【 エピローグ 】
第682話 別の意味で険しい仕事が残っているな
こうして、夜には今回の戦いで死んだ人間は全て生き返らせた。
とはいえさすがにグロッキー。特に満足な休息も出来ずに2度目の蘇生をしたメンバーは早々にダウンした。
ラーセットの住民はもう戦勝祝いを始めているが、こちらはまだまだだな。
ただその代償で、薬で怪我は直してもまだ体はボロボロだ。
そんな訳で、今は俺たちの部屋で休んでいる。
「本当にこれで終わったの?」
ベッドで寝たままの
本当は起き上がろうとしたが、俺が制止した。
「ジオーオ・ソバデだけだけどな」
「……まさかと思うけど」
「いや、それは無い。さすがに世界を滅ぼすっていう残りの2体は、何処にいるかも分からないしね。世界中と交渉しながらこの星中を探索の旅なんてしていたら、それこそ千年とかかかりそうだよ。さすがにその辺りは、この星の住人にやってもらうさ。この世界における召喚者の役割は終わったんだ。他の国との関係を考えれば、むしろいない方が良い」
そう。今回の事で、次の大変動が起こればジオーオ・ソバデは復活する。
人は襲うが、世界は滅ぼさない普通のセーフゾーンの主として。
最初から素直にそうすればよかったのにと思うが、そうしないのは人間も同じだ。やっぱり今の自分が一番なんだよな。
もしかしたら、黒竜だって外に出て異物となれば、それはそれで人生を謳歌するかもしれない。
だけど、大変動の本流に戻ったアイツは
普通だったら異物はもはや異物だが、奴の場合はあのメッセンジャーが成り代わる。
元々そういう約束だ。今の奴にとっては今の立場こそが最高だろう。
両方の立場を知る者として、他のセーフゾーンの主と共に何かの行動を起こすかもしれない。
なにせ、残りの2体が暴れれば暴れるほど、また召喚者なんてものが大量に来てしまうかもしれないのだから。
「じゃあ何が有るの?」
やっぱり鋭いなー。
俺がまだ帰れないのはもう気が付いているか。
「ジオーオ・ソバデは大量の人間を召喚した。食われてしまった人はどうしようもないが、感染して同類となってしまった人の魂はまだ彷徨っている。それを全て回収しきった時、ようやく召喚者がこの世界にいる意味がなくなるんだ。そしてそれをできるのは俺だけなんだよ」
「じゃあ私も残る」
言うと思ったが、拒否する理由もない。
むしろありがたいにはありがたいが……。
「良いのか? 正直どれだけ時間がかかるか分からない。億とは言わないまでも、数千万人はいるかもしれない。当然ヨルエナの代だけじゃあ終わらないだろう。何代も何代も、それこそいつまでいる事になるかもわからないぞ」
「でも一緒にいる!」
こうと言い出したら絶対に曲がらない。
だがそれだけの時間、
……まあ考えるまでもないな。無理そうになったら帰してしまえば良いのだ。
☆ ★ ☆
そして数か月にも及ぶ戦勝祝賀会。
そこまで時間がかかったのは、南北の重鎮たちがラーセットまでやって来たからだ。
とっくにラーセットの復興も召喚者の蘇生も終わっていたので、面倒な事は全部クロノスという名の
それにしても、この時代では南北とこの国はずっと険悪な関係にあった。
まあクロノスをはじめとした召喚者は戦いに明け暮れ、出土品も全て奴との戦いに回した。
実際には相当数の横流しでラーセットは潤ったが、それはごく一部の不正に手を染めた人間だけ。
ましてや正当なルートを通さない貿易は、闇売買として双方の軋轢を広げていっただけだ。
何事もほどほどが一番だと言いたいが、そうも言ってはいられない状況だった事はもう分かっている。
だけど今回の共闘。それに何より、この周囲を脅かしていた世界を滅ぼす三体の一体を倒したのだ。
召喚者の目的はそれだという宣伝は行われていたが、実際に倒すまでは誰も信じなかった。
そりゃまあそうなんだけどね。
なんで他の世界から命を懸けて慈善事業をしにくるよ。地球の事は話せないし。
しかも一部の召喚者の行なっていた悪行も知れ渡っていたからな。無理もない。
しかしこれでこちらの話は実に通りやすくなった。
暫く召喚者は残るが、それもこちらの世界から来て死んだ者たちの魂を回収するためだと説明したらすんなりと承諾された。
むしろ拍子抜けだ。地球なら絶対に信用されない。
けれど、もしかしたら彼らの根底にもあるのかもしれない。死んだとき、大変動のエネルギーとして世界を循環する感覚が。
★ ☆ ★
こうして政治は政治で色々やっている間にも、死者の魂たちを地球へと還す作業は続いていた。
ただ一つ気になる事もあって――、
「なあ、フランソワ、
一応、搭は記憶を保持しない塔に変えてある。
あれから話し合って、やはりこちらでの記憶は無い方が良いと思ったんだ。
長い長い、本当に長すぎるほどの記憶。それは良い事もあったが、辛い事も多すぎた。
なにより、精神的に成熟し過ぎている問題がある。
このまま向こうに帰っても、相当に浮いた存在になってしまうだろう。
何せ同級生なんて、もうよちよち歩きの赤子程度にしか思えないぞ。
それにあまり長くなると、向こうに戻った時に記憶がパンクする危険性もある。
今はこの世界の法則位から外れた異邦人だから良いが、日本に帰った時にどうなるかは分からないからな。
「大丈夫です。実証は出来ませんが、理論上は死んだ人間を戻した時に記憶が保持される事はありません」
「自分が召喚された事も死んだ事も、全部綺麗に忘れます。その点は大丈夫だと思います」
「君たちが言うんだ。信じるさ」
こうして死者の魂を召喚しては送還していると、
当然、
「彼等もそろそろ帰還したいそうですわ」
「そうか、寂しくなるな」
「随分とあっさりですなあ」
「最終目的は、死者まで含めて全員の地球への帰還だ。いつか帰りたいという人が出てくるのは予定済みだよ」
それに、これはクロノス時代にもやっていた事だしな。
「なら話は早いですわ。
「
「あれ?
「つれないですなあ。ウチはまだまだ残りますわ。やはり責任というものは感じていましたしなあ」
「そうか……」
何だかんだで、多くの人間を召喚し、そして殺させてきた。
今まで表には出さなかったが、とても正気で出来る事じゃないと思う。
それでもやらなければいけなかった。
普段は平然と振舞っていても、やはり考えていたんだな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます