第166話 エぇルフッ!!
「エルフッ!!!」
「ひッ?!」
エルフ来たあぁぁあああ!
異世界来て初めて遭遇したよ! 王都じゃ見なかったから、いつか会いたいと思っていたんだ!
「本当にエルフは存在してたんだ!」
『興奮しすぎだ、バカ』
『無理もありませんよ、この異世界ラノベバカは』
バカバカうるさいな。
ああ、しかしなるほど、うん、エルフってやっぱ想像に違わず美形だな。見た目はルホスちゃんと同じくらいのロリだけど、ちゃんと整っている顔立ちだ。
が、エルフは見た目よりも年を取っている可能性がある。
なんたってエルフだからね!
「あ......う......ぁ」
そんなことを考えている僕を前に、未だに抱きかかえられているエルフっ子は、僕を見上げながら口を魚のようにパクパクと開けたり閉じたりしている。
それにどこか顔色が悪い。上手くキャッチできたと思ったけど、どこかぶつけちゃったかな?
どうしたんだろ。
『おい、怖がってんじゃねぇーか』
『あなた、その顔は事案ですよ』
魔族姉妹が僕に向かってそんなことを言ってきた。
なるほど、僕はそこまでヤバい顔していたのか。自覚は無いけど、二人が言うんだからきっとそうなんだろう。
「くくッ。すごい顔するね。血走った目に、その鼻息の荒さ......ひょっとして少年は小児性愛者かい?」
どうやら牧師野郎も僕の様子を魔族姉妹と同じように受け取っているらしい。
決して小児性愛者ではないのだが、とりあえずこの子がなんで上から降ってきたかを問い質したいな。
......いや、聞くまでもないか。牧師野郎は転移魔法陣を展開していた。
つまりそれによってこの子をこの場に転移させたのだ。
それもなぜか空中で。
そして話題に上がった者をこの場に呼んだということは......
「この子が、他者の【固有錬成】を付与する【固有錬成】を持つ者ですか?」
僕のその声はエルフっ子を責めるつもりは無かったのだが、彼女は唇をきゅっと噛み締めて辛そうな顔をした。
初対面の僕をどういう人と受け取っているのかわからないけど、少なからず、彼女は良くは思っていないみたい。その証拠に、僕の腕の中で震えている。
僕は彼女をそっと下ろしてから、牧師野郎に向き直った。
「ああ、そうだよ」
「こんな小さな子が......」
「【固有錬成】に年齢は関係無いさ。......で、どうだろう? 個人的には<4th>に預けておくより、少年の方が有意義だと思うのだが」
「そ、そう言われても......」
牧師野郎の話を鵜呑みするのであれば、正直、そんなヤバい【固有錬成】持ちをこのまま闇組織に居させては困るので、その生殺与奪の権利を僕にくれるというのであれば、僕は“確実性”という面を考慮して殺すだろう。
だってその方が安全だから。
牧師野郎の気が変わって、その【固有錬成】持ちが再び闇組織の下へ戻るのであれば、殺した方が安全なのは言うまでもない。
でも......
「なに、少年が黙ってソレを利用すればいい話さ」
「僕が? この子を利用ですか?」
「ああ。なんたって君は取り込んだ核から他者の【固有錬成】を使えるのだから」
「っ?!」
マジか。それも知られてるのか。そりゃあ今までずっと僕を盗聴してたのなら知ってるか......。
だから牧師野郎は複数の【固有錬成】を使える僕に、他者の【固有錬成】を付与することができる【固有錬成】持ちのこのエルフっ子を同伴させたいんだ。
そう考えると、このエルフっ子はある意味僕と似たような体質をしているのかもしれない。
どうしたものかと考えていた僕に、魔族姉妹が声を上げた。
『いんじゃね? あの転移の【固有錬成】も鈴木に付与できるってことだろ?』
『いえ、問題はそこではありません』
そう、問題はそこじゃない。
エルフ愛――じゃなくて、今後のためを思えば、エルフっ子を殺せば、少なからず闇組織の戦力を削ることができる。厄介な【固有錬成】持ちだからね。
それをみすみすと許してくれるとは思わないが、牧師野郎は僕がそれをできないと察しているようだ。
なにより、まず僕がこんな美少女を殺すことに躊躇っている。
僕のその懸念を同じく考えていた姉者さんが言った後、彼女は続けて言った。
『そしてこのエルフの少女を私たちが引き取り、彼女に“付与”の【固有錬成】を利用したとしましょう。仮に私たちが有する複数の【固有錬成】を彼女が複製できたとして、そんな彼女を奴らは野放しにしておくでしょうか?』
それだよ。僕をここに転移させることができる目の前の牧師野郎が、もし複数の【固有錬成】を複製できる状態になったエルフっ子を取り戻したら、と考えるとそれが一番ヤバい。
<
だからエルフっ子を引き取れることは簡単じゃない。
無論、引き取ると言って、僕が騎士団なんかに預けても、結果として牧師野郎が手元に戻しちゃえば意味が無い。
敵の戦力を削れる絶好の機会なのに、それが悪手になりそうなんだ。
「安心したまえ。そんな都合よく返してほしいなどと言わないからさ」
「信じるわけないでしょう......」
「ならこのまま何もせずに帰るかい? あの執事の人のチョーカーも外さないよ? ちなみにだけど、一度あれを着けてしまえば、何度でも生成することができる」
「......。」
マジかよ。なら僕のブレスレットも手放そうとも、破壊しようとも、また装着させられるじゃん......。
僕がどうしたものかと思って黙り込んでいたら、痺れを切らしたのか、先方は僕の足元に多彩色の魔法陣を展開した。転移魔法の陣だ。
「『『?!』』」
「はぁ。元より少年に選択肢は無い。ソレ、頼むよ」
ソレ、とはエルフっ子のことだろう。見れば彼女の足元にも僕と同じく魔法陣が展開されていた。
「ちょ!」
「あ、そう言えば、<4th>の弱点を教えていなかったね。一言で言ってしまえば、彼の【固有錬成】が転移できるのは自分の他に一つだけだ。<
『てめッ――』
妹者さんが怒鳴ろうとするが、それよりも早く僕の視界は暗転した。
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