第14話 継続は墓まで?

 「その......今晩は一緒に寝ませんか?」


 「え゛」


 現在、ジョンさんの家の客室に、セッ〇ス警報が発令しました。そこはゴブリン戦から二日が経った今日も、僕がこうして使わせてもらっている部屋である。


 部屋のドア付近で男女が二人。竿役は地球から持参したパジャマ姿、穴役は露出の多い風邪をひきそうなランジェリー姿だ。


 リープさん、マジすか。


 『おいおい、マジかよ。マジですかよ』


 『マジのようですね。先日のゴブリン戦で苗床さんに惚れた可能性が高いです』


 マジすか。


 「め、迷惑でなければですが」


 「め、迷惑だなんてとんでもない! ささ、立ち話でもなんですし、まずは部屋に入ってください」


 『おい入れんな!』


 『いや、今から入れるんですよ。穴に』


 ちょ、うるさい。


 リープさんの反応からして魔族姉妹の声は例の魔法によって聞こえていないと思うが、それでも僕の耳にはちゃんと入ってくるんだ。黙っていてほしい。


 「そ、その恰好は......」


 「に、似合いませんか? たしかに私には不釣り合いかと―――」


 「そ、そんな! すっごく素敵です」


 その証拠に息子がビンビンです。


 「でもそのような恰好で男の部屋に来るということは......そ、そういう意味で?」


 「......はい」


 なにわかりきったこと確認してんだ、この童貞! こんな格好で男の部屋に来たら、もうソレしかないだろッ!!


