【 本体 】
第526話 先行する二人
……結局、誰も帰らない事になった。
たしかに俺としては先輩と
でもそうすると
ついでに『お前は生きて戻って来るな』とか言いそうだ。
だけど本体戦では
それにあまり危険には晒したくはないが、例の凶悪な神罰はともかく俺や
先輩の”
だけど失敗したらすべてが終わる。
そして、今の事態は俺の想定外だった。
まだ教官組が調査中という事だが、奴が強くなっているのはもう確実だ。
俺も早いうちに、一度見ておくべきかもしれない。
とにかくそれまでは、皆の帰還は保留しても良いだろう。
❖ 〇 ❖
ラーセットでは
大変動が迫っている事は知っているが、その点は
彼女のスキルは“虫の知らせ”
レアスキルの中でも特に珍しく、誰かが命を落とす行動をとっていると、その先に訪れる死を察知する。
原因も時間も分からない所が難点だが、おおよそ10時間前にはおぼろげながら反応がある。
その頃はまだ行動パターンに不確定要素が大きいが、死の運命まで残り1時間ともなればもう確実だ。
逆に彼女が安全だと言えば、10時間はほぼ安全と言えよう。
もちろん、状況次第で突発的に訪れる死もある。こんな世界だし当然だが。
ただそれも、詰んでいればもっと早くに発動し、抜け道があるのならおぼろげな危険として反応。
そしていざその状況と向かい合えば、どんな選択で死ぬのか――逆に言えばどうやったら生き延びるのかが分かる。
その副産物として、やりたい事が達成できるかもある程度把握可能だ。
それを利用して先ずは地上を行き、
さすがに直接
その点は驚愕に値する。
何せ
彼のスキル速度に特化したタイプ。普通の人間では影を捉える事すら出来はしない。
実際、彼は
当然、その“全てお見通し。そしていつでも殺せる”というメッセージを
そうでなければ、もっと迂闊に行動して人生を終えていた可能性が高い。
当時の
まあそんな事よりも――、
「いい加減に速度を落としたまえよ。わたしを殺す気かね」
とっくに限界を超えているのは明らかだ。
「あーすまねえな。そろそろ休憩するか」
それでもここまで付いて来られたのは、一応は召喚者として成長しているからだ。
ただそうはいっても、
本来はペアを組むような相性ではないが、この二人が組むことは多い。
単純に、
そんな彼を死なないようにするお目付け役が
「あと10分走っていたら、わたしはここで倒れ
「大げさだろう」
「なら試すかね? 今のわたしであれば、ダンゴムシにさえ負けるであろうよ」
既に横になり、頬を地面に付けながらスライムのように脱力している。
「はいはい。今後は気を付けますよ」
「君はそれを何回言ったか覚えているかな? 鳥は3歩歩くと忘れるというが、君も似たようなものだと感じるよ」
「俺が鳥なら飛ぶから忘れねーよ」
鳥も結構歩いているのだよ。大体意味からして根本的に違う――そう言いたかったが、もう突っ込む気力もない。
取り敢えず水分補給を済ませた後は軽食を取り、今後の事を考える。
まだ死の感知は無い。だがそれとは別に、何か強大なモノが近くづいている予感はひしひしと感じている。
「分かっているとは思うが」
「いざとなったら俺が奥まで引き付ける。その間にお前は報告に戻れ」
言いたい事が真逆なのだが、この男はまるで理解していない。
大体、自分が逃げて本当に逃げ切れると思っているのだろうか?
だが性格上、言っても聞きはしない。それは毎度の事ではあるが、今回の任務はそれが通じるほど甘くはない。
何せもし奴だとしたら、相手が相手だ。
クロノスたち最古の4人でさえ歯が立たなかった相手。
話にしか聞いてはいないが、どうしようもない事は確定だろうなと思う。
「
「あ、やっぱここにいたか」
突然かけられる声。
いつからいたのか?
いや、たとえ休憩中とはいえ、この気配に気が付かないほど迂闊ではない。
召喚者? 確かにそう感じるが、とても新人の発する威圧感ではない。急速に近づいてきたのはこいつか?
確かに間違いはないとスキルが告げている。だがまだ相当に距離はあったはずだ。
目を見る限りではスキルは発動していない。だがそれは“今は”というだけの事。
スキルでここに来たと考えるのが妥当だろうが、そもそも人と考えること自体が間違いだ。
そもそも服装が何処からどう見ても高校の制服だが、見たところ傷一つない。
しかし素材はどう見ても自分たちの世界の物。ここまで来ると、怪しさ満載過ぎて何処から考えていいのか分からなくなる。
見れば
目にスキルの紋章は浮かんではいない。体も自然体。ただ立っているだけににしか見えない。
だがこの時点で、完全な状況で戦闘に入る頃が出来る。
人間であれば、その動きを察する前にこの世と決別しているだろう。
こちらはいたってシンプルだ。敵意を感じたら殺す。そうでなくとも、先ずは拘束する。そんな感じだろう。
だが――、
「そう警戒しなくても大丈夫ですよ。話くらいは聞いていると思ったんですがね」
見知らぬ男は、ここがまるで現代の道端であるかのように平然と声をかけながら歩いてきた。
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