愛穣星心の一日

なおき

第1話 愛穣星心の朝


~ここは愛穣星心の部屋。時間は目覚まし時計が朝6時00分を指す所である。

今日は一日愛穣星心の日常を覗いてみよう。~



~~~♪~~~♪~~~♪


「う~ん・・・」


パシッと目覚ましを叩くと、目覚まし時計から音楽が鳴り止む。

この曲は私の最近のお気に入りアニメの曲だ。


「ふわ~ぁ・・・昨日はちょっと夜更かししちゃったなかな・・・眠い~」


最近テストで勉強ばかりしていたせいで積みアニメが増えてしまったので、消化しようと見始めたのは失敗だったかな。


「なんて言ってる場合じゃないか~・・・うぅ~ん!・・・よし!用意して尚人起こしにいかないとね!」


私の毎朝の日課、それは『お隣の家に住んでいる幼馴染を起こしてご飯を作る』こと。

登校するための身だしなみは自分の家で整え出発、朝ご飯は尚人の家で作り一緒に食べるのが朝の私の日常。


「これでよし!・・・行ってきまーす!」


トレードマークのツーサイドアップや長い髪を整え、制服とその上にジャケットを着てネクタイを締め、黒のハイソックスを穿いて、最後に大切なお気に入りの髪飾りをつけて自宅を出発。

目的地はすぐお隣の桜庭家、生まれた日も病院も一緒とマンガのような幼馴染の家へ合鍵を使って家の中へ。

さて、起こす前にまずは一仕事、一緒に食べる朝食とお昼のお弁当の準備しないと。


桜庭家・・・尚人の両親は現在海外へ出張中でたまにしか帰国できないので、私の家で預かることになった。

元々は一緒に学校に行くのだからと私の家で生活していたが、私達が思春期なのもあって今では別々な家で生活してる。

じゃあ、ご飯作ったり起こす必要ないだろって言われるけど・・・絶対尚人一人じゃいい加減になりそうだし、一緒に学校行くのは変わらないからそれなら一片に済ませるほうが効率的でしょ。


午前7時30分 


「フンフフ~ン♪・・・よし!で~きた、と」


朝ごはんやお弁当の用意も終わり、次はまだ寝ている尚人の部屋へ向かう。

階段を一段一段上る度に、私の日常の始まりが近づく。

見慣れた扉の前に立ち今日も寝てたらいいな・・・と思いながら、『ヨシ!』っと気合を入れなおして扉をノックした。


「尚人~起きてる~?・・・返事なしっと。入るよ~」


扉の音をなるべく静かに開くと、ベットの中で寝ている尚人の姿が見えた。


(今日もぐっすり寝てるなぁ~この寝顔見るのが楽しみなんだよね♪)


この時間が私の密かな楽しみ、この為に毎朝早起きしているといっても過言ではない。

我ながらホント、この幼馴染のことが好きなんだなって思う。

とはいえ、このままで見ているわけにいかないので部屋に入りながらもう一度声をかけなおす。


「尚人、・・・尚人!朝だよ、起きて!・・・もう~やっぱり起きない!」


少し音量を上げて体を揺らしてもなかなか起きない。

尚人は普段はだらしないってわけじゃないんだけど、朝だけはすっごく弱くてなかなか起きてくれない。

今日は学校あるし時間もそんなにあるわけじゃ無いから、少し強引に起こそうかな。


「尚人く~ん、ここにかわいい幼馴染が居ますよ~早く起きないと居なくなっちゃいますよ~」


今日は耳元で囁くように話しかけてみる作戦。

これなら男の子だもん、すぐに起きるよね。


「う~ん・・・。」

ふふーん、目も明いたしさすがに起きたみたい。


「かわいい・・・幼馴染・・・居ないじゃん・・・」

そのまままた目が閉じた。

ほほ~なるほどなるほど・・・目を明けてまで言うセリフがそれですぁ~。


「むぅ~!」

頬を膨らませて唸ってしまった。

かわいいが否定されただけならまだしも、幼馴染ってところまで否定するとか酷すぎるよ!

しかも失言したうえにまだ起きないし。

こうなったらもうしょうがない・・・強行手段だね♪

ゆっくりと、そして確実に。寝息を立て始めた尚人のお腹の上に狙いを定めて・・・。


「な、お、と、く、ん、お、き、ろ~!!!」

椅子に座るかのようにそのまま腰を落とすと、「ぐふぉっ!」と下から声が漏れるのが聞こえた。


「あ、星心!?何するんだよ!?」

「やっと起きた。おはよう尚人」

頬を膨らましたまま、非難するような目のまま尚人へ朝の挨拶をした。

「おはよう・・・じゃなくてなんで俺に座ってんだよ!?」

「なんでって、尚人が起きないからでしょ~。しかも朝からかわいくないとか幼馴染じゃないとか失礼なこと言ってくるし~。」

「はぁ?いったい何のこと・・・あ、もしかして今の夢・・・」

「じ~」

「すみませんでした!」

「よろしい。・・・改めておはよう尚人、朝ごはんできてるから用意して一緒に食べよう」


笑顔に戻しながら尚人の上からどいた。

もちろん尚人が寝ぼけているのも分かってたし、尚人も私が本気で怒っているとは思っていない。

何年も、毎朝こうして過ごしてきているからこその会話なんだと思う。

すぐ用意するわ。と後ろから声を聞きながらドアを閉めて階段を下りて行った。


午前7時45分


「「いただきます」」


登校までまだ時間も十分、今日も二人で一緒に食事しながら、学校やSNSの話題など他愛もない会話が始まる。


「そういえは、昨日のうちにお風呂掃除とかしといてくれた?」

「今日の授業って・・・」

「今週食材買いに・・・」

「今夜は肉系がいいな・・・」


毎日やってくる何気ない朝のひと時、二人っきりで過ごす大切な時間。

こうしてお互いずっとこんな風に過ごせたらいいなって・・・。



午前8時20分


ご飯も食べ終わり、身支度も整えて登校の時間

「尚人、忘れものない?」

「大丈夫大丈夫、星心はホント心配性だよなぁ」

「宿題とか持ったの?今日は数学の大塚先生の授業だから、忘れたら放課後大変なことになるよ?」

「数学の宿題なら持ってるよ。昨日からカバンに・・・あ」


尚人の表情が固まった。

これは持ってはいるがやるのすっかり忘れたな。

昨日忘れないうちにやったほうが良いよって言ったのに。


「・・・もしかしてやってなかったんでしょ?」

「すっかり忘れました!」


やっぱり。

本当なら放っておいて怒られたほうが、尚人の為になるのだろうけど、流石に可哀そうかな。



「も~しょうがないな。学校着いたら見せてあげるから」

「星心様!?ありがたや~ありがたや~」

「もうっ!本当に調子いいんだから!・・・ほら、それじゃ今度こそ行こう?」



鍵を掛け、行ってきますと二人一緒に声に出して出発、

今日も一日私達の日常が始まっていくのだった。

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愛穣星心の一日 なおき @naoki_stera

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