第300話 美女と一晩? 

 『お? ガキンチョども留守じゃねぇーか』


 『夜遊びとは関心しませんね』


 現在、傭兵の仕事からビーチック国の中央都市に戻ってきた僕は、成功報酬である金銭を受け取って宿に戻ってきたのだが、中に入ってロリっ子どもが居ないことに首を傾げてしまった。


 ちょうど夕食時だし、外食に出かけたのかな。


 でも今日帰ってくると二人には予定を伝えていたはずなんだけど。


 「あら、じゃあ一緒に食事を取れないわね」


 ちなみにレベッカさんも一緒である。


 この人、最近一緒に仕事し始めてから、プライベートまで一緒にすることが多くなった。基本ソロで仕事するって聞いたんだけど、なんで僕なんかの側に居たがるんだろ。


 僕は自炊用に買ってきた食材をテーブルの上に置いた。


 今借りている宿はちょっと良い所で、セキュリティ面も安心できる宿だ。なんせ今の僕は稼げているからね。良い暮らししたっていいじゃん。自炊はするけど。


 ちゃんとした宿に住んでいるからか、最近はレベッカさんも夕食をうちで取った後、そのまま泊まっていくし。


 ちなみにここのベッドはセミダブルサイズで、それが二つある部屋だ。


 僕は基本ウズメちゃんと添い寝してて、ルホスちゃんも途中から入ってくるから、セミダブルサイズが最低限の寝心地を保証してくれるのである。......ロリどもと寝てるの、なんか犯罪っぽく聞こえてくるな。


 で、必然と空いているベッドにレベッカさんが寝るわけだ。美女が手の届く位置で寝ているのに、ロリっ子どもが居るせいでハプニングの“ハ”の字すら起きないよ......。


 言うまでもなく、僕が童貞だから尻込みしているわけじゃない。ないったらないのだ。


 「今日の晩ご飯は何がいいですか?」


 「え、私が選んでいいのかしら?」


 いつもはロリっ子どもが居るからレベッカさんに何を食べたいかなんて聞いたこと無いが、まさか驚かれるなんて。


 「僕に作れるものであれば」


 「嬉しい。そうねぇ、あのヤキソバがまた食べたいわ」


 『よくソースとか作れるようになったよな』


 『あの適当に野菜や調味料をぶち込んだ鍋に奇跡が起こりましたからね』


 アレは凄かった。中濃ソースっぽいのできたのはさすがの僕でもガッツポーズをしてしまった次第である。おかげで料理の幅が広がって、ロリっ子どものみならず、レベッカさんにも好評になってしまった。


 ちなみに麺はパスタである。再現だって限界くらいあるよ。


 まぁ、何を作るにしても、レベッカさんが居ては魔族姉妹が食事をできないので、彼女にはお風呂にでも行ってもらおう。ここの宿、共有だけど大浴場があるし。


 「わかりました。作ってるので、その間に湯浴みでもしてきてください」


 「あらあら。立派な紳士になっちゃって」


 「ふふ、今から僕の中濃ソースをかける行為に走ってもいいんですよ」


 『殺すぞ』


 『焼きそばに謝ってください』


 焼きそばに謝るってなに。


 やれやれ、ジョークに決まってるじゃないか。童貞ジョークだよ、童貞ジョーク。


 そんなことを思う僕は、いつの間にか近づいてきていたレベッカさんに顎をクイッと持ち上げられたことに驚愕する。


 「それは素敵な提案ね♡ お子様たちも居ないことだし、お姉さんとハッスルしちゃう?」


 嘘です、童貞ジョークなんて嘘です。ガチです。


 レベッカさんが舌なめずりしながら僕の瞳を覗き込んできたので、僕は思わず焦って返答してしまった。


 「ぜ、ぜひ!」


 『ダメに決まってんだろッ!!』


 『はぁ。晩ご飯はいつになったら食べられるのでしょうか』


 レベッカさんが僕を食べてくれるんだよ!!


 などと、僕が胸中で答えになってない回答を叫んでいると、


 「えい♡」


 いつの間にか身体中に縄が巻きつけられていた。んでもって、ベッドの上に身を投じられてしまった。そして両手両足を後ろで固く縛られていることに気づく。


 「え゛」


 思わず自身の口から間の抜けた声が漏れる。


 レベッカさんは普段自分が使っているベッドの下から娯楽用の鞭と赤いロウソクを取り出して、僕に微笑みかけてきた。


 人の部屋になんちゅうもん持ってきてんだ、この人。


 「あ、あの、レベッカさん?」


 「今夜は“女王様”と呼んで♡」 


 「いや、僕にはまだその趣味は早いというか、開きたくない扉があるというか......」


 「大丈夫。すっごい気持ち良いから。“ちゅーのーそーす”がどばどば出るくらい絶頂すると思うから」


 どこが大丈夫なのだろうか。そんな壊れた蛇口みたいな身体にされるのは御免だ。


 が、レベッカさんは僕の話を聞かずに、火属性魔法でロウソクの先端に火を着け始めている。


 そんなことにファンタジーを使うんじゃないよ......。


 「スー君、良い声で鳴いてね――」


 と、彼女が言い掛けたところだ。


 「ただいまー」


 「ただいま戻りました」


 ロリっ子どもが帰ってきてくれた。彼女らの手には何やらどこかで買い物でもしてきたかのような荷物がある。


 数日ぶりに見せ合う互いの顔は驚愕の色に染まっていた。


 「なにおっ始めようとしてんだ?!」


 「あわわわ!」


 「二人とも助けてぇ!! このおっかないお姉さんに壊される!!」


 「おほほ、酷い言われ様ね。合意の上じゃない」


 『めーしー! 腹減ったぁぁぁ!』


 『飯を与えない。これもある種のSMプレイですかね?』


 んなわけないがな。とまぁ、そんなこんなで僕の私生活は騒がしかった。

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