第500話 一番の危険人物とはね
「それにしても、よくそんな状況でクロノスに託されたなんて言えたものだ」
「私は託されたなど一言も言っていないが」
……そういやそうだ。
クロノスをやっていて計画書まで持っていたから、何らかの形で遺言でも残っていたかと思った。
俺も
しかし現実にはなし崩し的にクロノスを継いだのか。
「それで他の連中はどう納得したんだ?」
「
「よく素直に収まったな」
「それは正気を取り戻す前の話だな。最初は確かに私にも襲い掛かってきたが、クロノスの死を話すと糸が切れた人形のように動かなくなったよ。状況の話であれば、もう
そういや、
理由を知れば納得ではある。それにここまでの話を聞く限り、
でもどうしてダークネスさんの元にいなかったのだろう。
いや、それは考えるまでもないかもしれない。あいつは
それは一緒にいる事ではない。戦い続ける事だ。
それにしても――、
「それで、
「一応はした。だがそうだな……所詮表面的な形だけだ。とっくに気が付いているだろう。当時から何処かそういった空気が流れていたのでな。しかし、今はクロノスの遺志が最優先というだけだ。それに、自らが守れなかった事を悔いてもいるのだろう。だがもし全ての決着がついたら、彼は私も
「素直にやられるつもりは無いのだろう?」
「いや……その時が来たら私が
嘘は言っていないな。その程度の事は分かる。こいつは俺と同じで、嘘が顔や態度に出るタイプだからな。
しかし俺がクロノスを継ぐという話をストレートに否定して来たな。
決して地位にしがみ付きたいわけでは無い。ただ義務感から――なんて簡単な話ではないか。一言で言えば、こいつはその時全てを背負ったんだ。
それに、今の話を聞く限りだと別の意味で代替わりは難しいかもしれない。
俺がクロノスを正式に引き継ぐと同時に、
止めても無駄だろう。これは、彼らの百年の歴史の結末だ。
そしてクロノスの交代とは、それを清算する最大の区切りともいえる。
それを察知すれば
考えるまでも無いな
しかしその場合、
クロノスを継ぐことがどんな意味をもつのか、それを間近で見続けてきたのだろうから。
その代り、アイツは無力だった自分に決着をつけてしまうだろう。
そしてそうなったら
責任感の強い男だ。決着がつくまでは使命を全うすると信じたい……が、ダメだな。
さっきの話を聞く限り、素直に俺に託した時点でもう何の未練も無いという事だ。
全ての責任を取って彼も消える。
もうダメ、そんな死屍累々の状況なんて耐えられない。まだ
俺がクロノスを引き継いだ上で、全員が協力してくれる道はないだろうか?
せめて奴を倒すまでは生きていてね。その後はどうでもいから……なんて酷い話は出来ないし。
それは彼らが対峙した時にひしひしと感じた。
彼ら”と”ではない。あの時は最初から1対4ではなかったし、こいつらもまた仲良し4人組なんかじゃなかった。機会さえあれば、即殺し合うような緊張感があった。
不思議に感じていたが、もうそんな昔からそういった関係だった訳か。
それでも続けているのは、先代クロノスへの義理か。
あんな姿になっても、皆の中心にいるのだな。少し羨ましさもある。俺はそんなクロノスで居られたのだろうか。
結局は……あれ?
「
「ある意味……一番厄介だよ。いや、少し状況は変わったか。今までの彼女には何の希望も無ければ絶望すら無い。ただ状況が楽しければそれで良かった。私らが殺し合いをしたとしたら、互いを癒しながらいつまでも楽しみ続けるだろう。最後の一人になったら、その体を刻みながらどんな気持ちかを聞いて来るだろう。もし全ての決着が付いたら、この世界の人間を生きている限り殺して回るだろう。今の彼女は、そういった性格だ。いや、だっただな。色々な出来事が彼女を変えてしまった」
「とても想像出来無いな」
といいつつ何処か納得する。俺はあの4人を見た時、
肌を合わせ、色々協力してもらったのに、未だに完全に信用していないほどに。
それにしても――、
「それで、癒すというのは?」
「さっきも思ったが、なぜ仲間のスキルを把握していない。怠慢ではないのか? 大方体だけの――」
「それはもう良い。それに俺と彼女の間に男女の関係は無かったよ」
「にわかには信じられぬな。女性だぞ? 本当にクロノスと同一人物なのかと疑う気持ちが沸き上がって来た」
ダークネスさん、さっきの考えを訂正します。
お前最低だ。
「どうとでも言え。何と言うかな……まあ仲良し3人組みたいのがあって、その中でも最も影の薄い存在だった。不思議ちゃんと言う訳ではないが、ちょっと周りからはズレていたな。スキルは何でも食べられる……というか何でも食べられるようにするってだけだ。味も変えられなければ成分も……」
「思い当たる節はあるという訳だ」
「一応な」
タイプとしては
彼女は元々水中呼吸のスキル持ちだったが、それを仲間にまで影響を及ぼせるようになった。
しかしスキルの変化は止まらない。遂には酸素濃度を変化させるという凶悪なスキルに変化した。
黒焦げになり風穴が空いた
「味方であるのなら心強そうだがな。それに、俺にはそんな危険人物には見えなかったよ」
「それは――」
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