第618話 最悪の三人という名は物騒だが
「そーれーでー! この
「酷いですなあ。人を見かけで差別するなんて、
「俺は人間と他との区別は付ける主義なんだよ! 地球とこっちでどれだけの化け物を見て来たと思っているんだ」
こちらはボロボロになった体は外し、向こうは薬で治療されている。
「それでどうなんだ?」
「戦ってみてどう感じましたん?」
「カポエラ使いのオーク」
「まあ当たってますなあ」
「当たっているのかよ! 差別は良くないとか言っていなかったか!?」
「いえ、力とかそういった問題の話ですわ」
「
「本当にそうなんです。確かに初めて見た時には驚きましたのですが」
フランソワがそういうのなら、本当に召喚されて来た時からこの状態だった事になる。
つまり、この格好で日本で暮らしていた訳だ。
……だめだ、医者としての前に人として納得できない。
「肌が緑色なのは仮装だよ。コスプレって言った方が良いのかな?」
「その牙とかもか? それに洗えば落ちるのか?」
そんな事は無い。ボッコボコに殴ったが、地色が出てくる様子は最後までなかった。
確かに骨格は人間のそれではあったが、血が赤かった事に驚いたくらいだ。
「それなんだけど、どうも召喚した時にはボディペイントをしていたらしいのよ。だけどこちらに召喚された時に、それが皮膚の色として定着してしまったらしいわ」
確かに服や思い入れのある物は一緒に召喚されて……あ、そうか。
服も実際にそれを着て寝ていた訳ではない。あくまで、こちらの世界に来た時に本人の考える自分がこちらで再構築されているんだ。
こいつの場合も似たようなものか。多分ピアスや服は装飾品として判断されたが、ボディペイントは塔が”本人の体の一部”と認識してしまったのだろう。
今までそんな事は無かったが、この塔もまだまだ謎が多いからな。
「それで、人語を介さないのはどういう事だ?」
「ちゃんと普通の人と同じだけの知能はあるよ。最初は意志の疎通も難しかったけど、
自信がねえなあ……。
「しかし知能があるなら人語を話せ」
「こっちの方が楽なんだって。何と言うか、人見知り……って言うのかな。
普通の人間の周りには絶対にいないわ。
「その時は私もいたわね。完全な真実でもなかったけど、完全な嘘でもなかったわ。実際に地球でもあんな感じなのじゃないかしら」
「全く想像できないが、とにかく教官組であった事には違いないんだ。人としての知性があるという事は信じよう」
だがスキル無しで俺とやり合って負ける点はマイナスだな。
それはそれで勝てなかったらどうしようも無かったんだが、彼の真骨頂はスキルの方か。
「まあ取り敢えず、教官組は後一人か。
「もしかして好みだったのですか? いえ、その、
最初のセリフでフランソワに睨まれたせいか、
最期の方は召喚者じゃなければ聞き取れなかったぞ。
確かに普通の女性だ。一応資料に全部目を通した時に全員頭に入れてはあるが、それはスチール写真を撮った様なものだ。いざ個人を特定して思い出そうとすると、頭の中で膨大な作業が必要になる。
だが彼女は2つの意味で最初から頭に刻まれていた。
一つは“全知”という大層な名前のスキル。
そしてもう一つは、本体との戦闘回数6という数字だ。
普通は0。有っても1、そしてそのまま死亡が普通。基本的に、本体と戦って生き延びた奴は滅多にいない。
当然最古の4人や現存する教官組も調べたが、
そもそもが、あの取り巻きの間隙を縫って奴と戦う事自体がいかに困難か。
更には生きて帰っただけでも立派という評価だ。
その中で、本体と6回戦って生存した。それだけでも驚愕に値する数字だと言える。
ちなみに
はっきり覚えていなかったのはその点が理由だが、奴等との戦いに参加しなかったわけではないだろう。
ただ本当に、本体に辿り着くだけでも至難なんだよ。
「彼女にはぜひ会って聞きたいと思っていた。俺的には、元々リストの中から何人かピックアップしていたが、彼女はその筆頭だよ」
「確かに、その、
「先代だからって、無理に取り繕わなくても良いわよ」
「先代?」
「資料に無かった?
うわあ。4年前だと、すっかり引き籠りが板についている頃じゃないか。
元々戦闘以外の分野を買っての引き籠りだったのだろうが、よく引っ張り出したな。
「10ってキリが良いじゃない」
「そんな理由で!?」
なんか
こっちに来て初めて会った時にあんなに荒れていたのは、それが原因なんじゃないのか?
まあ決めたのはどうせ
一応今度は蘇生する前に聞いておくが、どんな人間だったんだ?
「「「……」」」
あれ、全員黙ってしまった。
何か訳アリか? というかこれさっきも……そうだ、最悪の三人とか言われていたな。
「彼女はそう、なんとなくで生きている人ね。なんとなくで行動して、なんとなく戦って、なんとなく戻って来る。教官組にしたのも首輪をつけるためだったけど、あまり効果は無かったみたい」
少しの沈黙があったが、
性格的にちょっと難があるみたいだが、その程度は今更全員だ。
「石を投げられたいの?」
「そういう所だ」
だけど今の話程度であれば十分に許容範囲。
クロノスのお手付きとも書いていなかったから、そっち方面のトラブルの心配はない。
なのになぜみんな黙る。
「力関係はどうだったんだ?」
「彼女は槍使い。スキル無しで何度か手合わせしたけど、
この子そこまで強いのか。
強い事自体は予想が付いていたが、俺はてっきり本体とやりあえる
やはり実際に聞いてみないと全く分からないものだ。
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