第624話 あの一家全員そうか
「さて、残りの二人の話も聞きたいが、そろそろ今日はお開きだ。どのみち、ヨルエナにこれ以上連続させるのは色々とマズイ。10日くらい休んでもらうとして、各自残りの2人と
「13人の余裕があるところに5人蘇生して3人も確定、更に2人も決まっているとなると、あと3人しか選べませんなあ」
「それに
「結構悩む数ですね。沢山の方にお世話になりましたし、それに全員を戦闘系で固める必要は無いのですよね?」
「ああ。
「
艶めかしく腕に
「
「確かに、久々の生を謳歌するには良いですわなあ」
「
なんとなく罵声が飛んできそうな気もしたが――、
「それが最短なのなら、待つしかないわね。だけど失敗は――分かっているわよね」
「十分にな。では解散だ」
その日の夜は
何か言われるかと思ったが、『そうか……全て任せてある』と言っただけで何事も無し。
拍子抜けするというよりも、生気というか気力が感じられない。
本当に、やるべき事は全て終わったという空気を全身から滲ませている。
だが悪いが、最後にひと働きはして貰わないといけない。
主力中の主力にして全体の柱である事に変わりは無いのだから。
話が終わった後、外で待機していた
積もる話は沢山あるのだろう。ここは邪魔しちゃ悪い。
ミーネルが回復するまで9日。
俺がクロノス時代なら1ヵ月以上は休ませるところなのだが、それが出来ない点が悔しい。
何と言っても見えないリミットが怖い。
準備に入念に時間をかけ、ホワイトな体制で完璧な状況を作り上げる。
そして倒した結果、目覚めの時まで戻りましたはもうシャレにならない。
またアレをやるのか? 冗談じゃないぞ。
これまでに日本に戻した連中を何人か再召喚すれば戦力にはなるだろう。
だけど全員、問題児だらけだ。
あれじゃダメだからここまでやって来たんだよ。
「ふう」
溜息をつきながら、頭の中にある召喚者リストを流す。
もう何度もした作業だが、やはり目新しい人材はいない。
スキルも当時の大神官が決めた命名と最初の頃の効果は書いてあるが、スキルは成長して変化する。
初期のメモなど、10年や20年生きれば全く役に立たない。
ただの水中呼吸と書いてあるが、実際にはすぐに初見殺しの凶悪なスキルになっている。
もっとも、それが効くのはまだ若い召喚者達だけだという事も分かった。
ベテランの対人慣れが凄すぎる。
確かに
あのレベルだったら山ほどいる。
では
考えるまでもない。やっていたのは蟲毒だ。
最終的に1000を超える数を召喚し、その中から長期間生き残った人間が弱いわけがない。
今更新人を蘇生させる意味はないだろうな。
「よし、やはり当時のメンバーに聞こう」
結局それが一番早い。
今の俺に分かるのは、召喚者の名前とスキルの名称。後は召喚年と死亡年くらいしかないからな。
□ ※ □
……ではあるが、その間何もしないのはダメだ。
先ずは
当然ながら、休憩日を取ってダークネスさんの元へも行った。
これは必ず伝えないといけない事だからな。
召喚者の村は、始めて来た時とまるで変わっていない。
そりゃそうか。ほんの少し来るのが早まっただけだ。
「入るぞ」
先輩である自分に何と挨拶すればいいのか悩んだが、いや別に考えるまでもないな。
俺自身が、挨拶などどうでも良い人間なのだから。
「来たか。ならば
「前から聞こうと思ったのだが、その厨二的なセリフはいつ身に付いたんだ。最初から普通に話して普通に教えてくれればよかったのに」
「その様な事をしたら、計画の意味も目的も虚空に飲み込まれ消えゆくだけだろう。全ては来るべき終わりのため。それを成す為に我は再びここに立ったのだ」
椅子に座っているけどな。
双子はちゃんと両脇に控えている。
もうセーフゾーンの主が作ったコピーである事は分かっているが、それでも見た目は幼女。
あの頃は子供の年齢など正確に予想する知識は無かったが、こうして改めてみると6から7って所か。
正気を失っている時とは言え、よく手を出したな。
ある意味正真正銘の勇者といえるだろう。悪い意味で。
ただこの血は全く同じものが俺の中にもある。
親兄弟だとかじゃない。同一人物だ。
日本にスキルも悪影響も無いからそんな心配は無いだろうけどね。
でも取り敢えず酒は控えておこう。正気を失った自分が怖すぎる。
しかし当時はさほど気にもかけなかったが、この白いレースの下着が透けている黒い霧状のゴシックドレスのセンスは良いな。
そう思うのは、俺も色々な経験をしたからか。
アイテムではないから双子の能力か。やっぱりあの頃も、頼めばこの服装になってくれたのだろうか?
「以前も言ったが、やらぬぞ」
「そういう目で見ていたわけじゃねえ! それより、
「遂に正義の執行が果たされるのか。
「だからそれやめろ。なんか
「
懐かしい? ああ、日本にいた頃の事か。
あの当時はちゃんと時間が進んでいたしな。
けれど――、
「アイツは死んでいたのだろう?」
「その通りだ、俺よ。そして我は、奴の残した日記を渡された。本来は家族がもつべきものであろうが、我や
「そうだったのか」
俺の知らなかった一面だ。
それほどまでに、俺たちの事を考えていたのか。
「もっとも、基本的にはいかに我と奈々を引き離して先輩をものにするかの計画書のようなものだったがな。家族も持て余したのだろう……ククククク」
うわあ……。
「その後は向こうの家族とも少し交流があってな。それとその日記の影響であろう」
「なにが?」
「ボケているのか? 我の口調の話であろうが」
ああ、だめだ。今納得してしまった。
最初から、家族ぐるみでこんな感じだったんだ。
つか父親は議員で何度もテレビで見ているが、普通の人間だった。
だけどそれは外での話。家の中ではこんな感じの家族だったのか。
外面を知っているだけに、想像したくねえ。
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