第630話 緊急事態
たとえ
「じゃあ
「
平静を装っているが、やっぱり
それに早々に死んでしまった
共に過ごした歳月は彼女にとって重要だが、その生きた年月が俺にとっては重要だ。
彼女は
そして152年に死亡した。
確かに俺がクロノスの時と比べれば力不足は否めない。
俺の時は大月歴の144年に召喚し、その後は最終決戦の開始となる185年まで生き延びた。
だがそれでも、彼女のスキル自体に曇りは無い。
実際、本格的に本体の探索と追跡を始めたのは150年。
その時点で短時間とはいえ追跡が出来た。
今回はそれよりも短い時間で良い。
逆に彼女はあの時よりも長く生きている。十分だ。
「では始めるぞ」
だが今更失敗は無いよ。
そんな訳で
今までのベテラン――それも戦闘系と違い、彼女は受け身も取れずにストレートに仰向けに落下した。
しかも呆然としている。何が起きたのかまるで理解していないという感じだな。
「後は任せたぞ」
「では……久しい様なさっきの様な、なんとも不思議な感覚でありますなあ。ですが、
「
「何も言わなくても分かりますわ。今は落ち着きましょう」
「あ、あの時……何も出来なくて……足を引っ張って……ご、ごめんなさい……」
「全部良いのですよ。気になんてしてはいけません」
あんなにやさしい
クロノス時代の彼女は、あまり話すタイプではなかった。
基本的に何でも話すのは2年生の
そして3年生の
初めての――だけど何の意外さも感じない様子を背後に聞きながら、俺は召喚の間を後にした。
他の全員も一緒だ。いつもと逆だな。
その理由は簡単で――、
「それで、残りの2人はどうするよ」
「まだ状況がよく分かっていないんだ。オレに聞いても無駄だから、他の奴に任せる」
生きていた歳月から考えて、
「俺に分からないから聞いているんだよ」
「
「こっちは誰でも良いよ。というかさ、無駄じゃない?」
「何か見えたのか?」
「もう蘇生はないかな。打ち止め。無理に今の段階で再生させても良いけど、誰を戻してもピンとこない感じ?」
“見える”と言っているが正確には“分かる”。こいつのスキルは直感的なものだ。理由は聞いても無駄だろうが、分かるのは、
いや、もう始まったのかもしれない。
だがこの段階で何かが起きると分かったのは悪くない。
「なら蘇生作業は一時中断だ。今の段階は確か……」
「召喚者は一部を除いて全員ラーセットに帰還しているわ。前回の襲撃と新人の召喚準備、それに南のイェルクリオの動きが活発になったから、基本的には待機ね」
「本当はわたしたちの様な教官組は外の警戒に当たるのですが、今回は蘇生作業という事でわたしと
つまりは他の4人は南の様子を確認に行っているのか。
当時の皆を連れていた俺と違って、教官組だけなら速い。
それに
となるとあっちは問題無いとみていいか。
なら何が有る?
考えられる可能性は、北の襲撃か再び奴が来る事だが、どちらも可能性は低そうだ。
まあ考えても仕方あるまい。
「何が有るか分からないが、全員臨戦態勢で待機していてくれ」
問題が起きるのは――、
『キーンコーン。第17通りの下水作業の補修は完了いたしました。繰り返します――』
「なんか緊張感が一気に吹っ飛んだな。今は下水なんてどうでも良いわ」
「17通りに下水は通っていないというか、通らないねえ」
「でしょうね。
「おっ、おう、おごお」
「そうね。これがつぐみの感じた何か。じゃあ、行きましょうか。
「そうだな。変わっていないのなら、場所は召喚庁か。その場所も変わっていないのか?」
「はい。ずっと同じ場所です」
「符丁って事は、何かの連絡か」
「符丁を知る中で、動ける人間は全員召喚庁に集合する事になっているの。最優先の緊急事項なのよ」
「それはまた大事のようだが、まあ何かあったのは確実だ。それで、ここにいる人間は全員符丁は知っているわけだな? それじゃ行くとしようか」
「君は随分と暢気なのだな。状況としては、最悪すら考えられる緊急招集だぞ」
「ああ、
「フム。こちらも最悪を味わった末に死んだと思っているが……今度詳しく聞くとしよう。あの頃の様に、じっくりとな」
なんか腕を組んで堂々と言っているが、ベッドの中でって事だろうな。
どうやって誤魔化そうかと思うが今はとにかく置いておこう。
とにかく、これで本当に
おそらくここからは、死者の蘇生を考えている余裕はなさそうだ。
「俺たちは行く。
「分かりました。片付けが終わったらすぐに行きます」
「よろしくな。じゃあ行こうか」
俺だけが距離を外して先行しても良いが、状況説明を何度もさせても仕方あるまい。
ついでにそれぞれがどれだけ動けるかを知るために、呼ばれた全員で召喚庁へと向かった。
まあ残るのは
中々豪華なメンバーが揃ったものだ。
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