第432話 どこから説明していいものか
もう一人の
こちらに気が付いたのか食べていない一つをそっと俺の前に皿ごとすすっと置いたが、今はやめておこう。
確かに食べられるが味は変わらない。俺は砂鉄交じりの砂を食いに来たわけじゃないんだ。
というか、
ついでに説明していくと、13期生は全員高校生。そして女性だ。
当初はちょっとあどけなさもあったが、この中で唯一の戦闘系だからかな。今では完全に戦士という表現が似合う風貌だ。
メンバーで唯一革鎧を着て、手袋とブーツを着用。今は外しているが、一見すると木製に見える兜も普段は被っている。完全武装と言って良いな。
自分のスキルである雷撃は自分には影響がないそうだが、金属製品は身に付けていない。
何があるか分からないから、万が一に備えているのだろう。
あ、そう言えば
熊のような大男だが、小心なのは相分からずだ。
というか、どうも男の服装には注意が散漫になっていかんな。
初めて見た時は似合わないと思ったが、年月のせいか今は全く違和感がない。随分と馴染んだものだ。
「それはすまなかったな。情報の拡散は少ない方が良かったから、あえて秘匿していた。それに関しては素直に謝罪しよう。そしてこれからいう事を、冷静に聞いて欲しい。君たちには、ラーセットを襲い、近隣を脅かしているから奴を倒すという事になっているな」
「え、ええ」
「それは間違いない事実で、何とか討伐しなければラーセットだけではなく近隣諸国も滅ぶだろう。だが最初に戦った時は本体に会えずに追い返すだけで終わってしまった」
「ラーセットが襲われた時ですよね。はいちゃんと教わっています」
両手をグッと握り、キラキラした目で返事をする
まあ俺がラーセットを襲った奴を撃退した話は、誰からという訳でなく自然と耳に入るだろう。
特に彼女が召喚された頃は、あの戦いからほんの12年。まだまだ当事者たちが社会の中心だったわけだし。
「その後に再び奴と出会った時、
「その話は当然知っております」
いつの間にかキセルを吹かせていた
あまり話すタイプではないのでちょっと珍しいが、今更聞いても仕方ないって事か。
俺たちにとっては、その話はついさっきしたような感覚だしな。
しかし服装から想像できる静かな口調と、ギャルの風貌が全然マッチしないところがこの子の個性ではあるな。それにちょっと短気だ。
「これから話す事を
「では聞かせてくださいませ」
「あたしも聞きたい―」
「あ、私もです」
「全員に話すから落ち着け」
長くこの世界に居ても、こういった所はまだ子供だな。
なんて俺も人のことは言えないわ。
色々あったが、俺の精神は大体高校生の頃とあまり変わっていない。
ただ知識と経験が増えた分、ちょっとだけ慎重になっただけか。
「俺は日本でも奴に寄生された――ここでは”同類”って呼んでいる連中に会っていてな。ただラーセットでの記憶は無かったから、何も出来やしなかった」
「ん? どういうことです?」
「私たちはそんな出来事は知りませんよ?」
「向こうに帰ったら、ラーセットでの記憶は失われる。最初に説明されていただろ。それに
「
「なら今更だな。こちらにいる間、向こうの世界の時は止まっている。だがいざ向こうに帰れば、時間は普通に流れるわけだよ」
「あれ? それじゃあ
「こちらから見れば、相変わらず時は止まったまま。そういう事でありましょう?」
「
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