第4話 女性(両手)と暖簾をくぐる
「僕はまだ十五だよ?!」
『お、おま、あんだけポーン〇ブとかエッ〇スビデオ視ておいて何言ってんだ.....』
「ちょっ! 言わないでよ!」
現在、僕は十八禁コーナーの
『ア〇ゾンなどでローションなど買ってたじゃないですか。知ってますよ? お得パックのゴムを買って密かに着ける練習し――――』
「買ってたけど! 実際に店で買う勇気なんて無いよ?! あとそれ以上言わないで!」
『かぁー! そんなんだから小林にフラれんだよ』
「小林さんは関係無いでしょ?! それにフラれてないし!」
男性にオ〇ホ勧める女性ってなんなんだ。
曰く、絶対に両手を使わせない、と。
僕は仕方なく、そう、仕方なぁーく暖簾を潜った。
「う、うおぅ、ここが.....」
『言っとくがそれ系のモノがたくさんあるからっておっ勃てるなよ』
「わかってるって!」
しかし視覚的刺激がとてつもないな。背徳感が僕の欲情を煽ってくる。ちゃんと大人しくしててくれよ、息子。
『お、これなんてどうだ? ヒダヒダが癖になるってよ』
『苗床さんには刺激が強すぎるんじゃないですか? こっちのエッグでしたら低刺激でかつコンパクトです』
「......。」
『そんな薄っぺらいもんだと握ってる感触が
『ああ、たしかに。じゃあ一つの電動オ〇ホで多くのバリエーションを楽しめるこちらはどうでしょう?』
「............。」
頼むから黙っててくれないだろうか。いくら口だけ女性でも、ここまでデリカシー無いと落ち着いて相棒を選べない。
結局僕は二人がお薦めするオ〇ホを一つずつ買ってド〇キを後にした。
レジでのドキドキ感がパないのなんの。下校中に直接ここへ来たので、制服姿を見られて「あなた十八歳ですか?」とか言われると思ったが、何も言われなかったのが幸いだった。
*****
「っていうか君たち、喋れるけど飲食はできるの?」
ド〇キでポテチを買ったのはいいが、食べられないのなら買った意味がない。僕はまだ二人が何か口にしている様子を見ていないから疑問に思った。
『あたぼうよ! ほら、ちゃんと舌まであんぜ!』
「うわーお、舌長いね」
そう言って僕に舌を見せてきた妹者さん。舌を上下に激しく動かすから唾液が飛んでくる。これ、僕の唾液.....というか体液なのかな。
「食べたらどうなるの? まさか僕の胃に行くんじゃないよね?」
『はは。あなたは腕にも食道があるのですか。食べたものは魔力に変換されます』
魔力ッ!!
「じゃあ家に着いたら色々と食べてよう!」
『いえ、転移用に魔力を残しているので、これ以上はキャパオーバーです』
「ポテチは食べられるのに?!」
『数学の時間で苗床さんの声を真似たでしょう? アレの分がポテチ一袋分です』
なんか都合良いな。テキトー言ってない? まぁ、それを確認する術を僕は持ち合わせていないんだけど。
そんなこんなで話しながら帰宅した僕たちは、ママチャリの籠から買ってきた荷物を取り出して家の中に入る。誰かと話しながら帰ったのはいつ以来だろう。相手は魔族だけど、少し楽しかったのは正直な気持ちである。
「ただいま」
「おかえりなさい」
今日は準備が終わったら時間の許す限り家族と過ごそう。異世界に転移するなんて頭のおかしなことは言わない。それっぽい書置きくらい残しとこう。そう思って僕は自室に戻った。
『家族はおめぇーが消えたら泣くかなぁー』
「さすが魔族、嫌なこと言うね」
『魔族だからって悪い者ばかりじゃないですよ。まぁ、今のは意地悪いですが』
今の今まで考えないようにしていた家族の気持ちをまさかの魔族さんから言われるとは思ってなかった。
『だって考えてみ? 事情も話さずに急に消えたら慌てふためくだろーよ』
「今更だよ。でもたしかにそこが唯一の心残りかな」
こんな僕が居なくなっても泣いてくれるだろうか。そんなことを考えても異世界転移は不可避だから仕方がない。そう思い込んで深く考えないようにしていた。
“安心してください”なんて絶対に書けないな。
「うーん。そう考えるとなんて書けばいいかわかんないや」
『伝えたいことが一番だと思いますよ』
『異世界行ってきまーすってさ』
なんかそれ、現実逃避した人みたいじゃない? いやまぁ、実際にそうなんだけどさ。ちょっとニュアンスを考えた方が良いでしょ。
「二人共さ、少しの間だけでも引っ込めない?」
『おいおい、今更恥ずかしがることねぇーよ』
『真面目な話、この口を引っ込めたら、次はいつ戻ってこれるかわからないので極力避けたいです』
