這い出ても這い出ても、其処は沼。

@srk_nonbiri

第1話


今日こそは。 


今日こそ私は死んでやろうと思った。


理由は単純明快で、


疲れただけである。


呼吸し、生きることに酷い疲労感を覚えたのだ。


生きるというのは、とにかく面倒に思えた。

呼吸をし、飯を食い、眠る。

この一連の動作が、私にとっては非常に面倒で、疲労を蓄積させていった。


友人から

「そういうのを贅沢っち言うんよ。大体、気にしなきゃ良いやんか。アンタも大概やね。」

と言われ、その一言がいよいよ自殺の決意を固めさせた。


満田は私の大学時代にできた唯一の友人である。

まだ未成年だった私に、タバコと酒と講義をサボる術を満田は教えた。

おかげでサボりぐせがついたが、構内での私の評判はなかなかだった。


平凡な成績で特に自分に魅力がある訳でも"そのケ"がある訳でもなかったが、レズビアンの方々は、何故か私に擦り寄ってきた。

が、私も抵抗というものを知らないので好きにさせていた。

それがまた「優しい」と勘違いを生み、気がつくと4人の女と同時に交際していた。


「ネェ高梨。アンタはその顔に助けられてるんよ。その顔は女にモテる顔やけね。」

満田は面白くなさそうに酒を飲みながら私にそう言った。

「そんなことないやろ。満田の方が堀も深くて良いと思うんやけどねぇ。」

「いやいや。」

満田は続けた。

「そりゃ時代が違えば私の方がモテたかもしれん。やけど今はこんな顔どこにだっているんよ。それより、アンタのその目と鼻!そんな涼しい顔を持つやつは、アンタ以外見たことないわ。」


私は自分の顔が大嫌いだったので、それを皮肉としか受け入れられなかった。

むしろ、そこまではっきりと「女にモテる」と言われると恐怖。それしかなかった。



「アンタの顔が大嫌い。」

 

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