第6話 獲物分け

「ねぇ聞いて! うちの高倉ったらヒドイのよ」


 駐車場にやってくるなりミケが他の3にん(キジトラ、ブチ、チンチラ)に当たり散らす。


「高倉はいつも自分はご飯を食べずに全部私にくれるのよ。だって私、高倉がご飯食べてるの見たこと無いし。…ま、それはいいんだけど、普段無理させて可哀想だから、たまには私が奢ってあげようと思って、頑張って仕留めたカナヘビを半分だけ持っていってあげたのよ。そしたらどうしたと思う?」


 キジトラは『餌を分けてあげるなんてミケは優しい良い子だな』と思ったが、それに答えたのはチンチラだった。


「あー、多分怒られたんじゃないの?」


「そーなの! 私は良かれと思って高倉の寝床の枕元に置いておいて上げたのに、見た瞬間大騒ぎして、メチャクチャ怒られたのよ。酷くない?」


 どうにも怒りの収まらないミケは鼻息荒く3にんに詰め寄る。


「うん、分かるよ。ボクも昔、飼い主にセミをプレゼントしたら怒られて、そのままボクごと捨てられたからね」


 キジトラは初めて聞くチンチラの過去。彼もトボケている様でいて意外と苦労にんだったのだ。


「ねー? 腹立つわよねぇ。トカゲもセミも駄目だって言うなら、一体何を上げれば満足するのかしら?」


 ここで満を持してブチが口を開いた。


「ホッホッホ、ニンゲンは好みにうるさいからのう。あ奴らは食べる為に狩りをする事は無いのじゃ。追い払うだけでは飽き足りず『嫌いだから殺す』という野蛮な生物なのじゃよ」


 ミケとチンチラは黙ってブチの次の言葉を待つ。


「もしニンゲンに気に入られたいなら、奴らの狩りの手伝いをしてみてはどうかのう? ニンゲンの最も嫌う蜚蠊ごきぶりを狩って持っていけば奴らも喜ぶと思うぞい」


 ミケのブチを見る目が尊敬に変わる。


「なるほど、その発想は無かったわ… さすが長老の言葉には含蓄があるわね」


 ミケの賞賛の声に、横に居たキジトラとチンチラも完全同意していた。

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