第660話 先ずは休息か
スキル自体の燃費に対する火力が異常に高い強力なスキルだが、やはり時間制限があるのでグルグルとラーセットの周囲を回りながらになる。
というか、もう眷族も混ざるようになってきているのだがまるで関係が無い。
偽物とはいえ、あの強力な衝撃波を放つジオーオ・ソバデのコピー体すら葬ったスキルだ。普通の眷族では業火に包まれながら全身が爆発してジ・エンド。
ある意味酷いが良心の呵責は欠片も無いな。当たり前だが。
アレは敵であり、しかももう既に死体だ。むしろここで浄化するのが世界の為だろう。
そうやって敵を焼き払っている間にもジオーオ・ソバデを探す。
しかし範囲内にはいない。
当たり前か。向こうも北で酷い目に合っている。
その代りラーセットを完全に破壊し、召喚者の供給源を断つのが目的だった訳だ。
そう考えれば、案外ラーセットを火の海にしてしまった方が奴は近くまで来たのかもしれない。
だけど、その可能性は限りなくゼロに近い。
俺だけは戻って来る事が分かっているし、俺だけが相手なら物量でただひたすらに押し切ればいい。
俺には逃げるという選択肢は無いのだから。
そう考えれば、ここで
どのみち向こうとしては、スキルの事は分かっても雑魚や眷属では認識阻害は破れない。
取り込んだクロノスから召喚に関しての知識は得たのだろうが、ダークネスさんは蘇生を出来なかったからな。その知識は無い。
さてそうなれば、同じ系統のスキル使いがこちらにもいるとしか考えられない訳だ。
ただ偶然も何度も続けば必然になる。
今は休息してもらっている
そうなったらどうするか?
おそらくラーセットは平和になるだろう。
奴は無駄な特攻はしない。
そして、もうこの地から完全に離れてしまえば、召喚者の集団が追いかける事は出来ない。
さすがに他国の領内だからな。
俺とのつながりは残ったままだが、かつての奴と比べれば強さは段違いだ。
相変わらず危険視している事は間違いないが、俺一人が追って来るならどうにかなるとも考えているだろう。
そうなったら連中は全て下がり、
まあある意味俺より酷い連中に襲われるからすぐに地表近くに移動するだろうが、逃げられてしまう事には変わりない。
それで良いのか? 決着か? そんな訳がないだろう!
アイツが俺を消滅させなければ安心できないように、俺もアイツを倒さなければ気が済まない。
かつては地球を滅ぼした仇だったから。
そして、
単純に言ってしまえば、これは復讐心から始まった戦いだ。
その為に、クロノスとしてこのラーセットも召喚者も利用した。
だけど今はそれだけじゃない。
俺はこの世界が好きだ。
この世界に生きる人が好きだ。
確かに今は南北の大国との仲は険悪だ。
だけど、それすら守りたいと思い始めてきた。
それに召喚者の皆も好きだし、贖罪意識も忘れてなどいない。
とはいえ、俺たちはこの世界に永遠に留まるわけにはいかない。
この消えない記憶が実に厄介だ。
10年前か、さっきの事か、咄嗟に分からなくなる曖昧な時間の感覚。
まだそれぞれが対処しているが、200年、300年……長くなればなるほど、精神への影響は計り知れない。
時間を戻す相手との長期戦は絶対にダメだ。他にみんなは戻っても、俺が壊れた時点で先が無い。もう後を託すべき俺がいないんだ。
奴が時間の崖っぷちにいるように、こちらも背水の陣である事に変わりはない。
速く決着を付けなければならない。絶対に逃がさない。
そうでなければ俺たちがいなくなった後、戻ってきた奴によってラーセットが滅ぼされてしまうかもしれないじゃないか。
「どうした、考え事か?」
「考え事というか……まあそんな感じだな。今後の展望とか色々と考えていたんだよ」
「確かにこのまま持久戦を続けても意味がないな。また逃げられて終わりだ。だけどそれじゃあダメなんだろ?」
「ああ。時間を与えれば、また倒しても時を戻されてしまう」
それとさっきの考えを合わせれば、奴はもう無敵になる一歩手前にいると考えられる。
「なんとか奴を見つけて倒さないとな」
「じゃあやるか? そろそろスキルの影響も出ているだろう。クロノスも疲れた時にはよくオレを求めたもんだ。
「ダメよ!
キラキラと潤んだ瞳で見つめられるが――、
「随分と余裕ね。確かに上から見た限りだと、かなりの数は殲滅したようだけど」
いつの間にか、
同時に
この二人、全くタイプが違う様で似た面を持つ。しかも
というかさ……。
「どっから来たんだ? 門は全て完全に閉鎖しているはずだが」
「ふふ、普通に飛び降りたのよ。慣れれば問題ないわ」
普通は4000メートルのダイブなんてしねーよ。
しかも慣れるほどやっていたのかよ。
「それでどうなの?」
「残念ながら、探知範囲に奴はいない。このまま殲滅を続けてもいいが、やり過ぎると撤退してしまう。だからと言って、負けるわけにもいかないんだよな」
「それで
「お見通しかよ」
「他に手は無いでしょう?
また心を読まれたのかと思ったが、彼女は理詰めで同じ結論に達したのか。
ある意味さすがという感じだな。
「それじゃあ、ある程度のインターバルを取りながら適度に攻め込ませましょう。壁さえ超えさせなければ良いのだしね。それじゃ、
やられた! いつの間にか腕を組まれている。
あ、
というか今のこの状況、どう考えても
神殿庁に退避させておいて良かった。
「とにかく冗談抜きで、一度戻る事をお勧めするわ。上から確認したけど、眷族クラスはどれも遠巻きに見ているだけに変わったもの。今攻めてきているのは、数だけの雑魚よ」
確かに向こうにとっても、眷族は貴重だしな。
「それじゃ、とりあえず戻るとしようか」
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