第508話 詳しい事情は後で聞こう
召喚の間。
もう本当に今更だが、ここはダミーの部屋。あえて言うのなら目覚めの間だ。
周囲を囲むのは男の神官たち
もうそろそろ他の連中も全員目覚め、状況が分からないけど動けないといった状況だ。
状況の分からなさもあるが、それ以上に目覚めたばかりってまともに動けないんだよね。
そこで始まるまことしやかな会話。
「今回も14人ですか」
「ならば、地下へ向かった26人はまだ無事だという事」
「これは
「しかしそれはそれで……〇□□。失礼しました」
……改めて考えてみれば、何で日本語なんだよ。
ここは全部
まあ召喚者は忘れちゃくれないから、あとで現地語を覚えてから『あいつら今夜の晩飯の事を話し合ってやがった!』なんて事にならないようにそれっぽい事は言わせたけども。
まあこの周囲でしゃべる不気味な連中が、これから登場する人物を大いに引き立てる事になる。
その演出の為にも、分かる言葉で分からない事を言わせた方が良かったのかもしれない。
「どうか
凛とした女性の声が響く。
ここは構造上、中央の祭壇部分が一番明るくなっている。
そこに颯爽と現れる痴女……じゃない、ヨルエナだ。
金色の長い髪に白い肌。ブルーをメインにした服には至る所に金の装飾が施され、豪華さと共に色々と強調している。
そう。派手な衣服の面積は少なく、胸元はいつ飛び出てもおかしくないほどだし、左右のウエストは背中まで空いている。
下半身は一応スカート……と言ったらスカートに失礼だな。左右は大きく開き、体にぴったりの張り付いた薄い前後の垂れを付けているだけだ。
あ、下着は履いていますよ。白いのがもろ見えで。
衣装とのコントラストはある意味見事だ。
当然のように、全員の視線が集中する。
「おい、
小声だがはっきりと通る声。
というか台詞が違うぞお前。
あの時と同じく
この辺りも、あの時と同じだ。
違う点は、もう
おそらく先輩がもう
とにかく当時の状況と同じように、ずりずり這うように合流する。
「よう、
ひんやりした大理石の様な床を這いずりながら、俺は皆と合流した。
「どうして初めての時は自然に言えるのに、2回目は棒になるんだお前は。記憶をなぞるだけだろうが」
バレテーラ。何で? ホワイ?
「何か知っているの? 今のところ危害を加えて来そうにはないけど」
「大丈夫だよ、お姉ちゃん」
「うーん、
……逆に不安だと思っていそうだな。
というかそうじゃない。
「えっと
「奇遇だな。俺も聞きたいことだらけだぞ」
だけど今はもう時間がない。
これからスタートだ。
「皆さま、静粛にお願いします。これより、今の状況に関してご説明させていただきます」
「そ、そうだ! これはいったいどうなっているんだ! ちゃんと説明しろ!」
ヨルエナの声にかぶさるように、野太い男の声が響く。
ここは本当に声が響く。反響しているといった方が良いだろう。
あの頃は大人の年齢なんて見分けがつかなかったが、まあ32か33って所だろう。
しかしあの歳でこの状況で口を出すかね。
頭は子供かよって言いたいが、案外周りが高校生ばかりだったので勇気を振り絞ったのかもしれない。
見え方なんて、ちょっと視点の角度を変えればころころと変わる。クロノスになってよく分かったよ。
改めて、当時は若かったな。
「はい、これから全てを説明させて頂きます。少々長くなりますが――」
「かいつまんで説明してくれ!」
でもやっぱりダメだな。ここでヘタレちゃ意味がない。
そこまでいったら、日和らずに最後まで押しとさないと意味がない。
でもあそこまで言えただけでもよしとするか。
「はい、ではまずは簡単に説明させて頂きます。その後、質問に関してはそれぞれ周囲の者に詳細を説明させます」
今更だけど、ミーネルやシェマン、他の神官長と比べても遜色ない。
立派に務めを果たしているんだなあ。
ん? あの時はここで
あの時、ここにいたのは認識疎外をした風見だ。
なにせ本体は封印されており、後にコピーされる。
召喚されなかったと言い張る事も出来ただろうが、召喚者の数にはきちんと法則がある。
後に問題にならない様、
そう考えると、
「ここはラーセットの首都ロンダピアザ。そしてここは召喚の間です」
「召喚の間?」
「そうです。ここは皆様方をこの世界に召喚するために儀式を行う場所。そして、皆様方はそれに応えてくださいました」
「勝手に召喚しておいて、応えたも無いだろう!」
「そうだそうだ!」
俺と同じ制服の連中も騒ぎ出した。
変わらないなー。
というか変わったら怖い。色々と。
「どうぞお静かに。皆様方にとって、これは決して悪い話ではありません。ここは私たちの世界で、確かな現実です。ですが、貴方がたにとっては一時のゲーム。それも、一切損をすることの無い安全なゲームなのです」
この先は以前と変わらない説明が延々と続く。
ゲームのような世界。アイテムを入手したらスキルの力の一端を持って日本へと帰れる。
いつもと変わらない。俺も採用した説明文だ。
そして興奮が頂点に達した時、いよいよ各自のスキルが発表される。いよいよだな。
「ねえ、どうするの?」
向こうの話はひと段落付いたと判断したのだろう。そう
ここまで、俺もそうだが他の3人もずっと沈黙を保っていた。色々な意味で。
俺はもう今更だが、
そして
そう考えると、蚊帳の外なのは先輩だけか。
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