第676話 今はまだ神罰は使えないが
こうして、最後まで戦い抜いたダークネスは
ここまで5日間の戦いで、ルサリアもアイテムの馬も全てを失った。
そして最後は自らも。
しかし最後、塵が消える寸前にその場に一人の女性が現れた。
これは人間を入れ替えるスキル。
現れたのは――、
「
「みんな久しぶりね。貴方の事は、
というか、彼女戦えるのか?
装備はいつもの寝間着ではなく、白いロングのドレスに胸当てとショルダー、それに手足に金属の鎧。
手には先端に穂先が付いた本当のさすまたを持っている。今でこそ中央の槍は無いが、アレが本来の姿だ。
どう見ても戦闘装備だし、最初から決めてあったのだろうとは思う。
なら決めたのはダークネスさんだろう。少なくとも、足手まといにはならないはずだ。
その辺りを聞きたいところだが、ジオーオ・ソバデからすればそれどころじゃないだろう。
いつからダークネスさんが戦っていたのかは分からないが、相当なダメージを与えてあるはずだ。
それに双子もいない。
奴との決戦を知った上で置いてくるわけがない。そう考えると、あの二人を倒す程の戦闘があったという事だ。
それにこの姿から無数の気配というか、奇妙な感覚がする。
おそらく何て曖昧なものじゃない、確定だ。
こいつは護衛の眷族を置いて逃げて来たんじゃない。取り込みながら、ここまで共にやって来たわけか。
それと戦い続けられるってすごい事だぞ。
かつて
今にして思えば、アレもまたダークネスさんの作戦だったのだろうな。
というか、俺を仕上げるために
そんな事を考えている間にも、奴は攻撃を始めている。
ダークネスさんを砕いた槍状の機関が
そしてこちらにも、体から湧き出す様に無数のシャボン玉が撒き散らされる。なかなかファンシーな攻撃だが、あれはどう見ても触っちゃダメな奴だな。
一方で
とはいえ、力はあちらの方が上だ。押さえつける事は出来ないが、力は綺麗に受け流している。
いかんせんまともに戦っている姿を見る事は無かったが、思ったよりも戦い慣れしている。
まあ考えてみれば、彼女もまたこの世界に長くいる一人だ。
ダークネスさんをあの殻に入れるまでは、戦い続けていたのだろう。
ただ彼女のスキルは魂操作。元々同類も眷族も死体だし、しかも取り込まれた状態では効果は無いな。
と思ったらダークネスさんが守っていた地上への階段を登って退避してしまった。
まあダークネスさんが最後に入れ替えを決めたんだ。何か策があるのだろう。
一方で勢いよくこちらに噴出されたシャボン玉は、全て撃ち落されていた。
割れると同時に透明だったそれが真っ黒い弾に変わる。
それは鉄球のように地面に落ちると、溶けながら周囲を黒く染めた。
どう見ても、くらったら相当に厄介だな。
だがくらわない。最初から持って来たのか誰かから貰ったのか、無数の縫い針が小魚の群れが宙を舞う様に移動している。
これはかつて、俺を散々に苦しめてくれた
もっと大きい物も使えるが、ここは相手の武器を見てあれを選んだのだろう。
そしてそれに守られながら、全員が突入する。
最初に届いたのは当然のように
あの動きに追い付ける人間はそうはいない。
一瞬で背中に行くと、黒竜を切った太刀で背中を斬る。
だが効かない。ゼリー状の体は直ぐに張り付き再生する。
「やっぱり武器じゃだめね」
「うああああーあ」
個人でできる大変動とも呼べる大地の攻撃。あれに包まれたらもうおしまいだ。普通ならな。
しかしそこはジオーオ・ソバデ。
足元に出来た穴も、体に纏わりついた石も、完全にものともせずに突進してくる。
そして再び無い頭から槍を
「それしかないのかしら、芸がないわね」
ほんの僅かの足捌きでそれを避けると――、
「何処まで削れるのかしらね」
槍の根元から奴の胴にかけて、球形に削られ粉となる。
普通の生き物なら致命傷だがこいつはこの程度では死にはしない。
おそらく再生するだろうが――と思生きや、そんな生易しい物ではなかった。
まるで脱皮するかのように、中から巨大なクラゲが飛び出してきた。
羽や尾は付いたまま。傷口だけを捨てたにしては変だ。
だが考えるのは後だ。一斉に放たれるクラゲの触手。
それは鞭のようであるが、同時に鋭い槍の様。
鋭い金属音を立てて何本もの触手が地面に突き刺さり、それを避けようとしたメンバーに隙間から触手が襲い来る。
「あああー!」
「ちょ!」
軽く避けようとした
アイツはスキルで分かっていたのだろう。それと同時に、彼らのいた地面から僅かの隙間もない程に触手の槍が飛び出した。
「やってくれるじゃない」
光に包まれ消える
こちらに来た触手もそれぞれが個々の技やスキルで防ぐが、
背負ったままだからこちらも思う様に動けない。
「
ここで神罰を撃てば、それで終わりだ。その予定だった。
でも今の奴に撃って何処まで通じる?
完全に消し去ったらダメだ。けど中途半端なダメージを与える事にも意味はない。
おそらく、奴がここに来た時はもっと違う姿だった。
そしてそれは、もっと多くの眷属と融合した結果に間違いない。
さっきの違和感。確かに眷属が倒された空気を感じた。
つまりは、奴に届かせるためには奴が取り込んだ眷属を剥がしまくるしかないわけだ。
「ちっ!」
だがそれは難しいどころの話じゃない。
あの高速でかつ不規則に動く
「この私に当てるとはな」
そう言いながら、右足の膝から下を自ら斬り落とす。
機動力は大きく削がれたが、あれなら薬で直せる。問題はその余裕だ。
「使え!」
「分かっているねえ」
それを見上げながら、
それは着地する前に空中で止まると、一斉に攻撃を開始する。
無数の触手が迎撃し飛来する武器と鎧を弾き飛ばすが、その間隙をぬって
だが当然、気付かれている……が――、
「油断は禁物だね」
ここに侵入した時に砕いたであろう、扉のつっかえ棒にしていた柱。
確かに入り口付近から反対までの柱は一直線に衝撃波を走らせたのだろう、見事に砕かれていた。
しかしここにあったのはT字。
残った一本の柱が、クラゲの体を貫いた。
あれ俺もやられたけどきついんだよな。
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