第8話 ニンゲン

 いつもは猫達しか居ない昼下がりの駐車場に、珍しく人間が訪れていた。

 歳の頃50代と思われるその女性は、持参したキャットフードを一掴みして地面に置いていく。

5、6回それを繰り返して彼女は去って行った。寂しそうに辺りを窺うのは餌に寄ってきた猫と戯れたかったからであろうか?


 野良猫達は居なかった訳ではない。人間と関わりたくなかったから物陰に隠れていたのだ。


 女の気配が無くなったのを確認したキジトラとブチは、ゆっくりと駐車場に姿を表す。


「またあのニンゲンが食べ物を置いていったぞ」


 置かれたキャットフードが怪しい物では無いかと、匂いを嗅いで確認するキジトラ。


「どういうつもりなのか知らんが、時々ああいうニンゲンが居るんじゃよな。まぁ餌取りがシンドい年寄りにはありがたい事ではあるがな」


「何を考えているんだろう? 俺達の事を餌も取れない赤ちゃんだと思ってるのかな?」


「違うわよ」


 アメショーが思わせぶりな台詞と同時に颯爽と現れる。


「あいつらニンゲンは猫を崇拝しているのよ。私達はニンゲンにとって『神』なのよ」


 アメショーの新解釈に驚きを隠せないキジトラとブチ。


「ニンゲンに『さぁ、私に食べ物をくれなさい』って言うと、すぐに食べ物を寄越すわ。あいつらはまぁ、餌をくれる機械みたいな物ね」


 そういうものなのか…?


 今度ニンゲンに会ったら「やいこらニンゲン、俺に食い物を寄越せニャー!」と言ってみようと決めたキジトラだった。




 ※注意:野良猫に餌を与える行為は推奨されない行為です。読者諸兄はされません様お願いします。

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