第487話 頭がパンクするな
「ラーセットかー……やっぱり、本当に別の世界なんだね」
窓を見ながら言ったその言葉には、色々と複雑な感情が含まれていた。
が、ここはあえて――、
「ヨルエナから聞いたのか?」
「それもあるけど、似た服を着た人がさっき説明してくれたでしょ?」
それって!?
「こっちも聞きたい事が山ほどあるんだけど」
こちらを向いて、少し頬を膨らます。
あ、良かった。これはちょっと機嫌が良い時に怒っている奈々だ。
「なんだかすごくおじさんになっていた時も驚いたけど、どうしてまた若くなっているの?」
その質問だけで状況は分かる。
29歳でおじさんと言われたことはショックだが、確かに高校生の頃の俺もそんな考えだった気もする。
彼女は間違いなく、俺がクロノスであった時に召喚した
だけど彼女は目覚めてすぐに、手違いだったと言って日本へ帰した。
召喚者として成長する余裕なんて全くなかったはずだ。
だけど自力で目覚めるまでは待った。他の人より1日早く目覚めたのは、その辺りが原因だろうか。
そしてスキルに関しては、今は才能としか言いようがないか。
だけどどうしてだ?
”召喚される前の俺達の時間はどうなっているのか?”
ループに巻き込まれて一緒に分岐しているのか、それともその時間は、ラーセットから見れば何回ループしても止まっているのか?
時間の分岐を考えれば後者だ。誰にも干渉できない制止した時間。奴がラーセットに現れる前の時間が何度分岐しても同じように、日本の時間は同じであっておかしくはない。
だけど今までの事を考えれば、それはおかしいんだよ。
一番の問題は、なぜ死んだ人間が召喚されない?
もし魂がコピーされてくるのなら――そして日本の時間が止まっているのなら、それこそ何度でも召還されるはずだ。
現実を見れば、実際には前者。ループしてきた俺それぞれに、召喚された日――違う5月28日がある。
だけど、
彼女は俺がクロノスだった時代の
だけどここは、ダークネスさんが俺だった時の時代。
当然、
実際、初めて俺がラーセットに召喚されてきた時の
確かに少しの違和感はあった。
だがそんな事よりも重要なのは、あの時の
あれは全て演技で、俺が見破れなかった? ありえない。
じゃあ今の状況は?
仮定は幾つも立つが、そんな物あってもどうにもならない。
「なあ、
「私も真剣に聞きたい事があります」
物凄いジト目で見つめられているが、これに関しては覚悟した方が良さそうだ。
殺されるのは10回かな? 20回かな?
「そちらはちょっと待ってくれ。先ず聞きたいんだけど、ラーセット……まあこの国に来たのは何度目だ?」
「ラーセットの事くらい知っているよ」
あ、ちょっとむくれた。でもこれは機嫌が直ったって事だな。
本当に、性格も仕草も変わっていなくて安心する。2回も殺されたけどな。
「前もそうだけど、今回はほら――ヨルエナって人に聞いたの。お姉ちゃんたちはまだ寝ていたけど、私だけ起きちゃって。それで色々と教えてもらったよ」
タイミング的には、全員の空気が不穏になって、俺がヨルエナ逃げていくように言った後か。
「その時にこれも貰ったの。前は手違いだって言われてすぐに戻されちゃったけど、確かにみんないるから今回は予定通りなんだね」
これ――というのは
確かに制御アイテムを受け取ると、スキルの使い方が分かる。
あそこで使えたのも納得だ。
ただそれにしても、“前は手違いだ”か。それを彼女に言ったのはマーシアなんだよな。
俺がクロノスの時に、
ただそれだけの事。単純に、あの世界に
なのに、あの時と状況がここまで変わっている。ラーセットやマーシアのとの会話まで覚えている。
俺がこの時代に戻って来たのは奴のせいだとして、他は変わっていないはずじゃなかったのか?
果たして、日本の時間はどうなっているのか……。
他の人間はどうなんだろう? 改めて
ただ実際の所、ここが本当にあの時と同じなのか疑問が湧いて来たよ。
だけどさすがに違う時代の可能性は無いな。他が全て同じすぎる。
だとしたら、変えた要因は何だ?
……まあ考えるまでもない。奴の時間跳躍に俺が巻き込まれたからだな。
そしてこちらに来てからも随分変わっているが、これは俺がすぐに目覚めた以外には無いか。
あれ? ちょっとおかしいな。
あの時の
なら今回は? あの変な計画は何だ?
俺という存在が
とにかく俺の目覚めによって、本来予定されていなかった――じゃないな。
やっぱり
となれば、誰かが実行を阻止したんだ。
消去法で考えれば
ダークネスさんは……無理だろう。今の俺でも止められないのに、ダークネスさんでは不可能だ。
だがそれを考えても仕方がない。
今はとにかく
間違いなく、歴史自体が書き換わっている。
だけど
何度も考えているが、世代を
だけど、同じクロノスの間は死んだ人間は二度と召喚されない。
そう考えたら……いや、何か引っかかる。
けどいくら考えた所で、そこに応えは無い。
そんな俺の無駄な長考を、ただじっと
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