第3話両親の馴れ初め
入学式を終え、帰宅した私達は、両親がいない自宅に足を踏み入れ、制服を脱ぎ捨てリビングで寛いだ。
夕方になり、16時過ぎにお母さんが帰宅して、夕飯の仕度に取り掛かった。
17時30分頃には、食卓を囲んで夕飯を摂った私達三人。お父さんがリクエストしていたロールキャベツがおかずに出てきた。他にも細々としたおかずが並べられ、ぺろりと平らげた。
お母さんが作ってくれる食事はどれも美味しくて、とてもじゃないが残すなんて考えられないほどの美味しさでいつも平らげてしまえるほどだ。
合掌して、ごちそうさまを皆で言ってから各々がしたいことをする。
19時過ぎにお父さんが帰宅して、お父さんの隣に座ろうと私と華奈で言い争いになる。
結局、華奈がお父さんの隣のダイニングチェアに腰を下ろし、私がお父さんの向かいに座ることになった。
お母さんがキッチンでお父さんの夕飯を温め直したりしている間にお母さんに話したことをお父さんに話した。
柔らかい笑みを浮かべながら相槌をうって聞いてくれるお父さん。
「──早く夕飯を食べ終えるからそれまで待っててくれないか?」
「うんっ!良いよ」
「何かあるの?萌、パパ」
私とお父さんの会話に口を挟んできた華奈に隠すことなく、出掛けることを話した。
頬を膨らまし、不満そうにぶつぶつ呟く華奈をお父さんが宥めて、次の休みに出掛けることを約束した。
私は、夕飯を摂り終えたお父さんが運転してくれる車に揺られながら、以前から気になっていたことを聞いてみた。
「お父さん。何でお母さんはいつもお父さんのことをくん付けで呼んでるの?」
何度かお母さんに訊ねたことがあるけれど、毎回はぐらかされて知らないままだった。
「聞きたいのはそのことかぁ~。何でかは知らないけど、初対面のときからそう呼んでたよ。昔は苗字にくん付けだったよ、春香ってば。結婚してからも苗字にくん付けだったくらいだよ、僕の方が年下なのに」
「そうなんだぁ~!でもお父さんは呼び捨てだよね?」
「春香が呼び捨てにしてほしいなんて言うんだよ、出逢って間もないときから。そのときは驚いたよ、僕らの馴れ初めを聞きたいかい?」
「うん。気になってた」
「春香との出逢いはね──」
懐かしむ声音でお父さんが馴れ初めを話してくれた。
お父さんに幼馴染がいたことが初耳で驚かずにはいられなかった。それにお母さんが酷いいじめにあったことも知ることになった。お母さんがお父さんにぐいぐいと迫っていたというのも驚きだった。いつもおっとりとした感じのお母さんだから。
本屋に到着して、店頭に並んでいた買いたい商品を手にするとお父さんが買って上げるよと言ってくれ、甘えることにした。
帰りの車内で、お父さんは華奈から聞かれたら教えればいいけど、聞かれなければ話さないようにと言った。
心に響く優しい音色 闇野ゆかい @kouyann
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