第4話
ウィンドウショッピングが凄く好き。
お洒落で可愛いお洋服をたくさん見るの。たくさん試着するの。お洋服を着る度に、身体が細くてブカブカになる。着られない服はないし、むしろ服に着られている感が、幸せ。店員さんの「似合いますね。」は、営業トークだってわかるけれども、「細い。」「スタイルが良い。」は、本心だと思うし、誰からもそう見られて、そう思われたいから食べないし、食べても吐いてる。
太っていている時は、お店の前を通るのすら嫌だった。綺麗でお洒落なお洋服や、店員さん。羨ましかった。ちょっと痩せてお店に行っても店員さんに声を掛けられる事はなかった。でも、ここまで痩せてからは、あの憧れていた、細くてお洒落な店員さんに声を掛けてもらえるし、むしろ私の方が細くてスタイルが良い。この誰にも見えないし見せない私にしか感じられない自己承認欲求だけじゃなくて、背徳感と優越感が満たされるどころか溢れ出していくような感覚……すっごくたまらなく気持ちいい。
試着して着られない服がない。私、可愛い。似合ってる。って自己満足してる時が本当にしあわせ。
ウィンドウショッピングなら有酸素運動にもなるからダイエットにもなるし、心も満たされて一石二鳥でしょ?
痩せて一番驚いた事は、お腹のお肉が無くなると、自分の足が見える事。寒いと感じる事(中には食べてないから栄養不足で寒いんじゃない?と言ってくる人もいるけど)。
なにより、ただ細いだけじゃなくて、身体の中に食べ物がないと身体が軽い、という事。夜お風呂で吐いてると、一日の嫌な事や自分の中の悪い物が全て吐き出されてリセットされてる感じがするの。もちろん下からの排泄もスッキリして気持ちいい。食べない分、吐いてる分、下からの排泄量はかなり減ったけれども。
好きなモデルさんや女性アイドルよSNSを見るのも本当に大好き。綺麗で可愛い人は、キラキラしてるから憧れるし、逆にそんな憧れている人達の太ったり劣化してく姿を見れば、「こうなりたくないな」って、細くなる為のモチベーションが高まる。あと、「憧れていた人より私の方が、細くて若い」って自信にもなってる。この考え方は流石に「私って、本当に性格悪いな」って、思う。でも、口に出さなければ誰にもバレない。痩せる努力をして、痩せている努力をしているから、これくらい許してよって思う。
「最近食べ過ぎちゃって体重四十キロになっちゃった。」って言うのも好き。すっごい嫌味で性格悪いでしょ?だって、四十キロが太ってるわけない。むしろ女の子なら誰もが憧れた事はある体重なんじゃないかなって思う。ただ言ってみたかったの。決して太ってなくて細いのに「ちょっと太っちゃったかも。」って発言。私が太っていた時にいつも細くて可愛い女の子達が言ってたから。
あと、「もう痩せないで。」って言われるのも大好き。
ーーーーーー
よく人は「笑顔が一番可愛い」って言うけれども、私は「泣いている顔」が、可愛い人こそ“本当に可愛い”と、思う。本当に泣くと表情は崩れるし、目は腫れるし、声とかも変に出なくなるでしょ?それでも可愛いって究極だな、と思う。
だから、私は吐いている時、本当に満たされてしあわせ。身体に悪い物を入れないように、悪い物や嫌な事が全部出ていく感じ。また太らなくて済む安心感。あわよくば、痩せられる幸せ。
それにね、吐いた後、洗面台の鏡を見るの。すると細くて裸の涙ぐんでる私が映る。それを見ると自然と笑顔が溢れるの。
“ずーっと憧れてた細くて泣いても可愛い私がいるね”って。
歪んでいるし、間違っているのかもしれない。
でも、その時の笑顔一番可愛くて一番好き。
ーーーFinーーー
摂食障害の美学 あやえる @ayael
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