第三章 トゲだらけのボエンダンチョウ

#56 雨羽霧慧のレポート②


【霧慧視点】


 はぁい、久しぶりね。

 雨羽霧慧よ。


 早いモノで夏休みが近付いて来たわ。

 夏……海水浴や祭りといったアバンチュールな青春イベントが目白押しな季節。

 恋愛観察が趣味の私にとって、まさに絶好の機会と言えるわね。


 さて、そんな私が目下大注目な二人──荷科康太郎君と咲里之星夏ちゃんについてだけれど、今の心境を一言で表すならこうよ。



 

 キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!


 


 あぁ、あぁっ!

 遂にこの瞬間が来たわ!!

 今までずっとして来たもどかしい思いが、ようやく報われる時が来たのよ!!


 ……ごほん。

 ごめんなさい、少し羽目を外しすぎたわ。


 これから何があったかはキチンと説明するから、とりあえずは耳を傾けて頂戴。


 まずは、星夏ちゃんと海涼ちゃん──眞矢宮海涼ちゃんが康太郎君の家で鉢合わせてしまったの。

 海涼ちゃんから康太郎君に恋をしていると伝えられて、星夏ちゃんはそれを喜んで後押ししようとしたみたいね。

 けれども、康太郎君の気持ちを知っている海涼ちゃんはそれに激怒、二人は口論になったらしいわ。


 そして遅れて帰って来た康太郎君が割って入ったのだけれど、今度は彼と星夏ちゃんの間に口喧嘩が発生したのよ。

 そのまま二人は距離を置く事になってしまって、私としては非常に肝を冷やされたモノだわ。


 お互いがお互いの幸せを願ってるのに、気持ちがすれ違って離れ離れになってしまうなんて切ないもの。

 そこまで想い合ってるのにどうして付き合わないのか、なんて疑問は私だって何十回と感じているけれどもね!!


 しかも康太郎君ったら、私にはいつまで経っても話してくれない中学時代を、海涼ちゃんに話したって言うのよ!?

 ずるいずるい!

 私の方が一年くらい前から知りたかったのに!!

 

 ……まぁ、一協力者にしか過ぎない私より、自分に好意を持ってくれている人が優先になるのは当たり前だったわね。


 私が知る限りでは、康太郎君と星夏ちゃんの中学時代はあまり吹聴して良いモノではないという事くらいかしら。


 ともかく、二人の仲直りをどうしたモノかと考えている内に、星夏ちゃんが風邪を引いて休んでしまったの。

 HRでそれを知った康太郎君は、なんと早退して彼女の看病に駆け付けたわけ!

 

 まさかこんな形で看病イベントが発生するとは思わなかったけれど、そこからが重要な話よ。


 風邪を治して登校して来た星夏ちゃんがまた告白されたのだけれども、その時に断った理由がなんと!!


 ──気になってる人がいるんです。


 ですって!!

 これってタイミング的にどう考えても康太郎君の事よね?!

 きっと看病して貰った時に、そう思われる程の事があったに違いないわ!!


 長かった!

 あの二人の微妙な距離感がやっと動き出したのよ!

 

 その切っ掛けは間違いなく、海涼ちゃんが二人の関係を知ったからに他ならないわね。

 彼女が康太郎君に好意を持って接したが故に、否応なしにお互いを見つめ直す様になったからかしら。

 

 そんな訳でまだ確信に至る程では無いにせよ、星夏ちゃんは康太郎君を意識し始めた。

 依然として海涼ちゃんも彼を諦める様子も無いみたいだし、いよいよ三角関係も本格的になって来たわね。


 あぁ、面白すぎてワクワクするわ。


 さてと、星夏ちゃんが康太郎君を意識し出したのなら好都合。

 ここから二人を交際させるのなら、意固地な意気地なしの康太郎君より星夏ちゃんを後押しした方が成功率がグンと高くなるはず。


 とはいえそれじゃアンフェア……海涼ちゃんにもチャンスを与える必要がある。

 私が背中を押すのは星夏ちゃんが壇上に上がるまで。

 そこから先は彼女達自身で、康太郎君とは交際に発展させないといけない。


 夏という季節にまつわる豊富なイベント、それに付随するチャンスを如何にモノに出来るか……求められる課題はそこね。

 

 手始めに……水着回から始めてみましょうか♪

  

=====


第三章プロローグでした!

次回は4月15日の夜8時に更新です!

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