかを取り出す黒いローブの人影……
そのローブの人影が持っていたのは……羊の紋章が埋め込まれた画用紙!!
「私は……この鳥羽差市を愛しているッ!!」
手に触れたローブの人影は右手を吸い込まれながらも、川の中に飛び込んだ!
「イザホちゃん!! 来ちゃダメッ!!」
ワタシに手を伸ばしたまま、スイホさんも吸い込まれていき……
残った画用紙が、川の水面に触れようとしていた!
「……ッ!!」
……
なんとか、川に落ちる前に画用紙を手に取ることができた!
もしも川に落ちていたら……画用紙が水で形が変わってしまい、紋章が機能しなくなるところだった!
「イザホッ!」
横をみると、マウがこちらにやって来た。
その後ろからは、黒いローブを着た人影たちがやってくる! その中には、クライさんとホウリさんの姿も!!
「女……連レ去ラレタ……!! 時間……ナイ……!!」
ワタシはバフォメットと顔を合わせてうなずくと、その画用紙に埋め込まれている羊の紋章に手を触れた!
「あ!! ちょっと待っ――」
羊の紋章から裏側の世界へと、ワタシはバフォメットとともに移動した。
この裏側の世界は……
星……空……?
!! 「ッ!?」
ワタシとバフォメットの体は、重力に引き寄せられた!
星空の中を、バフォメットとともに落ちていく。
周りを見てみると、どうやら地面からは塔のような建物が複数建っているみたい。
だんだん地面が近づいていくとともに、赤い液体が空を舞うようになった……
……赤い液体?
ワタシが地面に顔を向けると、まもなく塔の表面にぶつかるところだった。
その塔の表面には、羊の紋章が埋め込まれていた。
羊の紋章から出た先は……中世の建物のならぶ、路地裏のような場所……
「サバト……戻ッテキタ……?」
きっと、裏側の世界をトンネルのように使ったのだ。
この広いサバトを、ワープのように短時間で長距離の間を動くために……
困惑するバフォメットの横で、ワタシは周りを見渡す。
羊の紋章から出た赤い液体は……路地裏の奥まで続いている……
その赤い液体の上に、なにかが転がった。
ッ!! 「ォッ!!」
そのなにかは、強い光を放った!!
あまりにも強い光で……義眼に埋め込んでいる目の紋章は、白い景色しか情報を伝えられない!!!
「私は……この鳥羽差市を愛しているッ!!」
白い景色の中、両腕を拘束される感覚とともに、フジマルさんの声が響き渡った。
「ボクの婚約者にひどいことするなら……フジマルさん、あなたでも容赦しないよ!!」
その声とともに、ワタシの体はけいれんした。
視界が元に戻ると、ワタシは地面に倒れていた。
顔を上げると、フジマルさんのインパーソナルが立ち上がろうとしているのが見えた!
目の前にいたのは……白く、小さな……だけど、とても頼もしい背中……
マウだ!!
マウの右手からは、スタンロットの紋章による半透明の棒が出ている!
スタンロットの紋章で、フジマルさんのインパーソナルに触れたんだ!!
前に視線を戻すと、フジマルさんのインパーソナルが赤い液体とは反対方向に走り出している。
「みんな!! フジマルさんのインパーソナルを追ってください!!」
それとともに、後ろからマネキンの集団が走り出す。
集団の先頭で、ホウリさんはナイフを握りしめ、フジマルさんのインパーソナルを追いかけていった!!
次回 第109話
8月23日(火) 公開予定
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