第601話 やはり戦力が少なすぎる
その後も休憩を挟みつつ黙々と作業を続け、それなりに満足できる資料は集まって来た。
「これで大体のデータは揃って来たな。そろそろ選別をメインに考えよう。どうせ召喚できる人数は多くないからな。最終的には精鋭を求めたい」
「今の段階で召喚できる人数は多くは無いですからなあ」
「そうね。私たち4人、教官組が6人」
いわゆる地上の10人か。
「それにラーセットで行動している召喚者が9人、探究者の村が9人。それに
今更ながら、俺とダークネスさんはちゃんと別人で計算されているんだな。
「しかし50人しか余裕が無いのに、よく探究者の村に9人も派遣できたな」
「隠しても仕方ありませんが、どうせ始末対象でしたからなあ。それを先代の希望に沿う形で保護して、後はこちらも黙認した形であります。もちろん普通の召喚者であれば、そんな遊ばせるような事などしやしませんが」
「取り敢えずノルマさえ果たせばいいと」
「その形が一番納得させやすかったですからなあ」
平然と言っているが、普通ならとっくに全員の処分は確定か。まあ
ただあそこのメンバーは、フランソワや
彼女らと同じ年月を生きれば、案外近い所までは成長するのかもしれない。
ひたちさんは違ったが、護衛みたいなものか。
ただそれでも9人は決して少なくはない。
それだけ、日本への帰還は全員が心に秘めた宿願であったのだろう。
あれ?
補充する13人は犯罪連中が8人。俺たちの中からそいつらに加わった2人。それに初日に帰る事になったので、秘かに俺が日本に帰した3人か。
それに現在活動している9人を追加するのだから、何だかんだで今までは22人で回していたんだな。
しかも殺し合い推奨で入れ替えも激しい。
俺の時よりもラーセットが貧しい感じはしたが、その辺りも確実に影響しているな。
改めて考えてみると、今の段階で行動しているのは
ほとんど知っているメンバーだな。
単なる偶然……もあるだろうが、それだけの実力を秘めていて、生存性に優れていたわけか。
このメンバーは、ただ生き残っているというだけで必ず戦力になる。
ただ以前の記憶と経験が上書きされた14期生を別にすれば、やはり最長で4年。
主力として本体との戦いには連れて行くのは無理か。
そもそも14期生でも厳しい。やはりそれ以上が必要だ。
「選別出来るメンバーは13人までなんだよな。それにその中から
「気持ちは嬉しいですし、確かに
見透かされていたか。
まあ当然だろう。こちらの世界で死んだ人間を帰せると分かった今、やらない理由がない。
ただ今は悠長にそんな事をしている余裕はない。
もうとっくに奴との競争は始まっている。しかも大幅に出遅れている状態でのスタートだ。
そして俺が負けたら終わりだけど、当然俺が最前線なんだよな。厳しい……。
まあそれは良いとして――、
「お前なら
「公私混同はしない主義だと言ったでありましょう」
「ならそれでいい。ただ
「確かに過去にまで遡って対象の動きを把握するスキルは便利だと思います。ですがどうでしょう。
「大当たりだ。だが短期決戦とは、すぐ初めてすぐ終わりではない。そうだろ、
「そうね。確かに始めてしまったら花火のようなものよ。決着がつくまでは止まれない。でもその前準備は、それだけに確実性と正確さがより求められるわね」
「そんな訳で、
「それに意味はあるの? 貴方がクロノスであった時の話は聞いたけど、
「奴と出会った位置と時間は俺が把握している。
「成功するのでしたら何人もおりますが、クリーチャーは嫌ですわなあ」
「その時は容赦なく倒せ。日本にはちゃんと帰してやる。それにまあ、そうならないために色々とテストしているんだ」
「はっ! まだまだ不足としか言いようがないがね」
こいつが完璧主義だから――と言う訳では無く、俺だって不安はあるさ。
「こいつの首を斬り落としてやりたいのは本音ですが、あえて言いません」
しっかりと言っていますよ、フランソワ。
まあ後でなだめておこう。
「ですが、確かにまだまだ足りないのは事実です。何より、肝心な魂と肉体との結合をどうするかが全く分かっていませんから」
「確かにそれはあるんだけどな。塔に傷でも何でも記録が残っているのは幸いだ」
おそらく、ヨルエナなら出来うる。彼女は俺が見た大神官の中でもトップクラスだ。
シェマンたちが劣っていたとは言いたくはないが、これはピラミッドの問題だ。
この時代は、もうアディンの血族が結構いる。その上澄みの最高位が今の神官長だ。
大勢が亡くなった当時と比べれば、差が出てしまうのは仕方がない。
ミーネルも、当時大量に残っていたアディンの血脈の中でも最高の力を持っていたはずだ。
だからこそ、塔だけからの召喚と言う無茶が出来たわけだしな。
「よし、もう少し実験をしよう。次第に上げていくが、ある程度強い世代になったら一度止めるとしよう。その境界はそうだな……
「かなり不安ですなあ。取り敢えず手ごろな人間で何人か試して、受肉させてから改めて帰すというのはいかがでしょうかねえ」
「冴えているな。そうしよう。じゃあそろそろヨルエナと練習の頃合いか。多分彼女も、一発目から成功するとは思わないだろう」
人の命を実験台にする。
我ながら酷い事を言っていると思う。
だけどまあ、失敗しても日本に帰るだけだし問題はないか。
最初の内は……成功しても日本に帰す事になりそうだけどね。
「ただ召喚の儀式は彼女一人ではありません。サポートや
絶対にダメです。
「仕方ない、ヨルエナだけをこちらに呼ぼう。塔はあるし、魂自体の分は俺が負担するしな。それでも何人いけるかは、彼女の実力次第か」
「どうでも良いわ。
物騒な話だがそれ以前に――、
「
「当然ですわなと言いたいところですが、残念ながらそうもいきませんわ。任務で離れている時に召喚され、そのまま会う間もなく亡くなった方もおりますからなあ。ウチは外での任務も多かったですから、案外知らない人は多いですわ」
「と言う訳だ。逆に引きこもりのお前の方が覚えている人数は多いだろう。だからお前は補佐。ちゃんと途中も付き合ってもらう。俺はその間に今までの召喚者リストも取って来よう。誰がどんな人間だったかや、これから日本に帰したかを全部記録しないとな」
「仕方ないわね」
さすがに面倒だとは言わなかったな。
一時は疑った時もあったが、間違いなく彼女は
いやもうちょっとお淑やかにというか、丸くなってくれても良かったんだけどな。
もう相当な歳なんだし。
「殴られたいの?」
「遠慮しておく」
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