第4話 ペットボトル

「ねぇ、前から不思議だったんだけど…」


 アメショーがキジトラに声をかける。

 アメショーは元・飼い猫だったが、人間に捨てられて何も分からないまま世間の波に揉まれ続け、野良で必死に生き抜いてきた苦労にんだ。


 今日はそんなアメショーとキジトラの2匹ふたりだけだ。


「町の至る所に水の入った透明の容器が置いてあるじゃない? あれって何なの?」


 確かに言われてみれば街のそこかしこで、そんな容器を見た事がある。しかしキジトラもあれが何の為に存在しているのかは、まるで分からなかった。

 そもそも、そんな疑問を抱いた事も無かったのだ。


「うーん、何なんだろうな? 水飲み場?」


「それにしてはどこからも水は出てこないわよ?」


「…じゃあ何かのオモチャかも?」


「誰かがあれを触っているのを見た事は無いわよ?」


「マジで分からん。あれ太陽の光が変な風に入ってきてて時々眩しい事があるよな」


「そうそう! 雀とか獲ろうとした時に眩しい光でウギャってなるのは地味にムカつくのよね」


「道が狭くなって邪魔だし」


「そうそう! あれのせいで何度車に轢かれそうになった事か…」


 白熱した2匹ふたりの議論は、最終的に『あの容器は猫への嫌がらせとして置かれている』という結論に落ち着いた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る