第28話 トラブルって聞くと世の変態は大体あっちを想像する
「ひっぐ....うぇ」
『だぁー! 泣くなよ!』
『むしろ喜んでください。あのパフォーマンスで笑顔になった人が増えたんですから』
現在、僕は路上の広間にて、例の如く四つん這いになってしょっぱい水滴を目から落としているところだ。魔族姉妹は手の甲に口を移して、そんな僕を見上げている。
ここに通行人は居ても観衆は居ない。夜も遅いからか、半べそかいている僕が居たたまれなかったのか、観客は誰一人残ること無く解散してしまったのだ。
今日稼いだ金額は日本円にして約十八万円らしい。フグオークを含まないで、だ。もう冒険者で働くことが阿保らしくなってきた。
「こんなに......こんなに稼いだのに僕の心は日々擦り減る一方だ....」
『『....。』』
「異世界に来たのに。ひっぐ。せっかく異世界に来たのに童貞童貞って馬鹿にされて....。ぼかぁもう死にたい....うぅ」
『え、えーっと、結構稼いだし、娼婦に一発ヌいてもらうか?』
『良い子良い子してあげますから。ね?』
「うるさい! 触るな! どーせ娼館行ってもフェ〇とか見抜きだけでしょ?! 僕に卒業させる気無いんでしょ?!」
『ま、まぁ、せっかくのネタだからな』
『そ、その属性は捨ててもらいたくないので....』
「もうヤだぁ。心身共に痛めつけて何が楽しいのぉ」
『『....。』』
マジで落ち込む僕に二人から慰めの言葉が続かない。
途中からジーザさんとデンブさんも観衆に混ざって爆笑してたし。デンブさんだけは唯一、童貞の僕に罵倒を浴びせるという嫌がらせに走ったので、周囲の人にめっちゃ睨まれてたな。終いには観衆の中から追い出されてた。
皆、僕の自虐披露は楽しむくせに、そういった他者からのディスりは許せないのな。なにその地味に要らない優しさ。金だけ払えば良いってもんじゃないでしょ。
「もうおうち帰る」
『お、おう。稼げたしな』
『ゆ、夕飯は私たちがご馳走しますよ』
僕が使わせてもらっている宿屋はキッチン付きだ。だから自分で好きに料理できる。
僕を労わってか、二人はご馳走を作ってくれるらしい。でも僕はそんなことでこの悲劇を許さない。一生恨んでやる。
*****
「明日もクエストを受けに行くよ」
『今日あんだけ稼いだんだぞ? 少しは休めばいいだろ?』
「気晴らしがしたいんだ。だからクエストを受けに行く。だから変な気遣いしなくていいから」
『なッ?! あたしはてめぇーのことを想って提案してやったんだぞ! なんだその言い草は!!』
宿に帰ってきて魔族姉妹たちが作ってくれた夕ご飯を食べてから、僕は吸い込まれるようにベッドの上に寝っ転がった。
『まぁまぁ。苗床さん、歯くらい磨きましょう? 私が誠心誠意磨きますから』
「ん」
『あ、姉者はコイツが駄目人間になりそうになったら、とことん甘やかすのな....』
『心が壊れたら元も子もないですよ。そうだ、マッサージもしてあげます』
「おちん〇んの?」
『する訳ねーだろ!』
「ぐすん....」
『こら! 苗床さんが泣いちゃうじゃないですか!』
『あたしがいけないのかよッ?!』
「僕右利き」
『ですって、ほら、しばらく私たちは引っ込んでましょう? 久しぶりに自家発電の時間を与えましょう』
『ヤだよッ!! あーしイカ臭くなって復活したくない!!』
「精子袋が破裂しそう....」
『妹者』
『だっーーー!! わーったよ!! ちゃんとオ〇ホ使えよ?! 手ぇ洗えよ?!』
こうして僕は実に十数日ぶりの自家発電に勤しんで、深い眠りにつくのであった。
*****
「ふぁーあ。良く寝たぁー」
