第507話 ダブル姉妹にデレデレ
「あの、これは今から“3P”をする、ということでしょうか」
「「さんぴー?」」
現在、就寝時間にアウロさんの部屋に呼ばれた僕は、そこの部屋にアテラさんも居ることで、これからここで何が起こるのか期待してしまっていた。
少し前まで、僕はこの城の闘技場で<無情の騎士>アギレスと対戦していたが、その後は国王直々にぜひ泊まっていってほしいと言われたので、僕はお泊りすることになった。
ちなみにあのアギレスさん......いや、黄金騎士はアギレスさんが遠隔操作していた人形のような物だ。
近くにそれらしき人は居なかったけど、もしかして観客に混じっていたのかな? どっちにしろ、もっと早く人形であると教えてほしかった。
で、僕は先程までセバスチャンに案内された部屋で寛いでいたんだけど、その後しばらくして、セバスチャンに呼び出され、ここにやってきた。
そんな彼は僕をこの部屋に残してどこかへ行ってしまった。
なので仕方なく、僕は向かい側に座る王族姉妹と一緒に、高級なソファーに座って、高級な茶を飲むことになっていた。
僕は3Pが何なのかを王族相手に話してもいいのか熟考し、オブラートをぐるんぐるんに巻いて説明することにする。
「三人で仲良く夜を過ごす、という意味ですかね」
「へぇ。それはスズキ様の故郷の方言のようなものでしょうか?」
「そんなとこです」
「さんぴー、さんぴー......そう言われるとそうですわね。今宵は“さんぴー”になりますわ」
うお、合意の下かよ。いや、絶対意味を理解してないで言ってるもんな......。
すると、アウロさんがくすくすと笑いながら言う。
「では、もしヘヴァイスも一緒なら“よんぴー”になりますね」
やめろ、近親相姦になる。
僕はこの話題を早々に止めさせ、二人に聞く。
「それで、僕はなぜ呼ばれたんでしょうか」
「スズキ様がお泊りになるということですので、せっかくですから一緒に過ごさせていただけたらな、と。しかし......」
と言いつつ、アウロさんはアテラさんを見やる。
その視線に気づき、アテラさんが少し赤面しながら声を上げた。
「す、スズキさんは変態ですから! アウロお姉様を守るためにも見張り役が必要ですわ!」
「とのことで......申し訳ありません」
などと、なぜかアウロさんが謝るということに。
僕はアテラさんが居ようと居まいとどっちでもいいけどね。目の保養的には居てほしいけど。
ちなみに王族姉妹二人は寝間着姿だ。露出は極力控えている様相だが、アテラさんのツインテールを解いた髪型など、窓を開けて「んぎゃわいい!!」と叫びたいほど可憐である。
僕はふと思ったことをアウロさんに聞くことにした。
「僕は一晩くらい寝なくても大丈夫ですけど......二人が夜更かしするのは駄目なのでは?」
「そ、それはそうですけれど......」
「私は明日も部屋に引きこもる予定なので、別に問題はありません」
言い切った。ついに言い切ったぞ、第一王女。
僕と第三王女はそんな誇らしげに胸を張るアウロさんを見て、こいつマジかって顔つきになっていた。
「あの、今日は外に出てましたし、もう大丈夫なのでは? 普通に陛下たちと食事してたじゃないですか」
「い、いえ、まだ一人で出歩く勇気はありません!」
「あ、アウロお姉様......」
かつて憧れていた存在に堂々と引きこもり宣言をされて、アテラさんは絶望を禁じ得ない様子であった。
僕としては今日解決すれば、大金が手に入って帰れるんだけどな。
あ、いや、国王さんとの約束もあるから、できればまだ城には通いたいな。なんせ色々と聞ける機会を僕に用意してくれるんだし。まぁ、そのときはぜひ魔族姉妹も連れてこよう。
ちなみにアテラさんは僕に寄生している魔族姉妹の存在を知っているが、アウロさんは知らない。これは事前に魔族姉妹に相談していたことだが、アウロさんにも教えていいとのこと。
理由は簡単、アテラさんだけじゃなくて、他にも信用できそうな王族に自分たちの存在を認知してもらいたいからだ。
その点で言えば、アウロさんは僕に命を救われた身だ。きっと裏切らないはずである。たぶん。