 『おいこらてめぇー、あたしらが居んのになに勝手におっ始めようとしてんだ!』


 『この男、前に言ったこと忘れたんでしょうか。私たちが居るのに盛ろうとしてます』


 「......。」


 うるさい。僕だって経験したっていいじゃないか。


 僕は二人を無視して、リープさんと一緒にベッドに並んで座った。


 「「......。」」


 お互い沈黙である。リープさんも緊張しているのだろう。横でもじもじされても何をしていいのか、現在進行形で童貞の僕にはわからない。


 「え、えーっと、今日は良い天気でしたね」


 「は、はい」


 『出たよ。困ったときの天気の話』


 『無理もありません。童貞は天気の話から始めるって相場が決まってますから』


 決まってねーよ。もうほんっと黙ってて。


 「わ、私、あのとき怖かったんです」


 「モンスターに襲われた日ですか.....」


 『この女の方がモンスターみたいなツラしてんぜ』


 『言い得て妙です』


 ほんっと失礼。大切なのは性格なかみなんだから外見はどうでもいいでしょ。


 「すみません。もっと自分が早く戦闘に戻っていれば、リープさんを怖がらせずに済んだのに」


 「そんなことありません! ナエドコさんが居なければ、私はここに居ませんから」


 「でも、僕は―――」


 「ナエドコさんだって満身創痍だったじゃないですか。何度回復しても何度も怪我をして、辛い思いを一番したのに」


 僕の続く言葉は彼女が遮ってしまった。


 違う。辛い思いをしたからとかじゃない。僕はリープさんを囮にして逃げようとしたんだ。アイツが怖くて逃げようとしたんだ。


 『助かったのはあたしらのおかげな?』


 『苗床さんは誇れるようなこと何一つしてませんから』


 空気読め。三時間でいいからほんっと黙っててほしい。


 でも、ちゃんと本当のことを言わなきゃ。


 「聞いてください。リープさん、僕はあなたを見殺しにしようとしたんです」


 「え?」


 「結果、引き返して戦うことを選択しましたが、それでも過程にはリープさんを囮にして、自分一人だけその場を去ろうとしたんです」


 「そんな.....」


 「だから.....あなたがここに居ることは.......その訳はただの勘違いです」


 「.....。」


 再び沈黙へ。これでいい。これがきっとリープさんのためになるんだ。


 「最後に引き返せたのならいいじゃないですか!」


 「え」


 リープさんがベッドから立ち上がって、そう声を大にして言った。


 「あなたは私を見捨てずに救った。過程はどうあれ、私は今ここに居ます!」


 「で、ですが」


 「ナエドコさんの言葉で言うなら、その罪を私が赦します。少なくとも、私はあなたを赦しますし、好きと言う気持ちは変わりません。あとはナエドコさんの気持ち次第です」


 「僕の.....気持ちですか」


 彼女はこんな僕を赦してくれるというのだろうか。こんな.....こんなに薄情で都合の良い僕を。


 『私なら赦しません。去勢します』


 『あーしも。玉飛んでくまで蹴るわ』


 ほんっと黙っててほしい。状況考えろ。


 「ナエドコさん」


 「っ?!」


 するとリープさんは僕に寄っかかってきた。


 「抱いてください」


 ゴクリ。生唾を飲み込む音が静かな部屋に響き渡った。


 「僕なんかで良ければ、おねが―――」


 『おーいー! あたしらが居んだぞ!』


 『全くです。他人の性行為を見せつけられるこっちの身にもなってください』


 いや、他人が居る前でスる僕の身にもなってよ。引っ込んでればいいじゃん。


 「あ、で、でも避妊具はちゃんとしなきゃ」


 「避妊.....ぐ?」


 「え?」


 コ〇ドームですよ。ゴムです、ゴム。


 『んなもん、この世界にある訳ねーだろ』


 『生以外ないですよ。中に出すか、外に出すかで避妊するかどうかを決めます』


 マジすか。僕、童貞ですよ。いきなり生って.....。


 『逆にゴム着けた方がキメぇーよ』


 『ええ。「なんだその薄い膜は」ってなります』


 「.....。」


 「ナエドコさん?」


 『生ですよ、生。ちゃんと外に出さないとデキちゃうかもしれません』


 『リスクあるよなー。デキたらあたしらとの旅はどうすんだよって話』


 「い、いえ、なんでもありません」


 「?」


 マジか。一瞬で果てる自信あるぞ。未経験だから、マジであり得るぞ。


 「気分が優れないようでしたら今日のところは.....」


 「そんなことないです!」


 でもここでチャンスを逃したら、次にいつ卒業できるかなんてわからない。


 僕はリープさんに向き合った。お互い見つめ合う。


 まずはキスからだ。そう思って僕はリープさんの顔に自身の顔を近づけた。リープさんも応じて瞳を閉じる。キス待ちだろう。


 よし。


 『キス顔きめー!!』


 『この女もこんな男に接吻されるなんて災難ですね』


 「.....。」


 『おいおい、ちゃんと歯を磨いたか?』


 『息臭いと嫌われますよ』


 「.....。」


 もうほっとうるさい。勘弁してよぉ。気にしちゃうじゃん。


 「ナエドコさん?」


 「あ、いや、あははは。おりゃ!」


 「きゃっ?!」


 キスをせずに僕はリープさんを半ば強引にベッドへ押し倒した。慌てる彼女は抵抗なんてせずに赤面するだけである。


 「はは。悪いけどキスより先にさせてもらおうかな」


 「お、お手柔らかにお願いします」


 僕はリープさんの身体に触れることにした。


 まずはおっぱいからだ。僕は恐る恐る目的の山脈に手を伸ばした。


 『いきなり胸かよ』


 『胸にしか魅力を感じていない証拠ですね。きっと彼女もそう思うでしょう』


 「.....。」


 『かッー! なーんであたしがブスの胸を揉まなきゃいけねーんだよ』


 『右利きですからね。あ、だからって私に切り替えないでくださいね。触りたくないですから』


 「.....。」


 もうどうしろってんだ。お願いだから、一時間だけ引っ込んでてくれないかな。二人の発言が気になって気になってしょうがない。


 僕は彼女の陰部に狙いを定めることにした。


 『ちゃんと手を洗ったのかよ』


 『不衛生な男です。色んな所を触った手で穴に直行とは』


 「.....。」


 『女を大切にしてねー証拠だな。こういう奴に限って飽きたらすぐ女をポイすんだ』


 『ええ。ブスでもオ〇ホくらいの役割を果たせるだろうと思っているに違いありません』


 「.....。」


 魔族の核ってどこにあるのかな。わかったら今すぐナイフで抉り取るのに。


 そして、その後も―――


 『うっわ。コレはないわー』


 『コレを捻じ込むつもりですか。ガッチガチですね。もしやあなたの【固有錬成】ですか(笑)』


 それからも――


 『ばっちそうな竿ですね』


 『コレを穴に入れる気だぞ。正気とは思えないわー』


 まだ――


 『あ、ここに付いてるのチンカスじゃね?』


 『うっわ』


 『悪いことは言わねー。試しにちょっと舐めさせてやれって』


 『性欲失せますね』


 『にしても、くっさそーなま〇こしてそーだな、この女』


 『磯臭くてむせることでしょう』


 クソ魔族共は黙ることなく永遠と僕にしか聞こえない声で嫌がらせしてくるのであった。


 神様、騒がしい両手から、どうすれば僕は解放されますか.....。



―――――――――――――――



次回から第三章に入ります。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る