第四章 ケンガイサッシュで放つ想い

#83 雨羽霧慧のレポート③


【霧慧視点】


 はぁい、雨羽霧慧よ。

 計画していた旅行も済んで、夏休みも後半に差し掛かるわ。

 その旅行も一言では説明出来ない程の出来事がたくさんあったから、順を追って説明していくわね。


 そもそもこの旅行は、星夏ちゃんと海涼ちゃんが想いを寄せる康太郎君とのために計画したモノなの。

 頑固な康太郎君にあれこれ言うより、恋に一生懸命な二人にとって好都合な状況を作り出すことで、彼女達が積極的になるようにしたわけ!

 そのために電車の席順や部屋割りを考えたりしたんだから! 

 邪魔者吉田君が居る中でよく頑張ったわね、私。


 そうして始まった旅行は一日目から実に面白くなってきたわ。

 

 私とナオ君のイチャつく姿を見て触発されたのか、海涼ちゃんが康太郎君にあ~んしたかと思ったら、対抗意識を燃やした星夏ちゃんが口移ししたのよ。


 ……康太郎君から色々と聴いていたけれど、星夏ちゃんのキスって随分手慣れてる感じだったわね。

 やっぱりあれだけ上手い方がナオ君も良いのかしら……?

 なんて思ったけれど今は置いておきましょう。


 ともあれ目的地に着いた私達は、早速 海を満喫することにしたの。

 久しぶりだったけど、海はやっぱり良いモノね。

 私とナオ君が二人で遊泳している間、康太郎君達の方は海上アスレチックに行ったり、迷子を助けたり色々とあったみたい。

 

 夕食の後にはガールズトークで随分と盛り上がったし、ナオ君ともたっくさんイチャイチャしたり随分と楽しめたわ。

 え、夜はどうだったって?

 

 ……。


 …………。


 ──……なんか凄か──って、言うわけないでしょ!

 セクハラで訴えるわよ!?


 大体星夏ちゃんも海涼ちゃんも、どうしてあんなことを嬉々として話せるのかしら?

 恥じらいというモノがないの?

 私は一生混ざれる気がしないわ……。


 ごほん。


 私達がそんなことをしている間に康太郎君の中で決意が固まったのか、彼から星夏ちゃんと二人きりになれる様に手伝って欲しいと連絡があったの。

 当然私は即了承、こうなることを予測して前もってモールの情報を集めておいて良かったわ!

 

 そうして康太郎君達を二人きりにしたところで、彼は二年以上の想いを込めて告白したそうなんだけど……。

 なんと、そこで助けた迷子の父親が星夏ちゃんの父親と同一人物であることが発覚したの!

 七年経っても星夏ちゃんはかつての家族だと気付いたのだけれど、向こうは非情なことに自分が捨てた娘だと気付かなかったみたい。

 

 ほんっっっっと何様よソイツ!!

 自分が発端の浮気で娘がどれだけ苦しんだか知ろうともしないばかりか、忘れるなんて父親以前に人としてどうかしてるわ!!

 星夏ちゃんがもう関わりたくないから報復しないって言わなかったら、二度と人目のある場所に出てこれないくらい追い詰めてやったのに……フンッ!


 まぁそんな非常識な人のことは放っておいて、肝心なのは星夏ちゃんのことよ。

 父親の人でなしな態度に彼女は深く傷付いてしまったの。

 

 そんな星夏ちゃんを康太郎君が支えて癒やして、二人は互いの想いを通じ合わせることが出来た結果……。


 恋人になる寸前のところで足踏みしちゃったのよ!!!!

 

 とはいえ星夏ちゃんが自分の噂のせいで、康太郎君を悪く言われるのは我慢出来ないって気持ちは分かるわ。

 私がナオ君と付き合い始めた頃も、周りがうるさかったのなんの……。

 っま、そういう輩は片っ端から黙らせてやったけれどね!


 でもねぇ……やっぱりあと一歩だけ踏み込めば恋人なのに、勿体ないというかもどかしいというかお預けというか……とにかくもやっとしてしまうわね。

 そのモヤモヤを解消するためにも、星夏ちゃんの噂を解消することに集中しないと。

 以前から考えていた策も、ようやく日の目を見ることになるわ!

 

 まぁ……それらのために海涼ちゃんを蔑ろにする形になってしまうけれど。

 康太郎君の性格上、たった一人を真摯に想い続けるでしょうね。

 海涼ちゃんも彼とはお似合いだとは思うけど、その心を射止めたのが中学時代の星夏ちゃんだった。

 ここから逆転しようと思うならタイムリープしない無理じゃないかしら?


 言ってしまえばそうでもしないと、康太郎君を振り向かせることは不可能に近いということ。

 彼女の純愛だって報われて欲しいけれど、康太郎君の答えは最初から変わらない。

 ようやく星夏ちゃんと気持ちを通わせたのであれば尚のこと、私も非情にならざるを得ないわ。


 それでも……康太郎君と海涼ちゃんには友達でいて欲しい。

 そう思ってしまうくらいには、二人は仲良しなんだもの。


 さて、感傷に浸るのはこのくらいにして、星夏ちゃんの噂解消の策を──って、なに?


 あら?

 康太郎君からメッセージ?


 ……。


 …………。


 ……ごめんなさい。

 まだ途中だけれど、どうしても見過ごせない用事が出来てしまったわ。

 

 そうね、簡潔に言うと……。




 ──海涼ちゃんを付け狙うストーカーがついに動き出したのよ。 

 

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 第四章スタート!

 次回は7月17日に更新です!

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