第6話 王都ユーラティア
俺はノルドと王都に向かう中、途中で分かれて漸く到着した。
流石は王都と言った所か、巨大な石で作られた城壁としっかりとした木の大門が俺の前に立ち塞がった。
大門前までは多くの馬車が列を作り、荷物無しの人は、その列を素通りして大門前まで行く。
大門では鎧の人間に言われた通り、門番の兵士に止められ、通行証の提出を求められた。
俺は手紙を門番の兵士に渡すと何処から来たのかを付け加える。
「これで良いか? ノル村から来た」
「あぁ、了解しました。では本通行証を作りましょう」
「これは通行証にはならないのか?」
「これはあくまでも知り合い兵士からの手紙ですからね。正式な通行証ではありません。
案内を付けるので、役所で正式な手続きをお願いします。
では、ようこそ王都ユーラティアへ」
ノルドの知り合いだった兵士に言われた通り、本当にすんなり通る事が出来た。
兵士一人一人の雰囲気も出来る限り親しみ易くされており、これなら確かに小さい頃のノルドでも簡単に行き来できた訳だ。
俺は王都の大門を通ると同じ様な姿をした兵士の案内役が俺を役所へと導く。
役所に到着すると、これまた長い行列が出来ており、兵士の信頼により特別無料で本通行証を作成できる俺は、その行列を無視して、受付まで辿り着いた。
施設の中を見れば見る程全員が兵士構成。どうやら重要な施設はみな、兵士が役割を果たしているようだ。
受付の前まで来ると、受付の兵士に仮通行証の提出を求められた。
俺は手紙を渡し、「ノル村から来た」と言う。
すると受付から本通行証作成におけるルールと情報を記入する紙を渡され、俺は出生の枠にノル村と書き、生年月日、年齢、その他諸々の個人情報は、適当に書いた。
手続きはサクサクと進み、凡そ十分程で終わった。
俺は通行証手続きが終わると、役所の外で控えていた案内役に案内を頼む。
「終わったぞ。それでなんだが、俺は王都が初だ。出来たら案内を頼みたい」
「畏まりました。では、王都ユーラティアの大まかな施設を案内します」
そういうと案内役は歩き始め、俺はそれに付いて行く。
最初に説明されたのは目の前にある役所だった。
「最初に今カオスさんが通行証手続きをした此処は役所です。通行証手続きの他に行商人の荷物受け取りや、商店の開設、荷物の輸送等々、王都内と外から来た人達に対する許可や承諾書の手続きを此処で全て行います。
建物は王都の政府が管理しており、警備員や受付は全て王国兵士が担っています」
勿論、政府以外が管理している施設もあると思うが、こういう重要な施設は従業員まで完全に兵士のみとなれば、それなりの管理体制の厳しさが伺える。
きっと客と従業員の間でのトラブルは殆ど起こらないのだろう。
役所から少し歩いて、次に案内役は、王国兵士の本部を説明する。
「此処は我々王都の兵士が集う本部です。
基本警備組織として中心に活動しており、王都内のトラブル処理や警備員の派遣は勿論、軍兵として王都外への調査や、兵士の派遣、新兵の訓練を此処でやっています。
同時に政府も此処で活動しており、王都の凡ゆる経済面に置いて最重要施設と言えるでしょう」
警備、軍事、政府を一括にした施設とは。本当に重要な施設だ。ただその分警備体制は超厳重で、此処が襲撃で壊す事はかなりの至難なのだろう。
それから大門から真っ直ぐある幅広の街道を突き当たりまで歩くと、案内役は目の前にある建物を大きく手を広げて説明する。
「此処は本部より一番目に最も重要な施設の王城です。国民の悩みや問題は本部を通して解決されるのですが、此処は限られた王族と、他国との重要な交渉をする人間しか入れません。
また、ユーラティアの王も此処に住んで居られます」
王城はあくまでも重要な外交専門か。警備は一見手薄に見えるが、それ以前に本部が正に防衛線の役割を果たしているという事か。
俺はそろそろ王都に来た目的を言い、案内役に今案内してもらいたい場所を言う。
「なるほど。良く分かった。全体の案内はここまで良い。それより此処には魔法学校があると聞いて来たのだが、それは何処にある?」
「あぁ、それを聞いて此方に。それなら今すぐ案内しますね」
そう言うと案内役は、王城を後にし、大門から王城までの大通りの真ん中辺りで角を曲がると、そこには本部や王城よりも巨大な建物が堂々と建っていた。
「此処が『ユーラティア王都魔法学院』です。王都内最大の建物であり、唯一の学校になっています。
王都の住人は子供から大人まで生徒になっており、魔法を学ぶ以外にも基本的な字や数学と言った授業も兼ね備えています。
また、この学院の理事長兼大魔道士であるグロース・ユニヴェルムさんが管理をしています。
生徒数は、王都人口二百万人中、殆どで、王国兵士も生徒の中に入っています」
王都人口ほぼ全員が入るとは、おそらく時間制で分けているのだろうが、王都全ての教育は此処から来ているのか。
しかも、管理しているのは理事長たった一人のみ。一体どれだけの人物なのだろうか?
例え神である俺でも、見守っている人間の数は世界人口で数億ではあるが、一人では無い。
あくまでも神界から世界の均衡を保つ為に、それぞれの役割に適した神が個人で管理している為、もし世界一つを一人の神で管理するとしたら、俺でも無理だ。
まぁ、神と人間を比べてしまうと次元がそもそも違うからなんとも言えないが、数百万の人間を一人で管理するのは只者では無い。
「ありがとう。案内はここまでで良い。俺は此処に入学するつもりだからな」
「畏まりました。他に何か有ればいつでも役所におりますので、気軽にお呼びください」
そうして俺は案内役と解散し、真っ直ぐ学院へと歩き出した。
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