第628話 別の意味で危険が増した気がする
「オレがいない間に色々とあったみたいだな」
あの外見で一人称はオレかー。
見たところ身長は152センチって所か。
スレンダー体形で、服装からも態度からも女っけは無い。
だが声は間違いなく普通に女性。
服も好みってだけで、男装をしているわけではなさそうだ。
でも一人称は”オレ”。
こんな子が夜にはどんな風になるのか確かに興味が尽きな――、
「あぶねえ!」
避けたギリギリを通過するアーミーナイフ。
やはり常に注意を欠かしてはいけない。
「何て目で見てんの、アンタは!」
く、もう戻って来たか。
「
「そのまさかだよ、彼がクロノスさ。だが正確には、新たに召喚されたクロノス。
「
「
「状況の整理に頭が追い付いてないんですよ。オレは力尽きて動けなくなったところを、奴等に生きたまま食われたはずだ。そこから意識が飛んでいる。死んだんじゃなかったのか?」
彼女の場合、死が
まあ聞く限りの状況だと、それどころじゃなかったのかもしれないが。
「君が死んだのは間違いない。自分も先程説明を受けた所だ。非常に複雑で長くなるし、君に話すのは少々酷な内容だ。もう少し落ち着いてからの方が良いだろう。だが、彼がクロノスの言っていた若い頃のクロノスであり、まだ
なんだろう。
堂々と話している事もあるが、
決して大きな声という訳ではないのだがな。
だがこのタイプは経験がある。
日本でまだ奴らと世界が戦って居た頃、自衛隊の部隊長があんな感じだった。
特殊な話し方があるという訳ではないのだろう。おそらくは本人の覚悟が意識として伝わって来るんだ。
いわゆる共感とかカリスマという奴だが、それを自然に伝えられるには生まれつきの才能でもつか、相当な修練を積んだり並外れた覚悟の元に生きて来た人間くらいだ。
俺も似たような事をしているが、こちらはただ単に力を背景とした威嚇だ。
全くの別物だな。
「とにかく
そういって
しかしケダモノは酷いがあまり反論できない。
というかちゃんと
いつからこんな浮気性になったんだ。恥を知れ。
「なんだか落ち込んでいるところ申し訳ありませんが」
「どうした、
「
うーん、いかがなさると言われても、俺は会った事が無い。実力も性格も知らない。
だけど教官は他にも何人もいるだろう。
その中で名前が出てくる以上は、むしろ俺が口を出す事じゃない。
残りの枠は3人。失敗は許されないのに決める情報は人任せ。
もどかしいが、ここは悩むところじゃないな。
「皆の推薦だ。反対の理由は無いよ」
201年に召喚され、216年に死亡した。
最初の年は
だけど運命とかは感じない。
それ程、けっこうぎっちぎちに詰まっているんだよな。
毎年が――毎月が――毎日が激戦だったという事は簡単に想像できる。
一応記憶を確認してみるが、見た目だと名は体を表すという感じの美少女だ。
男の可能性もある名前ではあるけどな。
それにクロノスのお手付きとは書いていない。つまりは男!
という事で探したけど見つかりませんでした、ハイ。素直に女性で間違いなさそうですね。
しかし追い詰められれば幼女、それも分身体とはいえセーフゾーンの主にすら手を出す俺だ。
こんな美少女に手を出さないとか有り得るのか?
……とも思ったが、記憶のリストを流し見れば結構手を出していない女性は多い。
考えられる可能性としては――も何も、先代の俺は198年に死んでいるわけだから、201年に召喚された彼女に手を出せるわけがない。
馬鹿な事に時間を食った。先入観は本当にダメだな。
まあ性別さえ確定すれば毎度の作業。
細かい事は今更いいだろう。
全員揃ったところで
思ったよりも背は低い。
ギリギリ150センチか。ふわりとしたカールした少し茶色のセミロングに、赤や青、緑のラメが散りばめられている。
制服は俺でも知っているミッション系のお嬢様学校だ。
あそこは高校しか無かったから、彼女がそうであることは間違いない。
それはともかく、背の低さ、
「――貴方が、
脳がとろける様な声を発し、ゆっくりと近づいてくる。
そして気が付いた時には抱きしめられていた。
「貴方は
一言ごとに溶けていくような甘い声。
だけど召喚者に精神関係は効かない。これは彼女の特性ではあるが、それよりも今少し戦慄が走った。
動きが見えなかった
なのに、抱きしめられるまで反応する事が出来なかった。
いや、こうしている今も引き剝がそうとする意識が働かない。
「あ、その子ヤンデレですんで、お気を付けくださいな。こんな所で惨殺体になって転がっていられても、ウチらでは
「てめえ! 嵌めやがったな!」
「人聞きが悪いですなあ。誰も反対はしなかったでしょう? それだけの実力者ですある事に違いはありませんわ」
「大丈夫です。
い、いや、俺には
そう思いつつも体が動かない。彼女の抱擁から抜けられない――抜けようという意識すら働かない。何だこれは。
しかも今更だがスキルを発動していない。
というか彼女はスキルを使うとこの辺りが消し飛ぶ。
「さあ誓いのキスを」
「それをすると彼女の所有物とみなされますからなあ。注意はしておいたほうがよろしいですわ」
「他の女性を見たってだけで6人刺し殺されていますよね」
「お前らなんでそんな危険人物を紹介した!」
「
「はーい。お久しぶりですわ、フランソワ教官。もちろん冗談ですよお。でも、受けてくださっても――」
その足元に頭上から飛んできた2本の剣が突き刺さった所でようやく解放された。
というより、急に動けるようになったな。何だあれは。
「大丈夫ですか?
「ああ、助かったよ」
「助かったとは酷いですわ。でも、少しは脈ありって所かしら」
両手を後ろに回して前かがみ。
その仕草だけで振動がドクンと跳ねる。
「
「フランソワ教官のそれは冗談じゃないから怖いですわ。では、教官に状況の説明をお願いしますわ」
「それが良い。こちらへ」
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