第313話 ロリを武器にする情緒
「き、昨日の今日でそれって......。お姉さん、スー君がちょっと心配だわ......」
「......。」
現在、<三想古代武具>の物色を終えて部屋に戻ってきた僕は、部屋の中で寛いでいたレベッカさんに自身の姿を見られて、呆れられていた。
それもそのはず、なんせ今の僕は顔面に死ぬまで外れない仮面、首には錆びついた首輪、両足にはそれぞれイチモツ二本分の棒が垂直にくっ付いていたのだから。
通報もんだろ、この容姿。
未だかつて無いくらい意味不明な格好してるよ。
「取れないんです......全部......」
「み、見たらわかるわよ。なんであそこまで言ったのに、数を倍にして帰ってくるのかしら......」
いや、首輪も足にくっ付いている棒も不可抗力だからね。前者はミーシャさんとサースヴァティーさんによって取り付けられたし、後者は魔族姉妹が遊んでたら、いつの間にかくっ付いていた。
僕の身体なのに、気分は完全にご家庭の冷蔵庫だよ。皆して好き勝手にマグネットを貼っつけちゃってさ。なんなん。
レベッカさんが苦笑しながら言う。
「えっと......お遊びするお友だちは選んだ方が良いわよ?」
「......僕もそう思います」
『さて、どうやって取るか......』
『首輪はともかく、両足のこれは邪魔ですよね』
一応、事の経緯をレベッカさんに一通り話し終えた後、僕は両足にくっ付いた棒を取り外すことに専念した。
これ、垂直に立っているから所々ぶつかるんだよね。廊下とか人とすれ違うときにマジで邪魔。
「ぐぬぬぬ! 全然取れないぃ!」
『足を切断して、跡形もなく消し炭にした後に、切断面から再生するようにすっか?』
「やめてちょうだい。部屋が汚れちゃうわ」
『そうですよ、<三想古代武具>が壊れたらどうするんですか』
誰一人として、僕の身体を労ってくれないんだが。
全く取れそうになくて参った僕は、ベッドに寝そべった。
「はぁはぁ......疲れました。きょ、今日はもう寝ます」
「そ、そう。早く状況が良くなるといいわね」
『案外、仮面と同様で、いっかい死んだら取れるかもな』
『ですかね? まぁ、明日試しましょう』
*****
「んあ?」
目を覚ました僕は、身体がやけに重たく感じてしまい、寝苦しいことに気づく。仰向けに寝ている僕の上に誰か乗っかっている感じだ。
「るほ、す......ちゃん? と、うずめ......ちゃん?」
あんまり僕の上に乗っかってくることはないロリっ子どもだが、今晩はそうじゃないらしい。
僕は二人をそっと退かそうと思って、起き上がろうとした。
そして気づく。
「あれ?」
そもそもるルホスちゃんとウズメちゃん、今居なくない?
あれ、じゃあ僕の上に乗っているのって......。
そう思って二人を見ると、
「っ?!」
見知らぬ少女が二人、僕の上に乗っかって心地よさそうに寝ていた。
全裸で。
色々とヤバいと思った僕は、ベッドの隅に寄せられていた掛け布団を手にとって、少女らごと上から被せる。
僕のそんな急な行動に、魔族姉妹たちが起きた。
『なえ、どこ......さん?』
『んだぁ、あさかぁ』
寝惚けた様子の二人に、僕は言った。
「の、乗ってる!! 乗ってるんだ!」
『『?』』
「ぼ、ぼぼ僕の上にッ!」
『ムカデか?』
『ネズミじゃないですか?』
どっちも違う!!
焦る僕は冷静に居られず、つい声を張り上げてしまった。その声に起きてしまったのは、魔族姉妹だけじゃない。
見知らぬ全裸の少女たちだ。
掛け布団の中からもぞもぞと動いて、僕の顔の方へ近づいてくる。
そして布団の中からひょっこりと顔を出した。
一人は艶を感じさせる褐色肌で白髪の少女。もう一人は病的なまでに真っ白な肌で黒髪の少女。どっちも幼いながらも整った顔立ちだ。それに姉妹のように似ている。違うのは肌や髪の色という点くらい。
年齢はルホスちゃんやウズメちゃんと同じか、それより年下くらいだろうか。
二人とも、翡翠色の瞳をしていて、透き通った美しさを宿していた。
そんな少女たちが僕を見つめながら口を開く。
「「おはようございます、マスター」」
******
『なんじゃこりゃあぁあぁあ!!』
僕も言いたかったが、妹者さんが取り乱したせいか、なんか却って冷静になれた僕は、素っ裸の少女たちに言う。
「ふ、服を着て。誰か知らないけどさ」
「どういった服を着れば、よろしいでしょうか」
「マスターが喜ぶような扇状的な衣装がいいでしょう」
「着物! そう、着物に着替えて!」
なぜ着物と言ってしまったのだろうか。僕の中で一番露出が少なくて、且つ清楚なイメージがあるのが着物というイメージなのは否定できない。
が、そもそもこの世界に着物があるとは限らない。だから僕は少女たちに何を口走ってんのか、と自責の念に駆られた。
それなのに、
「オーダーが入りました」
「“着物”に着替えます」
「え゛」
少女たちの身体に何か影のようなもの纏わりついて、衣服のようなものを形成していく。そんな状態も束の間。少女たちはいつの間にか着物を着ていた。
どっちも自身の肌の色から派生したように、白と黒を貴重とした着物を着ている。ま、魔法で服を作ったの?
その様を見て、魔族姉妹が唖然とした様子で声を漏らした。
『おいおい。この世界に着物って衣装あったか?』
『さ、さぁ? 少なくとも私は知りませんね』
「む。この“着物”という衣服、動きづらいです」
「マスター、これは機動性が著しく阻害される衣装です」
え、着物知らないの? 知らないのに魔法かなんかで作ったの?
駄目だ、全くわからない。
しかしそんな僕の戸惑いは、同所にていつの間にか起きていたレベッカさんの言葉で薄れる。
「スー君。もしかしたらその子たち、スー君の足にくっ付いていた棒じゃないかしら?」
「あ」
そう言われれば、僕の両足にあった棒が無い。
というか、レベッカさん、起きたのか。よく平然としていられるな。
たしか以前、ルホスちゃんが所持していた【
ということは......。
「も、もしかして君たち、“
「「その認識で間違いありません」」
『来ましたぁ! レア装備来ましたよぉぉお!!』
『姉者、頼むから黙ってくれ』
まーじか。
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