第478話 どんな反応をすればいいんだ
少し前、
だが、一応はまだ警戒すべき状態ではある。
おそらく、作戦が上手くいかず動揺した時の気配だろう。
あれからも床の石化は継続中だ。しかもこちらは一度変えたら解除するまでそのまま。
完全に無駄な作業だし。あの極度に人間を嫌っている
だが、まだ目の前にいる人間が一人。
「お前は帰らないのか?
「クロノス様の命令は絶対。だけど、さっき変な事を言った。それを聞いておきたい……です」
現地の人間はまあ普通にクロノス様と呼ぶが、召喚者でクロノス様と呼ぶのはこいつだけだ。
まあ元々”様”と呼ぶには気さくすぎる奴だったが、今のクロノスに――
「言った通りだ。もう分かっているんだろう?」
「分からない。クロノス様はクロノス様。あの方は絶対の存在」
「そのクロノスが、お前を抱かなくなったのはいつだ。
「それが何……ですか。あたしはクロノス様の道具。使い方はクロノス様が決める事」
そう言って、右手に持っていた剣の切っ先を
同時に目に光るのはスキルの紋章。小休止は終わり。改めて臨戦態勢に入ったという事だ。
そしてそれは、同時に心の何かに触れてしまった事を示していた。
「クロノス様は絶対の存在。例え距離が離れても、今こうして命令してくださる。それだけで十分」
「囮になって死んで来いという命令でもか?」
「どんな命令でもクロノス様の命令であればそれが正しい。でも――」
表情一つ変えずに言い切るが、その目からは本人も意識しないうちに涙が頬を伝っていた。
「ああ、分かっているさ。お前が忠誠を誓ったクロノスは……いや、それより寝物語にでも聞いた事があるんじゃないんか? クロノスの本名を」
「ない……ありません。最後まで……わたしたち教官組には教えてもらえなかった……ませんでした」
あの女ったらしが。肝心な事は教えてないのかよ。
と思いつつも
自分の本名は最優先秘匿事項だと言っていたし、その理由も当然だろう。
それに追放して鍛えるってのは最初からの計画であった。
仲間から隔離し、社会からも孤立させる事で甘えを無くし、
そう考えれば、事情を知る人間は少ない方が良い。特にこいつなんて、下手をすれば
だけど状況はもうずいぶんと変わった。
まだ詳しく聞かない限り何とも言えないが、ここで戦いを続けることは決して得策ではない。
それにまあ……もう言っちゃったしな。
こうして
「クロノスが召喚されたんだよ。あの当時のクロノスではなく、もっと若い――高校生のクロノスがな。俺やお前と同じ時代からだ。ただそれがどうもおかしくてな。少し違ってはいるがちゃんとクロノスの記憶があって、確かに話し方や雰囲気がクロノスなんだよ。言っちゃ悪いが、とても高校生には見えないわ、あれは」
場を軽くしようと多少冗談交じりに言ったのだが、無数の
まあただの脅しだ。当たるルートには無い。
それになにより、目の紋章が見えた時点で
当たる・当たらないに関わらず、全ての武器は途中で石化された空気に阻まれ砕けたり弾けたりで届きはしない。
「どこ!?」
「相変わらず気が短いな。今は最高の部屋に宿泊してもらっている。
「まあるいベッドの?」
「そう、ああ今はもっとしっかりした高級スイートに変わっているがな。そういや、お前が来た時はもう召喚庁が出来ていたんだったな。よく知っていたな」
答え終わった時、もう既にフランソワは居なくなっていた。
正確に言えば、毎晩の様に5人とか6人とか手を出していたものだ。おそらく問題はないだろう。
警戒を解いたわけではないが、もう今日はなにもないだろうと
□ ★ □
勢いよく扉が開き、小柄なおかっぱ頭の少女が入ってくる。
服装は白と黒を基調としたゴシックロリータだが、
あの時のはヒビが入った部分が破れてしまったし、そもそもあれは、見た目はほぼ同じでも戦闘用。見た目よりも硬く、脱ぎずらい。
圧倒的な実力差を前に、嫌な汗もかいた。
だからすぐさま自室に戻り、服を一番のお気に入りに着替えた。
当然下着も勝負下着。
クロノスが気に入っていた香水も付け、準備万端で来たわけだが――、
「
開口一発、実に悔しそうにそう言った。
「
「ベッドルームで身分は関係ない。最古の4人 でも召喚されたばかりでも同じ。クロノス様がそう決めた」
入ってきたのは見忘れるはずもない。フランソワだ。
でもこうして見比べると、こっちの彼女の方が少し色気を感じるな。
外見は変わらないのだから、経験の差か。
というか、今なにやら不穏な言葉が流れたぞ。どう言う事だ
「やあ、フランソワ。そんなに慌ててどうしたんだ?」
その言葉と同時に、彼女は俺の胸に全力でダイブした。
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