第486話 何がどうなっているんだ
レーザーのような雷を放った
後ろにはヨルエナが付いているが、もうあたふたオロオロ。何とか
とても俺と敵対していた頃の彼女と同一人物とは思えない。
この世界に再び召喚された時の態度。そしてあの言葉。
もしかしたら、以前は相当無理をして演技していたのではないだろうか?
となると、アレが素か。
まあ、塔を破壊した時は地だと思うけどね。
「なんだか
そう言いながら、顎に手を当てて首をかしげている。
おいおい。たった今、一人の人間に風穴を開けて黒焦げにしたばかりだぞ。すぐに治ったけど。
なんか――いや、
のほほんとして笑顔が可愛い。いつも元気で友達も多い。但し女性に対してのみだ。
男に対しては有象無象を見る様に冷たい。表には出さないけどね。
原因は俺が嫉妬の炎で焼かれ続けていたのを見てきたからだ。その点、先輩が目当てだったとはいえ
ただその前から、結構直情的で思い込んだら突っ走る性格ではあった。そして目的以外はまるで眼中にない。
絶対に車の運転をさせちゃいけないタイプではある。そんなところも好きなんだが。
まあそんな訳で、スキルが使えるようになったから使った。そして
とはいえ相手は人間。それがここまでドライだという事は、既に説明を受けているという事か?
スキルの事も考えれば、目覚めたのはかなり前……な訳があるか。
状況から考えて、さっきはまだ目覚める前だ。それに時間もまだ1日残っている。
本能か? そう言われても納得してしまう所が怖い。
けどこれも変だな。
「なんだか縮んでる?
「どう言う事よ!」
たった今、
理解がまるで追いつかない。どう言う事だ?
「ねえどうしたの? ちゃんと話して」
そういって無造作に歩み寄って来る。
近づくにつれて感じる奈々の呼吸、体温、香り。なんかもう色々とたまらない。
涙が
「ああ。ちゃんと話さなくちゃだな。でも、何処から話していいんだろう」
外しても、外しても止まらない。思考が纏まらない。
と、とにかく……。
「紹介するよ。彼女がヨルエナ。もう聞いているかな? それとあちらが
「うん」
自分でも超挙動不審なのが分かる。だけどもう止まらない。
「それであっちが
「うんうん」
俺は馬鹿か―!
たった今、風穴を開けて黒焦げにした人間の紹介をしてどうする!
というよりどうしてそこまで平然としているの?
なんか興味が他の所にある様な気がするぞ。
「それで彼女が
「ねえ」
「なんだい?」
「どうして
それはフランソワの香水の香りだよ、なんて口が裂けても言えませんね、はい。
《避けられない死が確定しました。“ハズレ”ます》
天から俺を貫いた光の柱は、幸いにも地下にまでは到達しなかったと後で聞いた。
「この位なら丈夫だよね?」
床に空いた1メートルほどの穴。その横からこっそりと登場する。
ニッコリと微笑んでいる
《避けられない死が確定しました。“ハズレ”ます》
ですよねー。
その後、慌ててヨルエナが
ありがとうヨルエナ。君の勇気に乾杯だ。昔の事は、この一点だけで全部許そう。
そして、俺の追放の件もうやむやとなったのであった。
そりゃそうだ。肝心の
もう計画の全ては水泡に帰し、無力感に打ちのめされた
さて、俺はというと――。
◇ △ ◇
神殿庁のほぼ最高層。街や壁が見渡せる小さな部屋に、俺と
他には誰もいない。二人っきりだ。
”どうぞごゆっくり”と言う感じの怪しい微笑みを残して
むしろこのビルから全員避難させたいわ。
ただ2回の攻撃で死者は一人も出ていなかった。
ここは24時間信者がいるし、高さと密度から考えれば誰も巻き込まれなかったのは奇跡だ。
これが奇跡ではないとすると……、
ちらりと
微笑んではいるが、目が笑っていない。
危険すぎる。
と、とにかく、彼女は既に自分の意志でスキルを発動している。
ただ彼女のスキルを全力で放った時にどうなるかはもう全員聞いている。
それに目覚めたばかりで――使えること自体がおかしいが――あれだけのスキルを使ったのでヨルエナが慌てて仲裁してくれたのだ。
「ラーセットかー……やっぱり、本当に別の世界なんだね」
窓を見ながら言ったその言葉には、色々と複雑な感情が含まれていた。
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