閑話 [マーレ] 最近うちの子が・・・
「薬草の採取がしたい......ですか?」
「うん」
昼下がりの時間帯、最近、一緒に生活を共にすることになったルホスちゃんが、そんなことを私に聞いてきました。
本日はお仕事が休みのため、自宅で寛いでいた私は、首を傾げて彼女を見つめます。
近頃、彼女は騎士団の紹介で、王都西区にある教会に食材を提供しているらしく、その見返りにそこで食事を済ませているそうです。
やっと私の経済事情を察してくれたみたいで嬉しい限りですよ。
「それまたなぜ?」
「教会でご飯を食べてるんだけど、なんか味付けに飽きてきたから」
「ぜ、贅沢ですね」
「スズキの料理を知ったら仕方がない」
そんなにスズキさんの料理は美味しいのでしょうか?
そういえば以前、ルホスちゃんに私が作った料理を食べてもらいましたが、一口だけ口にした瞬間、彼女は我が家を飛び出していきましたね。
それほど美味しかったのでしょうか、などと自惚れるつもりはありません。
彼女が立ち去った後、食卓に残った自作料理を食べたところ、それは歴とした攻撃魔法でした。
もう即座に回復魔法を行使するくらいです。
魔力を使わずに攻撃魔法を完成させるとは、さすが私と言いたところですね......。思わず涙を流しそうになります。
「そういうことでしたら冒険者ギルドに行って、薬草関連の本を借りたらどうです?」
「我はあんなとこ行きたくない」
ああ、そういえばこの子、人間嫌いでした。彼女の過去を知れば、わからないでもないことですけど、よくそれで教会に食材を提供できますよね。関心します。
いや、私の料理がそれほどまでに彼女を追い込んだと捉えるべきでしょうか。
......ぐすん。
「といっても、ギルド職員の私でもギルドの所有物は持ち込めませんよ」
「誰が本を持ってこいと言った。我に薬草の知識を教えろと言っているんだ」
「......。」
な、なぜここまで上から目線なんでしょう......。
まぁ、今日のようにお仕事が休みの日なら付き合えますが、なぜ薬草なんでしょう?
ルホスちゃんの話から察するに、料理の味付けに薬草が関係しているのでしょうか?
疑問に思った私は彼女に聞きました。
「薬草の中には料理をする際に、香辛料として使えるものがあるとシスターから聞いた。聞けば、その香辛料というのは色々とあるらしく、王都の周りの森でも採取できるらしい」
「へぇ。そんな薬草があるんですね」
「む? ギルド職員なのに知らないのか?」
「はい。私が知っているのは料理に使えるかどうかではなく、薬草の見分け方や効能についてですので」
「......自炊しないお前に聞くことじゃなかったか」
「......。」
どうしましょ、無性にこの子に拳を打ち込みたくなりました。
たしかにその通りですけど、あなたも料理しないじゃないですか。
などと、子供相手に仕方のない声を心の中で上げる私でした。
「ふむ、どうしたものか......」
「それだったら偶に遊びに行く騎士団の――第三騎士団のところに行けば解決するのではないですか?」
私のその一言に、ルホスちゃんが小首を傾げたので、私は続けて話しました。
「騎士団の中にも薬草に関して詳しい人が居るはずですよ。王都駐在の騎士のほとんどは遠征として、よく森林地帯に赴きますので」
「なるほど」
それを聞いたルホスちゃんは、さっそく第三騎士団の屯所へ向かいました。
急いでいる感じではありませんが、できるだけ早く手に入れたいのでしょう。まったく、贅沢な子ですね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます