第六章 闇奴隷商を襲撃しませんか?
第178話 裏の裏は表?
「闇組織の拠点を奇襲?!」
皇女さんのそんな驚きの声が部屋中に響き渡った。
昨晩、クリファさんの別荘にやってきた僕らは翌朝を迎え、さっそくシバさんから事情を聞いていた。
本当は昨日のうちに、すぐにでも話を聞きたかったのだけれど、皆疲れてたし、シバさんも翌朝に話しても事態は変わらないと言ってたので今に至る。
この場には僕ら三人の他に、この地の領主クリファさんとその娘であるロティアさん、エルフっ子が居る。エルフっ子は部屋の隅に立っているけど、話だけは聞く感じみたい。
朝食後の会議なのだが、なんともまぁ穏やかじゃない話なのは間違いない。
で、シバさんから聞かされた内容では、皇女さんの言ったとおり、帝国が闇組織の拠点を奇襲するという、理解が追いつかない話であった。
「ん。王国に宣戦布告する直前に仕掛けるつもり」
肝心の説明役は結論ばかり話してて、中々理由を語ってくれない。
が、この場にはその手の話に関して最も知識が長けている人物がおり、その人物とやらはクリファさんで、彼が冷静に質問し始めた。
「シバ殿、まず聞きたいのは、貴殿のその口ぶりからして、陛下は闇組織と手を組んでいるわけではないのか?」
「違う......とは言い切れない」
「“言い切れない”......とは?」
「陛下は以前から闇組織が自国で暗躍していることに気づいている。でも見過ごしていた」
「......なるほど」
クリファさんは重たい声音でそう相槌を打った。
闇組織、特に<
にも関わらず、それを皇帝さんが対処しなかったとなると、他国から見て協力関係にあると言われても文句は言えない。
連中の暗躍を看過することは、即ち同罪と変わりないのだから。
「でもそれもあと少しで終わり。宣戦布告前に、私たち<
「え、あの皇族直属の精鋭騎士である<
すると今度はロティアさんが話に割って入ってきた。
驚いたのは彼女だけじゃない。この場に居るシバさん以外の全員が耳を疑った顔つきになる。
僕が以前、皇女さんから聞かされた話では、<
そんな人たちが奇襲を仕掛けるなんて......。
ロティアさんの言葉に頷いたシバさんは、立てた人差し指を自身の唇の前に持っていった。
「言い忘れてたけど、この話は陛下と<
「「「「「......。」」」」」
僕ら五人は、今言うなよ、という視線を彼に向けた。
おそらくシバさんはこの場に使用人らが居ないから普通に話し始めたんだと思う。
エルフっ子という<
だからシバさんは、この場に居る者なら信頼できると踏んだんだ。
「まず標的となる闇組織は二つ。<
「前者は帝国、王国が所有する財宝目当てでしょ。後者は知らないわ」
シバさんの問いに答えたのは皇女さんで、その内容に反対意見の者は居なかった。
また後者の目的は不明というのも共通認識らしく、クリファさん等から声が上がることはなかった。
これに関して、僕があの牧師野郎から聞いた話を鵜呑みにするのであれば、今回の件は<
「そ。後者に限っては未だに不明。でも前者は少なくともこの両国の財を狙っている。そして奴らが動き出す目安は戦争時」
シバさんの言葉を受けて、僕らは思わず、ごくりとダマのある唾を飲み込んだ。彼の言葉を聞いて、空気が張り詰めたような気がした。
王国と帝国の戦争時を闇組織は狙っている。当たり前だ。真っ向から両国の財を奪う戦力が無いのだから、互いに削り合ってもらって少しでも両国の戦力を落とさせたいはず。
だから『数日後に王国に宣戦布告する』と城内で決定したことは、闇組織に筒抜けであったわけで、連中は戦力が落ちた帝国や王国を襲撃する準備を始めるだろう。
「し、しかし、なぜ陛下はわざわざ数日後に宣戦布告をするという、王国と闇組織が戦争の準備をする期間を与えたのでしょうか?」
そんなロティアさんの問いに答えたのは彼女の父親である。
「逆だ、ロティア。準備をさせるために宣戦布告を数日後にされるのだ」
「それはどういう......」
娘の疑問に、クリファさんは淡々と続けて答えた。
「このタイミングで宣戦布告をすれば、両国は戦争のために動く。狙いは王国というより闇組織。そして......<
「?」
父の言葉に、未だにロティアさんは理解が追いついてないと言った様子だ。
僕はクリファさんの言葉でやっとわかった。
なんせこれまでに幾度となく、人造魔族と戦ってきたのだから。
「奪う気なんですね? <
「っ?!」
僕の言葉に驚いたのはロティアさんだけで、他の人は否定することなく黙り込んだ。
シバさんが話を進めようと口を開いた。
「ナエドコの言う通り。私たち<
「「「「「......。」」」」」
皇帝さん、思い切ったことするなぁ......。
どれくらいの規模かはわからないが、<
その襲撃のために、皇帝さんは影で<
なるほど、だからフォールナム領で闇組織の襲撃があった後、皇女さんが城に戻らなかった理由を察したのか。既に城内に闇組織の息がかかった者を警戒している故の看過らしい。
で、フォールナム領の近くに、ここマーギンス領があることから、皇女さんが身を潜めるならこの領地だと確信して、シバさんをこの地に向かわせたんだ。
そして<4th>の襲撃を王国の仕業という家臣の意見に乗じ、宣戦布告に至ったわけと。
しばしの間、場が静まり返っている中、口を開いたのはまたもシバさんだ。
「で、その襲撃作戦において、絶対に欠かせなくなった人物が居る」
彼のその言葉に、僕らは揃って疑問符を頭上に浮かべた。
シバさんはじっと僕を見つめてきて、人差し指をこちらに向けてきた。
「ナエドコ」
「え゛」
間の抜けた声を出したのは僕であった。
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