第513話 やっぱり最初から起きていやがった
楽しい歓迎会が終わった後、俺たちと一緒にいたメンバーは全員召喚庁に部屋を与えられることになった。
メンバーは俺と
他にも遠巻きに見ていた連中は多いが、声を掛ける勇気を持ち合わせる奴はいなかった様だな。
まあ
男連中はただ遠くで嫉妬の炎を燃やしながら見ているだけだったし、女性は女性で一部の親しい人間を含めて全員が壁を作っていた。
それでも
それに俺が聞いた話だと、以前にも同じことがあったんだよな。
あの頃とは
というか、アイツらのチームは奴がリーダーで、確か召喚期間も2年ちょいだったか。
その程度では逆に力の差が理解出来ないのも頷ける。
そして部屋分けだが、2人ずつの部屋になった。
個室を要求すれば用意されただろうが、それは危険だ。
だからと言って6人部屋を用意させたら俺は腹を切らねばなるまい。
そんな訳で、まあ無難にこうなったわけだ。
部屋割りは言うまでもなく俺と
女性は4人部屋でも良かったんだけどな。
ただ、先輩は
それでも、もしあの二人が一緒に組むのであれば、女性は4人部屋に変える事も検討しよう。
「それで、隣の様子は分かるのか?」
「吐息までバッチリ聞こえる」
「俺も似たようなものだな」
正確には、俺は壁の視界を外せば丸見えだ。もうそこまで出来る様にまでなった。秘密だけどな。
というか、この会話はもう変質者のそれである。
だがとにかく二人の安全を確保したら、さすがに気配を感じ取る程度の事しかしないさ。
それに、
「なあ
「いつのと言うと、候補が色々あるのか? その辺りの事も詳しく知りたいが、先に俺の方だな。こちらはお前に負けて、日本に戻された……ハズだったという所だ」
「その先の事は知らないのか!?」
「多分、お前は俺の知らない事を色々と知っているんだろうな。俺からすれば一瞬だ。戻ったと思ったら、冷たい床に転がっていた。お前がいたから事情はすぐに分かったが、感じた力はあの時とは別次元だった。というか、もはや別人だな。力だけじゃない、話し方なんかもだ。お前の話に納得しているのもそれが理由だ」
「そんなに変わったか?」
「気が付かない方がおかしい。妹の方はもう分かっている様だが、
やっぱりかー。
全く変わっていないように見えても、実際には気になっていたんだろうな。
「それで、そこからの事とは何だ?」
「話すと長くなるが、詳細はいずれゆっくり話せばいいだろう。単刀直入に言うが、俺とお前は日本に戻り、時間も動き出した。だけど、その時に見たのは
音でも聞こえて来そうなほど強く握りこぶしを作ったが、大人しく聞いている。
「だが俺たちは記憶を無くしていた。理解出来なかった。他にも世界中で大勢の人間が一晩で同時に死んだ。何が起きたのか様々な憶測が流れたがどうでも良かったよ。ただ死の真相が知りたかったから、医者の道を目指した。正しくは研究者だな。その時にはお前も同じ考えでな、沢山の支援をしてもらったよ」
「それは納得できるな。実感はないが、間違いなく協力しただろう」
「そうだな、俺たちは親友だからな」
「まあそれは置いておくとして、お前の優秀さは知っているからな。そんな状況になってお前が動くというのなら、たとえ記憶がなくとも協力はするさ」
置いとくのかよ……。
「しかしそうか……どうもお前の方が遥かに複雑そうだな。続きを聞かせてもらおう」
「そうだな。そちらの事情はあっさりと分かったからな」
「何か棘があるな」
「気にするな。知りたい事はもう分かったって話だ。ただその前に聞いておきたいんだが、いつから狸寝入りしていたんだよ」
「お前がクロノスたちと話し始めてからだ」
「最初からじゃねーか。というか今の話も聞いていたんじゃないのか?」
「俺にとっては
それでずっとガードしていたのか。しかも他の連中に気が付かれずその状態を維持できたのは凄いな。
ただ、正直以前ほどの凄みを感じない。言うまでもない、俺がクロノスをしていた時の
それもあれだけ強化された状態からの出戻りと考えれば、他とは桁違いの強さにも納得はする。
あの丸かった頃の成長が無いのは痛いけどな。
だが無いものを悔やんでも仕方がない。それに、大体分かって来たしな。それだけで十分な収穫だ。
後は確かめたい事もあるが……先に話からしよう。
「まあその話をしているわけだけどな」
こうして地球は突如現れたモンスターによってあっさりと滅亡への道を辿った事。ラーセットに再び召喚されたが、そこは過去の世界だった事。そしてそこで、地球を滅ぼした奴とラーセットを襲った奴――世界を滅ぼすと言われている三体の内の一体であることを知った。
それ以降はもうただひたすらに奴を倒す為に行動した。
奴を倒す力を得るために召喚を行い、ラーセットを復興させ、他国からの干渉も極力減るように努力した。
感謝もされたし恨まれもした。だが全て俺の復讐のためだ。
多くの失敗もしたが、同時に多くの成功や収穫もあった。
そして様々な出来事の末、遂に俺は悲願を達成した。それで全てが終わったと思った。
だが終わってなどいなかった。奴には意識を過去に戻す能力があった事や、俺という危険な存在がいたら分かるように、そして必ず排除するために奴と繋がれた事も話した。
最後にはそれを利用して決戦を仕掛け、もう戻れない時間の限界に達した時点で奴を倒す。後は俺か奴か、2つの世界の命運をかけた戦いをする予定だった。
ところがこんな状況になってしまったわけだ。
だが全てを話すには長すぎる人生だった。
そんな訳で双子の事や俺の女性関係などは全部はしょった。特に必要なかったしな。
ただ
これはかなり重要な事だったからな。
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