まぁ、それは今度伝えよう。
「じゃあ、僕はまた城に来ますね。アテラさんの依頼はまだ終わってないということですし」
「依頼しておいてあれですけれど、スズキさんはやる気がありますの? 私にはそうは見えませんわ......」
「アテラの......依頼?」
アウロさんがなんのことかを僕に聞いてきたので、軽く説明することにした。
その説明を聞いたアウロさんがアテラさんをジト目で睨む。
「なんて勝手なことを......」
「ふふ。ですがアウロお姉様はそのおかげで、こうしてスズキさんと過ごせるのでしてよ」
「う......」
それから僕は二人と今後のことについて色々と話し合った。
基本的に毎朝、僕はセバスチャンの迎えの馬車に乗って城に来てほしいみたい。アーレスさんちの転移魔法陣はあくまで緊急用だから多用しないで、とのこと。
どうやらアテラさんは以前、アーレスさんちに忍び込んだ自分を棚に上げているみたいだ。
また別にアーレスさんちの転移魔法陣を利用しなくても、僕にはティアが居るから大体どこでも転移できるけど、それはそれで「いつでもどこでも転移できる人」と思われたら危険視されそうなので止めた。
それから暫くして、夜更け過ぎに僕がお手洗いで席を立って戻ってくると、二人は互いに頭を預けて寄り添って寝ていたので、起こさないように二人をベッドの上に寝かせることにした。
そう、モズクちゃんを駆使して。
モズクちゃんなら無音で優しく人を運べるからね。呑み込むこともできるけど。
「......。」
僕はベッドに寝かした二人を目の当たりにして、据え膳について考え込んだ。
でもここで襲ったら100%アウトだ。僕は性犯罪者になりたくない。紳士でいたいんだ。
ということで、僕は静かに退散した。
大人しく僕が借りている部屋へ戻ろうとしたら、道中の廊下で白衣を纏った少年と出会った。
巡回している騎士じゃない。見るからに子供だ。それが酷く印象的で、また相手も僕を待ち伏せている雰囲気だったので、僕も立ち止まった。
「こんばんは。僕に何か?」
「こんばんは〜。ちょっと挨拶にねー。ボクチンはさっきチミと戦った者だよ」
「?!」
こ、こいつがアギレスか?! <無情の騎士>?! が、ガキじゃん......。
「チミ、今、ボクチンのことガキって思ったでしょ」
「は、はい」
「素直〜」
「あの、やっぱりあの黄金の騎士はあなたが遠くから操作していたんですか?」
「敬語はいいよ〜。ボクチンは見た目通り年下だから。あ、でも“博士”って呼んで」
「は、はぁ」
「それと答えはイエスだ。ボクチンがあれを操作していたのさ〜。いやぁ、完敗だ。闇の<大魔将>との連携は最高だったよー」
ま、マジで<無情の騎士>なのか、こんな小さな子が......。いや、小さいと言ってもルホスちゃんやウズメちゃんと同じくらいだな。
にしても白衣って......。髪はめっちゃぼさくさだし。ここ、国のお偉いさんばっか居る王城だぞ。
「先の戦闘といい、その反応から察するに、タフティスやアーレスからボクチンのことは聞いてないんだねー」
「え? ああ、まぁ、うん。それで? 本当にただ僕に挨拶するために待ってたの?」
「ふッ。まさか」
そう言って、博士ことアギレスは僕の方へ歩み寄ってきた。ゆっくりと、白衣のポケットの中に手を入れたまま。
僕は警戒する。さすがにここで戦うことになるとは思わないけど、相手の目的がわからない。
モズクちゃんも警戒して、赤い一つ目を僕の足元の影の中から出現させている。
そして博士は僕の五歩ほど前の所で立ち止まり、両手をポケットから取り出し、それを万歳するかたちで広げ――勢いよく土下座した。
..................え゛。
思わず心の中で間の抜けた声が漏れる。
彼は必死な声で訴えてきた。
「ボクチンの黄金騎士を返ちてぇ!!」
なんて綺麗な土下座なんだろう。
僕はモズクちゃんにお願いし、破壊した黄金騎士をペッてしてもらうのであった。
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