第165話 親方!降ってきた!
「そこでさ、ついでに少年には<
僕は目の前の牧師野郎が何を言っているのかよくわからなかった。
<
「さっきも言ったけど、帝国と王国にちょっかいをかけたのは<4th>で、うちの名前を勝手に使って他所の組織と手を組んだのも<4th>だ」
「だから潰せと?」
僕の言葉に相手はこくりと頷いて続けた。
「最近、あっちは派手に動いてくれてるみたいで困っていたんだ。ワタシの組織は密かに活動するのが売りだからね。かと言って、今更手を切ったら何を仕出かすかわからない」
「だからって僕を差し向けるなんて......」
「頼むよ。<
「そ、それ却って裏切ってることバレません?」
情報流しすぎると疑われるのあんたでしょうに......。
「大丈夫。うちの幹部を殺して賞金首かかっている少年なら、ワタシとの接点は疑われないはずだ。それに<
うーん。にしても、僕にメリット少ないなぁ。
貰った情報を全てアーレスさんに渡しちゃえば、<
『ナエドコさん、引き返しましょう。付き合う必要は――』
「あ、ならこういうのはどうだろう。少年が欲しい情報を渡す、もしくはこちらが探すというのは」
『『っ?!』』
牧師野郎の言葉に魔族姉妹がビクッと身を震わせた。二人が何を動揺したのか察せなくはない。
魔族姉妹が地球人の僕に寄生してまで、この世界に戻った目的のためだ。
その情報集めを、他者の力を借りれるかもしれないという考えが二人の頭に過ぎったのだろう。
「どうだろう? 破格な提案だと思うのは自賛が過ぎるかな」
「それはその......」
『『......。』』
正直、この世界に来て全くその辺のことは進歩していない。ずっと僕のレベル上げみたいな生活送ってきたからな。
魔族姉妹が焦っている様子もないし、僕も気ままに過ごしていた。
が、この提案はひょっとしたら、またとない機会なのかもしれない。なんたって相手は裏社会の情報屋なのだから。
僕は迷って、つい魔族姉妹の様子を窺ってしまった。
すると妹者さんがすぅと息を吸ってから吐いて口を開いた。
『なめんなよ、牛野郎。あーしらの目的はあーしらが成し遂げる』
いつもの妹者さんの声よりも低く、突き刺さるような口調はその意思や意地を示しているようだった。
それを受けて相手は「残念」と軽く返事をして、手のひらを上にした状態で前に出した。
そして次の瞬間、牧師野郎のその手のひらから赤、青、紫と三つの単色の魔法陣が浮かんだ。
あれって転移の魔法陣だっけ?
僕は自身の足元を見るが、ここへ来たときと同じような魔法陣は展開されていない。つまり僕は転移対象とされていない訳だ。
『なにしてんだ、あいつ』
「さぁ?」
『とりあえず、警戒だけは怠らずに――』
などと、悠長に突っ立っていた僕は、頭上高くから何かが落っこちてくることに気づいた。
「ひゃああぁぁああ!!」
何やら悲鳴じみた高い声が、落下物から聞こえてくる。
落下物はボロい布というか、汚らしい感じの物体だった。
「な、なにッ?!」
『と、とにかく避けろッ!』
『待ってください。アレは――』
姉者さんがこの場から離れようとする僕を止めるが、いくら怪我をしても妹者さんが瞬時に治してくれるとはいえ、無意味に怪我はしたくないので行動を止めなかった。
姉者さんの待ったを無視して、数歩下がったところで、再度、姉者さんが続きを口にする。
『――女の子です』
「ぬぉぉおおおお!!」
僕は前方へ飛び込んだ。
落下物が床に激突する前に、ほぼ条件反射の如く、全身で落下物を受け止めたのだ。
落下物の衝撃が僕の身体に一気にかかってきたが、耐えられないほどじゃない。
なんか
『ナイスキャッチです』
『お前、女なら誰でも助けようとすんの止めた方がいいぞ』
落下物を抱きかかえている僕に対して、魔族姉妹が呑気なことを言う。
だって空から女の子が降ってきたんだから仕方ないじゃないか。
親方呼ぼうかな。つい、そんなことを思ってしまう僕である。
「大丈夫ですか?」
「っ?!」
抱きかかえていた落下物を確かめると、なるほど、外套っぽい布の中には確かに人の形をした何かがいる。
お姫様抱っこするかたちで受け止めちゃったからよく分かる。体感でルホスちゃんと同年代くらいの子だろうか。小柄でとてつもなく軽い。
僕がそんなことを思いながら声を掛けると、先方はビクッと身を震わせた。
ぱさり。今まで顔を隠していた布が捲れたことで、その顔があらわになる。
「っ?!」
『お?』
『ほう、これまた珍しい』
二人は落ち着いた様子で、ボロボロの外套に身を包める子を見た。
女の子だ。白銀の髪は短く、肩ほどの長さである。触れただけで折れてしまいそうな腕や足は、少し痩せ細っている感じだ。また目の下の泣きぼくろが特徴的な子である。
そしてなによりも注目すべきは――長く尖った耳だ。
これはかの有名な――
「エルフッ!!!」
僕は感動のあまり、思わず涙を溢しそうになった。
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