第514話 俺たちの時間はどうなっているのやら
「大体事情は分かった。思ったよりも苦労して来たんだな」
「まだまだ全然話足りない位の事があったさ。とにかく俺の時間はバトンを引き継ぐようにぐるぐると同じ時間――だけど別の世界をループしている。いったいどのくらい続いているのだろうか分からんが、何人もの俺がクロノスとなり、奴を倒す為に知恵を絞り、今は俺の番という訳だ。そろそろ、この因縁にも決着をつけないとな」
かなり端折りまくっていたが、もう夜が明け始めている。
というか、ここは4000メートル級の壁に囲われているからな。実際には夜明けどころじゃない。
「しかし、その話の通りならかなりどうしようもないぞ。本当に倒せるのか?」
「不安だらけだがやらない訳にはいくまいよ。時間を置いて準備をしたいところだが、いつまで戻るかは不明だし」
「ん? 召喚されたところじゃないのか?」
「そこが限界だが、いつでも戻れるって訳じゃない。未来というか過去というか、とにかく奴が戻った以上の時間を相当に超過しないと過去へは戻れない。つまりは、今のアイツはもう何年かは時間を戻れないんだよ」
「正確な期間は分からないのか?」
「まるでダメだな。どんどん間隔が長くなったというだけで、法則性は無い。だが奴との間に確かなつながりを感じる。
「なかなか複雑な状況だな。ただなぜ俺がこうしてまたラーセットに戻ったのかと、
「ちゃんと聞いていたじゃねーか」
「暇だったから少しだけだ。俺としては
あの時は
だがあの時の
「戻った人間の事だろ。俺も実際どうなっているのかは分からんが、やはり地球の時間は動いていないって事だ。戻った人間が、戻った時間から召喚される。
だがそうなると、やはり疑問だ。
同じ人間が召喚されてこない事は?
死んだ人間が召喚されてこない事は?
まあ仮説は立てられる。それは本体が魂のようなものを食べていると聞いたからだ。
地球の時間はラーセットからすれば、やはり動いてはいない。
この時点で召喚されて来るのは5月28日からだけだ。
そして同じ人間が召喚されてこないのは、全く同じ魂のようなものがあるからだと考えられる。
そのせいで、召喚されてきても具現化できないんじゃないかな。
けど俺とクロノスは同時に存在できるし、多分あの時の
魂とは遺伝子の様に定まったものではなく、生き方や経験によって変わっていくものだと思うから。
予想でしかないけどな。
というか、その理論が通じるなら29歳になった
つか人生経験の違いが魂に影響御与えて別人になるのなら、29歳の俺だって召喚されてきても良さそうな――あ、無いわ。他の誰にあっても俺だけは無い。
俺の魂は、この時間帯に永遠に留まり続ける。今はダークネスさんだな。
だけどそれだと死んだ人間がまた召喚されて来ない問題は何も解決していない。
地球の時間が止まっているのなら、こちらに魂が無ければ召喚できるはずだ。
だけど現実にそんな例はない。
しかも、俺が日本に戻った時点でラーセットに召喚された人間は全員死んでいたんだ。
だけど、俺がクロノスになったらまたその人たちが召喚されている。
なら今、死んだ人間を召喚出来ないのはなぜだ?
まさか幽霊になって
それに、奴を倒した後の俺は何人も日本に帰しているだろう。
だけどそういった人間はいない。いたらいきなり目覚める奴はもっと多い。
だけど話を聞く限り、そんな様子は無い。
まさか、そもそも分岐自体をしていない可能性……は、だからないんだよ。
どれほど強大でも、たった一つの惑星の小さな生き物に過ぎない。
それが宇宙全体の時間を戻すなんてさすがに馬鹿げている。
やはり意識だけを過去に逃がし、俺が引っ張られているわけで……。
ただ以前にも考えたが、最悪の可能性として奴が過去に戻るたびに俺自身も過去に戻されている可能性はある。
何せ召喚者の時間はあってないようなものだ。それくらい簡単にやってのけるだろう。
そうなると俺は、倒した時点で皆の前からいなくなる。過去に戻るなら当然だな。
しかしそうなると、日本に戻せる人間も消えてしまう訳だ。
だとしたら、クロノスとして召喚してしまった人間は全員ラーセットで生涯を終えるのか。
召喚すると機に覚悟は済ませた。だけど、罪悪感が消える事は一生ないだろう。
だが――、
「この件に関しては、いくら考えても正しい答えなんて出ない。とにかく死んだら終わり。それだけが重要だ。まあそれは俺が召喚の塔を作り替えれば解決する問題だけどな。それまでは死ぬなよ。というか、お前は死んでも良いけど
「言われるまでもないが、お前が死んでも俺は気にしないぞ」
まあ、お互いこういう奴だよ。
互いに殺し合ったのは……特に
召喚者として時間の感覚が狂っているとかじゃなく、本当にたった数日前の話だ。
だけどそれを気にしている様子は無い。やっぱり、帰る過程でスキルとその影響は消えるのだろうな。
ラーセットの記憶も消えそうなものだが、それは時間が動いてからって所か。
まあ細かい事なんて今はどうでもいい。何だかんだで、俺たちは上手くやっていけそうだ。
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