第572話 どうすればいいんだ
いや、待て。ちょっと待てよ。
そもそも、あの二人を引き合わせたのは誰だ?
言うまでも無く俺だ。
だが俺は、忙しくてそれ以来は放任していた。
フランソワとは何度か肌を合わせたが、
状況次第では不快にさせてしまうからな。
しかしそんな中、
感謝するべきか? それは当然だろう。俺が出来なかった事をしてくれたのだから。
だけど本当にそれだけか?
先輩を炊きつけたのは誰だ?
昨夜のあの状態をセッティングしたのは?
なし崩し的にあんなアブノーマルな状況を作ったのは? はい、言うまでも無く
『ある意味……一番厄介だよ。いや、少し状況は変わったか。今までの彼女には何の希望も無ければ絶望すら無い。ただ状況が楽しければそれで良かった。私らが殺し合いをしたとしたら、互いを癒しながらいつまでも楽しみ続けるだろう。最後の一人になったら、その体を刻みながらどんな気持ちかを聞いて来るだろう。もし全ての決着が付いたら、この世界の人間を生きている限り殺して回るだろう。今の彼女は、そういった性格だ。いや、だっただな。色々な出来事が彼女を変えてしまった』
実際、あの頃の
隠しきれないどす黒いものが、笑顔の裏に垣間見えた。
だけど今は違う。彼女は俺と関係を持つうちに、次第に黒さが無くなってきた。
今までの絶望だけの世界から、希望を見出した――そう考えていた。
だけど違う。
黒いかどうかじゃなくて、元々こいつはこういった性格だった!
よく言えば不思議ちゃん。だが実態は、面白そうなら何でもやってみる
黒さが漂白されたからなんだというのか。
そもそもの性格を忘れるなど何たる失態。
こいつは最初から全部、計画していたんだ。
だけど塔の改良まで操る知識は無いはずだ。
取り敢えず二人の仲を仲裁した。
今までそれをやってこなかったのは、俺が手を付けていなかったから。
逆を言えば、俺が介入した事で面白さの匂いを感じ取ったのだ。
もしかしたら、アイディアの一つとして提案くらいはしたかもしれない。
だが最古の4人の一人が提案すれば、それは実質命令だ。
最優先で、出来るかどうかを検討したに違いない。
そして理論は出来てしまった。
塔も改良してしまった。
後はもう、先輩を誘導するだけだ。
それだけで、物事は勝手に動く。
何せ人生経験が違う。その位は読んでいたっておかしくはない。
そして決定打をかました時点で打ち明ける。後戻りが出来ない所まで追い詰めて。
「どうかしましたか? 顔色が少しよろしくないようですが」
そう言いながら、着物の帯を器用に解く。
「もう少し、楽しんでいきましょうや」
いやそれどころじゃないのだが……。
と言いつつも、誘惑に勝てない自分が恨めしい。
結局この件に関して
全部状況証拠でしかないし、どれも究極的には俺のためだ。
ただそこに
今更ながら、
単体のこいつはやっぱり危ない。
悪意が無いだけに逆に怖い。その点は、本当に変わらないのだな。
結局4ラウンドの間があって、
ただ特に今さら何を話すわけでもない。
ただ単純に、予定通り20数日ほどラーセットから離れるという話をしただけだ。
本体に関しては、確かに疑念は残っている。
撤退させる事には成功したが、奴はこちらの動きを思考し、読むようになっていた。
当然ながら、油断させてすぐに攻め込んでくることもあり得る。
しかしそれを警戒する必要は今の所ないだろう。
もし仕掛けて来たらただの馬鹿だ。もはや何の苦労も無い。
俺と
懸念だった眷族対策に光明が見えた今、怖いのは本体だけなのだから。
そんな訳で、俺はみんなに挨拶をしてから探究者の村へと跳んだ。
少しほっとした感じはあるが、問題を先送りにしただけだな。
というか、考えてみえれば教官組に命令を出せるのは最古の4人のみ。
それが
何てのはもう推理でも何でもない。絶対に
ラーセットが襲撃された時点で、もう昨日をXデーと決めてあったのだろう。
人間関係まで完全に把握されている。まああそこまでハッキリと態度に出ていれば当たり前だが。
先輩は気が付いていないようだけどね。
ただ
だけど俺だけを見て来た先輩は、自分への好意に鈍感なんだよなー。
今までなら、とにかく日本に帰るまで。そこから先は今まで通りだと言えた。
だけど今はな—……よし、この事は最後まで黙っていよう。
むしろ今話したら、先輩がパニックになりかねない。特に夕べの事で。
それにまだ理論上の話だ。
実際に日本に帰って時間が動くまで、全ては机上の空論だ。
でもなあ……フランソワと
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