『おはようございます。今日も良い天気ですね。窓を開けましょう。臭いです』
『....。』
朝になって目覚めた僕だけど、部屋に時計なんか無いから、今が何時かはわからない。一応、腕時計は地球から持ってきたけど、バッグの中に入っているのでわざわざ取り出すのも面倒だ。そもそも時間軸がズレてるから意味ないが。
換気のため、窓を開けたら日が昇ってたので、そこまで時間は経っていないと察する。お日様の位置から、今はまだ朝なのだろう。昨晩は疲れたなぁ。
ベッドの周りを見れば大量の使用済みゴムが。中身はどろりとした液がこれでもかってらい収まっている。相手は居なかったけど、溜まりに溜まった息子さんはゴム一箱じゃ済まなかったらしい。
「しばらく窓を開けとけば、このイカ臭い悪臭も消えるだろう」
『さて、朝ご飯を作りますか』
「うん。でもその前に―――」
と僕は言いかけて、窓辺に立って部屋全体を見渡した。
「なにこの散らかった状況」
『『....。』』
部屋は空き巣でもあったのかってくらい物が散乱して、家具が壊されていたのだ。
*****
「で、暴れたと」
『....ああ』
『朝食の前にお片付けが先ですね』
僕らは朝食の前に部屋の片付けに入った。
いや、昨日ハッスルしたよ? 相手が居なくて僕一人だったけどハッスルしたよ?
ゴムもそこら辺落ちてるけど、一人でそこまで暴れるバードなプレイはしてないよ?
見れば、部屋のとある場所にはちぢれ毛が大量に落ちてあった。どこの毛だろう。少し不安だ。
とりあえず、この状況は妹者さんが原因らしい。
『言っとくが、おめぇーがいけないんだからな?』
目がない口だけの右手がギロリと僕を睨んでくる。....気がする。
「え、僕?」
『ったりめーだろ! 手ぇ洗えって言ったのに、洗わなかったお前のせいだぞッ!!』
妹者さんがブチギレて僕を怒鳴りつけてくる。
そう、絶頂を十回越した辺りからオ〇ホの感覚に飽きてしまった僕は、マイハンドに移行したのだ。右手にね。オ〇ホも良いけど、やっぱりマイハンドが一番だよね。伊達に竿の先っちょは左に傾いていない。
「だからって部屋の中で暴れないでよ」
『うるせぇ!! 次、洗わなかったらちょん切るからな!!』
痛い痛い。やめてよ。
「でも右手だけしか肉体の支配権が君らに無いのに、よくここまで暴れられたね?」
『ええ。苗床さんの全身を使いましたから』
「は?」
『ですから、肉体の支配権を全て私たちに移したので暴れられたのです』
は?! 肉体の支配権って、両腕だけじゃないの?! なんで全身?!
『あーしらも日々成長してる。おめぇーが意識が無くなったり、弱まればこうして肉体を代わりに操れるようになったんだよ』
「なにそれ?! 初耳なんですけど?!」
『はは。昨晩初めて試してみました。見事成功です』
「ふざけんな! これじゃあ落ち着いて寝れないよ!」
『あたしらは寝なくても別にいい体質だからなー』
『逆に感謝してください。これで戦闘中、仮にあなたが気絶しても、私たちが代わりに戦ってあげられますから』
この有様を見ると全然感謝できないんですけど!
そこであることに気づいた僕は急いで、ズボンを下ろして確認した。
そしてちぢれ毛がある所に向かい、四つん這いになって絶望した。
「ああー!! 剃ったな?! 僕の大事なちぢれ毛を綺麗に剃ったな?!」
『イライラしてつい』
『まぁ、本番時にジョリジョリするよりはツルツルの方が良いですよ』
本番させてくれないくせにッ!!
しばらく僕は文句を言いながら、散らかった部屋を片付けたのであった。
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