朝もそんなこと言ってたな。ここ数時間二人と過ごしてどんな
特に強く感じたのは、この二人は優しいということ。なんやかんや言っても僕のことを考えてくれてるんだ。でも今回ばかしは聞いてくれないみたい。
「リスクとしては、今の姿で戻ってこれないというだけで、実際は僕の中に居るんでしょ?」
『おう。引っ込んだら喋れないことに加えてこの手から得られる五感も遮断されるぞ』
五感を得るのに必要な目と耳と鼻はどこ。常人の僕にはそれが見受けられない。
『苗床さんの中に居ても意識はちゃんとあります。ですので、しないとは思いますが、妙な気は起こさないように。ちなみに私たちの“核”を取り出すと、苗床さんは死にます』
「マジすか。あ、じゃあ片方だけ、特に妹者さんだけ引っ込めてみるのはどう?」
『なんであたしなんだよッ!!』
『まぁ、一人だけ居れば詠唱を唱えられますし、問題ありません』
詠唱ッ!! マジで魔法の世界に行けるんだなと思えてきた。
「じゃあ転移直前の十分前になったら書き始めたいから、妹者さんは引っ込んでて」
『絶対後で姉者から何書いたか聞くからなッ!!』
唾をまき散らしながら僕に怒鳴りつける妹者さん。
や、やめてよ。内容聞くんだったら、せめて本人に知らせないでこっそり聞いてほしい。
『まぁまぁ。苗床さんにはこれから頑張ってもらうんです。大人しく言うこと聞きましょう。私も一応目を瞑っておきます』
「ありがとう」
だからどこに目があんだよ。わっかんないから信用できないよ。
「&%ご飯よぉー!」
「っ?!」
すると突然、雑音が混じった母さんの声が聞こえてきて、僕はびっくりしてしまった。そうだよね、名前わからないからしょうがないよね。
「夕飯の時間だ。困ったな。全然準備できてないや」
『そう多くの荷物を持って行ける訳じゃありません。それに何を持っていくかは事前に決めたじゃないですか』
「そうだね」
姉者さんの言う通り、学校で授業を受けている間に大体の荷物は考えておいた。ド〇キで買った物と着替えを何着か持っていき、後はキッチンでちょっとした調味料でも拝借しよう。まぁ、返せないけど。
僕は最後の晩餐のため、リビングに向かった。
*****
『ぶはははははは!』
「.....。」
『ひー! ひー! 駄目だ、思い出しただけで笑っちまう!』
夕食後、僕は自室に戻って支度をしていたのだが、右手がめちゃくちゃうるさい。
『妹者、笑いすぎですよ』
『だって! 姉者も聞いただろ?! こいつが急に会話始めたいからって、わざわざ視ていたテレビの電源を切ったくせに、何がしてーのか口をパクパクさせてんの!!』
「そ、咀嚼だよ! 君の勘違い!」
『おや、嘘は関心しませんね。口の中は空だったじゃないですか』
『やっと声を出したかと思えば、「きょ、今日は良い天気だったね」だって!! 緊張しすぎ! 相手は小林じゃねーんだからさ!』
「.....。」
小林さんは関係ないだろッ!!
『んで、碌な返事をしなかったから、またテレビ点けたんだぜッ! なにがしたかったんだよッ?! あひゃひゃひゃ!』
「だ、だからって、そこまで笑わなくてもいいじゃん」
妹者さんはほんっと嫌な性格してる。少しは姉を見習ったらどうなんだろう。
「よし、これで大体かな」
『んだよ、もっと持ってかねーのか』
『多すぎても持ち運びが大変ですからね。これくらいがベストでしょう』
そう。どこに転移するかわからないみたいだし、あまり荷物をたくさん持って行っても邪魔になるだけだ。名残惜しいけど、リュックサック一つ分で我慢しよう。
『ちゃんとオ〇ホ持ちましたか?』
「.....うん」
妹者さんに言われるならまだしっくりくるけど、姉者さんに言われるとなんか違和感がある。真面目系な人の口から十八禁ワードが出たもんね。しょうがないか。
こうやって確認するあたり、よっぽど大切にしてほしいのだろう。オ〇ホが無くなればマイハンドしか手段が無いからか。そりゃあ必死になるか。僕だって魔族が住み着いている両手で息子を握りたくない。
そこまでして性処理する必要は果たしてあるのだろうか。あります。僕、性欲強い方だから、急にオ〇禁しろとか言われてもたぶん三日も持たない。しばらくはそんな状況じゃないと思うから大丈夫だと思うけど、落ち着いたらきっとこっちの生活みたいに戻るんだろうな.....。
そんな一抹の不安を抱えながら、僕は準備を続けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます