第2話
「お前の顔が大嫌いだ。」
そう言った女が一人いた。
母である。
母は父に似た私の顔を見るたびに、まるで吐瀉物を見たかのように顔を歪ませて
「その顔をこっちへ向けないで。気持ち悪い」と幼少期の頃から言っていた。
別段、母と父が不仲だったわけでは無い。
だが、父は「ろくでなし」であった。
母に内緒でサラ金から金を借り、返せないと分かったら母を風俗に沈めた。
そこで離婚すれば良かったのだが、当時の母は温情深い人だったので離婚には至らなかった。
「あんたの顔、日に日にトシちゃんに似てきたね。憎たらしいったらありゃせんわ。」
代わりに八つ当たりされるようになったのが私だ。
トシちゃん。トシヒコとは私の父の名である。
這い出ても這い出ても、其処は沼。 @srk_nonbiri
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