根乃国通り
安良巻祐介
根乃国通りという名前の縁起の良くない通りを毎日通勤で使っていたら、少しずつ顔色が青くなって、気づいたときには心臓も止まってしまっていた。
心臓が止まっても手足は動くので仕事へは通った。
飲み食いしなくても生きられるのだが、酒が飲めないわけではないし、気分としてはやはり食べたり飲んだりしたい。
結局、こうなる前と大して変わったこともなく、週末はいつものバー『ぬまむし』にて今まで通り蛸だか烏賊だかの干物を粗悪な合成酒の肴にして深夜まで粘り、安下宿の二階へ帰って泥のように寝る日々だ。
ただ一つ、寝るときに見る夢から、色彩も音も消えてしまって、静かに寂びた風景を延々俯瞰してるだけの環境映像となったことだけが、わずかに残念である。
根乃国通り 安良巻祐介 @aramaki88
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます