第541話 浮ついた心より寂しさを感じるな
全く、
クロノス時代は真面目なやつではあったが、こちらでは娯楽に飢えているようだった。
それも命を賭けるような危ない娯楽にだ。
しかし……あれ?
「
「
くすくすと含み笑いをされるが、
「嘘じゃねーよ。ただこの世界は2度目だって話しただろ。その、なんだ……以前にはそれなりに付き合いがあってだな」
「それはそれは。まああの子はチョロいですからなあ。百戦錬磨の
「人聞きの悪い事を言うな! 大体、彼女とそうなったのはクロノスになる前。まだ追放されて何も判っていなかった頃の事だよ」
「それは最初から素質があったと言って良いのやら、それとも
どっちに取られても不名誉しか残らねえ。
とにかく――と、立ち上がった瞬間に、彼女も立ち上がって腕を掴まれた。
「何の用事かは知りませんが、今はそれどころでない事くらい自覚してほしいですなあ。ウチがここに来た意味、きちんと理解しておりますん? それとも
「いや、すまない。それは勘弁してくれ」
結局その日は後ろ髪を引かれる想いで
あの時どうするのが正しかったのかが頭の中をぐるぐると回っていたが、答えなんて出るわけもないまま到着してしまった。
しかし何だろうな、ここは。
しかも平屋。
あの4人と同じく日本家屋風だが、流行りなのだろうか?
確かにあちらこちらに似た家が建っている。
案外、木を隠すには森の中というやつなのだろうか。
ただ入り口の左右に白と黒の、俺よりも大きな招き猫が置かれ、
というかこれでいいのか、最古の4人。
居場所を誰も知らない
確かにもうこの世界で
他の召喚者が見ても『
まあこの世界に長く留まっている召喚者自体が少ない訳だし、そのまま謎の人のまま終わっているのだろうが。
でもそれはそれで、相当に寂しいのではないだろうか……。
中は何というか、”おばあちゃんの部屋”という感じだった。
ここでたった一人で生活しているのか。心を許せるような友もなく……。
そして壁には
もう推理するまでもない。彼女を除いて、全員この世にはいない人間だ。
その中には
全員学年は違ったが、召喚される前からの知り合いだったと聞いている。
こちらの世界でも、同じか近い時期に召喚されたのだろう。
それと
そして同時に、
さらに奥にはもう一部屋あり、ふすまが開いたままになっていた。
そしてそこには布団が敷いてあり、フランソワがニコニコしながら正座待機している。
前空き型のベビードールに紐パン。両方白だが上はフリルたっぷりのスケスケなのが可愛らしさと艶めかしさを演出している。
もう準備万端、整っているという状態だな。
今までのしんみりとした感情が心底吹き飛んだぞ。
「おい」
「まさか今の状況を、ウチ一人でどうにかなると思ったのでありますか? さすがに壊れてしまいますわ。その点は何度か言ったでありましょう? 本当はもう何人か呼びたいところですが、実際のクロノスの夜の生活が実に淫らで激しいものだと知る女性の召喚者は、もう3人しかおりませんからなあ」
だからその言い方は止めろ。
あと一人は
いやいや、もっと自分を信じろよ。
……考えていて虚しくなるのはなぜだろう。
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