第477話 今更だけど本当にあの頃に戻ったんだな
「召喚の間での一悶着は終わったようだな」
「何かありましたか?」
どうせ
まあ俺も
「考え事ですか? つれないですなあ。こうして久しぶりに、互いに一つになっているというのに」
「いや誤解を招く言い方は止めろ。ただ一緒に横になっているだけだ。それで俺がクロノスだった時の続きだったな」
「ええ、聞かせてくださいませ。いつウチがどんなふうに登場するか、今から楽しみでしょうがないですわ」
結局警戒を怠らないようにしつつ、クロノス時代の話を
だって離してくれないんだもの。帰る様子もないし。
二の腕に感じる柔らかくも強い弾力に理性が崩壊しそうになるが、大丈夫だ。
いや、大きさはそんなに重要じゃないんだが――って俺は何を考えているんだ。
「それにしても、本当にきれいな肌ですなあ」
「おまえも高3だろ。たいして変わらないと思うが」
その言葉にクスリと笑うと――、
「ウチの知っているあの方は29歳の体でありましたわ。それに全身傷だらけでしたなあ」
言われてみればそうだ。彼女が出会ったのは、29歳のクロノスか。
しかしそう考えると不思議なものだ。
それぞれのクロノスが様々な手段で奴の勢力拡大を押さえ、時には命を落としつつも最後は
だけど必ず時間切れ。
ただそれぞれ最終段階に入るまでの時間が同じとは思えない。上手く行く事もあるし、ダメな時だってある。
1例だけではまだ分からないかもしれないが、同じ年齢の時に奴が来て、俺は再びラーセットに召喚されるのか。
確かに召喚する人間は同じ日の同じ時間から召喚されてくる。逆もまたしかりという事なのだろうか。
しかし――、
「傷なんて薬で治せるだろうに」
「なんでもない傷は軟膏で治していたそうですが、残しているキズはどれも大切なものだったそうです」
そういえば、
何で残したのか聞いておけば良かったが、付けたのが俺だから何も聞けなかった。
だけど何となく、その
「にしても、こんな関係なのに“あの方”なんて呼び方なのか? もっと軽く呼べば良いのに」
何度言っても“クロノス様”を改めさせられなかった俺が言っても説得力は皆無だが。
「これはウチがそう呼びたいからですわ。人それぞれ違う呼び方をしておりましたが、ウチにとってあの方はあの方なのですわ。それに、別段重い呼び方とは思いません。一応は人前ではクロノスさんと呼びますが」
そうか……それも何となくわかる気がする。
「村のダークネスさんとは、もう交流は無いのか?」
「お互い辛いだけですので……」
前の俺が彼女と出会ってから何年経っていたのを正確にはまだ知らない。
だけど、きっと俺が考えるよりもいろいろな事があったのだろう。
俺が消滅した時の事を聞きたい気もするが、今の彼女から聞くのは酷というものだな。
今度
「ですが――こうして改めて出会える日が来ると信じてはおりましたので」
そういうと、吐息が掛かる程近くに来る。
危ない。本当に危ない。だが、この状態で理性を失うことなく沈着冷静に話が出来る。
そう、長い経験が俺を鍛えた。今の俺は賢者なのだ。
「だけど追放する予定だったのだろう。その結果は話した通り、散々な目にあった挙句に俺はラーセットの人々を大勢殺した。今でも自分のしたことに反吐が出る。あのミーネルの子孫たちまでをも殺してしまったんだ!」
「その話を聞いた時から、引っかかっておりました。こちらの計画は話した通りですわ。確かに過酷な環境に置く事で、常識を超えた粋まで鍛えられるとあの方は言っておられましたな」
「その点は間違いないな。俺と……さっき一緒の召喚されていた
「他の人でも出来たんですか。なら有りだったのかもしれませんなあ。ウチが知る限りでは、力の限界を求めて制御アイテムを捨てた者は皆、精神を病んで短期間で壊れてしまいましたわ」
「確かにな……」
実際の所、
だけど日本に帰った事で、それは元に戻った。
おそらく元凶であるスキルを失ったからだろう。
そしてラーセットに戻った時にはすっかり回復していた。けれど、そこまでに成長した力はしっかりと残っていた訳だ。
うん、正にたまたまの偶然だ。とても他の人間で試す気にはなれん。
「他の人間で試すなよ。成功する確率なんて、1パーセントも無いからな」
「そんな気はありません。そもそも、貴方がここにいる段階でウチらの仕事は大体終わっていたんですよ」
「
「そこなんですよなあ。確かにループを続けたくない気持ちも分かります。その、日本に帰る方法というのが事実であればですが」
見せる事は簡単だが、信じさせることは難しい。
なにせ、送還した人間が再召喚されて、始めて信じさせることが出来るんだからな。
そんな事を考えていると、ドアノッカーの響きも無しにいきなり扉が開かれた。
いや待て、鍵は掛けて……無いわ。俺のスキル、外すだけだし。
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