第678話 これでは潰し合いだ
「ねえ、何をするの?」
「危ない事はしないで欲しいけど……今がもう危ないのよね」
「そういう事です。まあ大丈夫。一気に削り取ってやりますよ」
同時に奴までの距離を外す。まだ
無ければ外に広がる分は外せばいいが、余計な事をしないで済むのはありがたい。
「プレゼントだ。くらっとけ」
そう言った時には、既に俺の体は爆散していた。
同時に炸裂するジオーオ・ソバデ。
俺の体から始まった爆発はクマムシの体だけでなく、飛び散った地面から新たな爆発を起こす。
最初に起動した状態なら対処できる事を、あの強敵との戦いを通じて知られていた。
だから最初のは仕方がない。出来れば儲けもの程度だったからな。
しかしこれなら関係ない。俺はそう簡単に包まれるほどトロくは無いぞ。
《避けられない死が確定しました。“ハズレ”ます》
《避けられない死が確定しました。“ハズレ”ます》
《避けられない死が確定しました。“ハズレ”ます》
《避けられない死が確定しました。“ハズレ”ます》
《避けられない死が確定しました。“ハズレ”ます》
まあこちらもこちらで、いつまでも此処でもない何処でもない空間に外れているわけにもいかない。
当然黒焦げの体を捨てて戻る事になるので死にまくりだ。覚悟はしていたが、当然きつい。
その一方で、奴が火葬されるたびに無数のライオンの頭を付けた球体になったり人の口が両面に付いた巨大イカ、歯車の車椅子に乗った骸骨、亀の甲羅の様な隙間から無数のミミズのような触手を生やした謎の生き物、果ては二本足で立つヒラメ、体よりも大きな角を持つ水牛、蟹の足が付いた猫、無数の棘を生やした三角コーンへと姿を変える。
しかし――、
《避けられない死が確定しました。“ハズレ”ます》
これはもうさすがにたまらん。
これ以上留まる事を諦めて、皆の所へ戻る。
当然、爆発した最後の体は捨てて来た。
しかし同時に、バンッ! と大きな音柄を立てて
最初の時点で気が付いていたが、こいつ自身に着火させる事は難しい。
さっきのように十分に広がって他からの火力が増せば手に負えなくなるが、ああやって完全に隙間が無くなると
同時に空気の壁がガラスを割った様にはじけ飛ぶ。
その中から出て来たのは竜の姿だった。
一瞬ドキッとしたが、黒竜はまだ死んでいる。
それにゼリー状なので色は分からないが、細部が違う。別物だろうな。
しかし人では決して倒せないと言われた奴はしっかりとブレスを吐いてきた。
見た目が全てではないが、要警戒には変わりはない。
と思ったらいきなり吹いてきた。それも溶けた金属をだ。
咄嗟に
――まずい!
空気が覆った範囲は俺たちを包む円形。その範囲を包む銀色の金属による膜。
俺は視界からそれを外して相手を見る事が出来るが、奴はその間にこちらに向けて跳躍していた。
音もなく上空から降って来る。
アレが直撃したらさすがに耐えられない。
というか、どう躱したらいいか説明が出来ない。
今から距離を外して奴の元に……いや、それでも奴は止まらない。
たとえ竜を倒しても、出てきた奴が檻ごと潰してしまう。
むしろこの状況で次に出すのは巨大な奴。下手をすれば危険を増やしてしまう。
だが万事休すとは思わない。やるだけの事はやるしかない。
距離を外し、奴の腹に張り付く。
――外れろ!
かつての本体すら削った最高出力だ。
竜の腹には大穴が開く――が、やはりそこから出て来たのはまるで押しつぶす専用のような球体。サイズも竜より大きな30メートルクラス。
出て来た瞬間に潰しそうな勢いだ。やっぱりでかいのを出してきやがった!
頼むから持ってくれよ!
そんな願いを助けるように、無数の斬撃が奴の左から飛来する。それも一撃や二撃なんてものじゃない。無数とも思える攻撃が球体となったジオーオ・ソバデを襲う。
それ一発ではまるで足りないが、たまらずそれを避けるように起動がずれる。
これなら外せる。
同じ方向からその巨体を大きく削る。
これは堪らなかったのだろう、金属の檻には落ちず、大きく右側に逸れて落下した。
しかし今の斬撃は……そうか、
溶けた金属のブレスを見た時には既に予測していたのだろう。そして軌道上に無数の斬撃を放っていた。
ただ数秒しかずらせないと聞いている。
それに斬撃自体を飛ばせるのは初耳だ。今回は助かったが、警戒心が強すぎるのも考え物ぞ。
まあ
落下した球体の――というより、落下寸前に
さすがにあのでかさならまだ戦いそうだと思ったが、削れた穴からワニの骨格を思わせる姿で勢い良く飛び出してきた。
しかしその横から
細かったのが災いしたのか、
今度は何処からだ……と思った途端、空洞の目玉からころりと小さな球が転がり落ちる。その瞬間、全体に向けて再びの衝撃波が放たれた。
さすがにこの至近距離。そして目まぐるしく変わる敵。
いくら全知といえども対応できなかった。直撃を受け、
最期に残念そうな顔をしていたが、ここまで十分すぎるほどに頑張ってくれたよ。
撒いたと言っても目の前に放った形だ。
それはまだ広がっておらず、何重もの壁となって衝撃波を防ぐ。
殆どが壊れてしまったが、本人は無事着地した。
この辺り、経験と持ち物の差が出たな。
そして球となっていたジオーオ・ソバデは、頭上から飛来した
あれはさっき
壊れているものもあるが、落ちていたものは意外と無事だ。石畳や土が代わりに壊れてクッションになったのだろう。
飛ばしたのは当然
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