第464話 かなりショックな話だが
「最初から気にはなっていたんだが、このまま曖昧なまま話を進めても仕方がない。だから単刀直入に聞こう。この世界の
「それは……」
「誤魔化してもしゃあなかろうですわ。それに今まで聞いた話では、クロノスさんが命を落とすのは今回だけではありません。歴史を繰り返す間には何度もあったらしい事ですしな。ただそれでも、結局は何らかの形でクロノスは引き継がれ、次の貴方に託されるという事ですわな。ただクロノスさんは全てを打ち明けていた訳ではありません。その度に一部の記録は消え去り、後に残された者は色々と苦労したようですな」
「それで今回は
「本当に不思議な人ですなあ。こちらも聞きたい事は山ほどありますが、今はまだまだ質問に応えましょ」
そう言うと、
実際助かる。目覚めるまでに2日の猶予はあるとはいえ、時間いっぱいまでは使えないだろうしな。ここで必要な事は聞いておきたいんだ。
「クロノスは……なぜ死んだんだ?」
「ウチらを疑っておいででしょう?」
「まあな」
それを誤魔化しても仕方がない。ちょっと勇気が必要だけどね。
だけど彼らはクロノスの計画に沿って行動している感じだ。追放の件は未だに納得していないとはいえ、造反の確率は低いと思う。
というか、逆にこいつらがやったと確信していたらこうも簡単には聞けない。
それにこのまま疑心暗鬼のまま誤魔化しながらでは、話を続けられないのも事実だ。
「召喚されたばかりとは思えないほど知っているようですが、一応言います。この世界は非常に危険で不安定なバランスの元に成り立っております。無限とも言える
「それは最悪だな」
「多分、アンタが考えているよりもずっと厳しい世界だぞ」
「そういう意味じゃない。なぜ南北と融和政策を取らなかった。片方が無理でも、南北はそれぞれラーセットを緩衝地帯にして睨み合っている。最初に険悪になったのが北なら南と、南なら北と協力関係を構築すればいい。もし両方が同盟を組んで同時に攻撃して来ても、クロノスなら対処は容易かっただろう」
「その辺りの詳しい事は知らねえ――じゃねえ、知りません。ただ最初は北のマージサウルだけだったらしいですが、途中から南のイェルクリオも消極的ながらもちょっかいを出してくる様になったんですよね。今でも斥候がラーセット近くに陣を構える事もありますよ。まあ殲滅しますがね」
頭をボリボリと搔きながら
ただ今の話だと、
となると、南のイェルクリオとは交友関係を築けなかったわけか。それは俺にしては迂闊だが、それとも何か――いや、待てよ。
「クロノスが死んだのはいつだ」
もし早いうちに亡くなっていたのであれば――、
「56年前ですな」
それなりに長くはいたのか。そうなると、状況がよく分からない。
俺は自分ならこうすると考えてそうした。だけど前の
それともウェーハス・エイノ・ソスと交渉できなかったのか?
何の権限も無い閑職と聞いていたから、案外情報自体が無かったのかもしれない。
それに俺ほどスキルを使いこなせていないのであれば、自ら赴く事は大きすぎるリスクでもあるか。
「それで、どうしてクロノスは死んだんだ?」
「もう分かっていそうですが、うちらにとって究極の目標はセバト・ラウルト・イザ・アブロナス……」
「ストップ! そいつは以後、“本体”と呼称する。これは確定事項だ」
「……よろしいでしょう。それは教官組を通じて伝達させますわ。それで続きですが、放置すればその力は増加する一方。ですので、ウチらはいつも情報を集め、セバト・ラウ……本体を倒すために戦いを挑んでおりました。ですがまあ、あれは人にどうにかできる相手でもなかったですわ」
「その戦いでクロノスは命を落としたのか?」
「結論から言えばそうですわな……まあ何度も何度も挑んで、多くの眷族も倒しました。ですがまあ、あんなもんどうしようもありませんわ。力を削ぐのがやっと。ですがそうやって増殖を抑えないと、最後の一撃前にここいらの国は全て奴らのモンになってしまいますからな。死んだ時の事、詳しくお聞きになりますか?」
「そうだな……」
少しおかしい。確か最初の召喚から100年を超えていたはずだ。クロノスが死んだのが56年前としても、半世紀も生きていたなら対処できないとは思えない。ましてやこいつらもいるんだし。
確かに奴は強かったが、俺は最後には一人で挑み倒す自信があった。そうでなければ、あんな時間遡行などはしない。
だがこちらの奴は名前が違う。強さも違うのは今更だろう。戦っている内に、眷族を取り込んで肥大化したのか?
そんな事が出来るなら、何故奴はやらなかったのだろう。
その辺りの事は、クロノスの死を聞けば明らかになるのだろうか。
「是非聞きたいな。詳しく話してくれ。出来れば初めて奴と戦った辺りから知りたい」
「では……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます