「なぁ、駐車場（ここ）で一番偉いのは誰だ？」

　新参者のクロが『おひとりさまタイム』を満喫していたキジトラに問いかける。

『強い』なら分かるけど『偉い』って何だ？　生まれてからずっと野良猫のキジトラには、『偉い』の概念すら分からない。

　腕っぷしで言うなら、この界隈では体も大きくて力も強い茶トラが一番だろう。

　頭の良さと言う事なら齢（よわい）を重ねたブチは色々な事を知っている。尤も最近はボケてきて無駄にウロウロと徘徊する様になり、『ウロブチ』と呼ばれている有様ではあるが……。

　毛並みの良さならミケがダントツだ。人間に毎日ブラッシングさせているらしい。

　素早さならアメショーが一番だ。彼女はミケ程では無いが美猫（じん）だし、それに頭も良い。

　仲間内の人気者、という事ならチンチラだ。あいつのノンビリした性格はイジり甲斐があって皆から親しまれている。

　で、『偉い』って何なんだ？

　人間の考え方に毒されて、猫社会に訳の分からない概念を持ち込まれても迷惑なだけだ。

　キジトラは目を閉じて『偉い』の意味を考えていたが、何だか全てがどうでも良くなって、結局そのまま眠ってしまった。

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