第7話 魔法学院

 俺は、王都ユーラティアの通行証を作り、此処に来た一番の目的である『ユーラティア王都魔法学院』に辿り着いた。

 俺は此処で更なる力を。本来の力を取り戻すべく此処へ入学する。


 学院は王都最大の建物で、青基調の金、白、水色で装飾された洋風の造りとなっている。


 巨大な正門から学院の中へ入ると、多くの生徒らしき制服を来た人間が各々目的の場所へ向かっているのか学院の奥へ歩いて行く様子と、入ってすぐ正面で、一人の女性の受付が俺を迎えた。

 受付は俺を見つけるとしっかりとお辞儀をする。


「此処が魔法学院か? なら、入学しにきた」

「入学の申し込みですね。では通行証の提出と、こちらに必要事項の記入をお願いします」


 受付はカウンターテーブルの上に、通行証手続きと同じ様な紙を置くと、俺は通行証を見せる。恐らくこの通行証は王都へ入る為に必要以外に身分証明書になるのだろう。

 紙の記入項目は、名前や生年月日の個人情報と、登校する時間帯、どの科目に所属するか。という欄があった。

 俺の予想通り百万人以上の生徒を収容するこの学院は時間制で生徒の数を管理しているようだ。

 そうなると、記入欄には朝昼夜、深夜の四つに分かれており、一つの時間帯にいる生徒の数は何人いるのだろうか? 簡単に計算すると五十万人になるが……それでもやはり多い。一体この学校はどれだけ広いんだ……。


 俺は記入欄に時間帯は、別枠で住み込みと記入するが、所属科目に悩む。


 此処はあくまでも学校だが、別に全ての科目を学ぶ必要は無く、生徒が入学時に自ら選んで学ぶらしい。要は特化科目か。

 科目の種類は、戦闘科、支援科、回復科、多目的科がある。

 正直言えば全部の科目に入りたい。俺は何せ神だからな。単なる興味では無い。全ての力を会得している事なぞ当然だ。いや、当然だったというべきか。


「んー……。受付よ、全ての科目に入る事は出来ないのか?」

「申し訳ありません。時間制で生徒数を分けていると同時に、科目別で分けているのも同じ理由ですので……。

 すこし手間が掛かりますが、入学後、ご自分で授業中の科目に乱入という形で受ける方法しかありませんかね」

「そうか。分かった」


 それならば仕方が無い。俺は記入欄にとりあえず魔法の基本とも言える戦闘科を記入した。


「これで良いか?」

「ありがとうございます。では、最初に理事長であるグロース・ユニヴェルム様にお会いしましょう。

 体内魔力の検査をします。これは特にこれからの学院生活に何も関係はありませんが、理事長が、個人的にどのような授業で何を意識すれば成長出来るのか教えて頂けるので、必要が無いと言うのなら次に行きますが……」

「そうか。是非お願いしよう」


 これも正直言えばお願いしたいくらいだ。相手の体内魔力を調べれば、俺が何故力を失ったのか分かる筈だ。

 自分では最初は魔力の流れすら感じ無かったのだ。自分で調べようとも分かる筈が無い。

 それは今もだ。最早人間と同じだろうと断定するこの身体は、幾ら念じても理由がさっぱりだ。


 そう言うと受付は俺を案内。学院内の廊下の先を指差す。

 そこには、俺の最終目標である次元回廊に酷似したゲートがあった。一見何処に繋がっているのか分からないが、此処では親切に何処に繋がっているのか看板が置かれている。

 恐らくは魔回廊。次元回廊とは別で、次元回廊は文字通り『全く別の次元』に繋がる人間では到底開く事は出来ない特別魔法に分類されるが、魔回廊は、それなりの魔力を使い慣れている人間で有れば使える転移魔法。『別の場所』へ瞬時に移動できる魔法だ。


 俺はこれを見てこの学院が百万人を超える生徒数を余裕で収容できる理由が分かった。

 王都最大と言っておきながら実はこの学院は、百万人以上の生徒が収容できる程の広さは持っていないのだ。恐らくこの建物の中で見える全ての部屋は教員用だろう。

 逆に生徒は何処にいるのか? と言えば本学院では無い別の場所に作られた施設に全て収容しているのだろう。

 勿論、この魔回廊経由意外では絶対に外に出られないような作りにされており、窓から見える景色は幻覚魔法でかも王都にいるような錯覚をさせる。

 実際に見なくては分からないが、良くできた学院だ。


「あちらのゲートは理事長の部屋に直通になっているので、用が済んだらこちらに戻ってきてください」

「分かった」


 俺は、これが力を取り戻すきっかけになるだろうと心に希望を持ちながらゲートの中へ入っていった。

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